第8話 マシュマロ幼馴染が泊まりに来た
「穂乃花……疲れた。降ろしていい?」
「うちどうやって帰ればいいの?」
「靴貸すからさ」
「……だったらさ。優の家に泊まっていい?」
「え?」
「その……優に家まで送ってもらうの申し訳ないし」
「俺はいいけど……穂乃花の親は大丈夫なのか?」
「うちは何回か美咲の家に泊まりに行ったこともあるし大丈夫だと思う」
「じゃあ親に電話するか」
優が家のドアを開ける。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「お邪魔します」
「あら穂乃花ちゃん!着物姿可愛いわね!」
「ありがとうございます」
「ほら優。さっさと部屋に行きなさい。穂乃花ちゃんの着物脱がさないといけないから」
「分かってるよ」
優は部屋に入り、ベッドに寝転がる。
(少し休むか……)
優は夏祭りの疲れからすぐに眠った。
「優。起きて」
「ん?」
優が穂乃花の声で目が覚めた。
「あの……うちお風呂上がったから入ってっておばさんが」
「あぁ。わかった」
「それと優のパジャマ借りちゃった。ごめんね」
「いいよ。気にしないで」
優が部屋を出る。
(俺のパジャマを穂乃花が……)
あのパジャマから穂乃花の匂いが……
(洗濯せずに保管しよう)
優がお風呂から上がり、部屋に戻ると穂乃花がベッドで眠っていた。
(人のベッド勝手に取るなよ……)
穂乃花がスヤスヤと眠っている。
(相変わらず可愛いなぁ……)
穂乃花の寝顔をずっと見続けてしまう。
「あっ優……」
穂乃花が目を覚ます。
「歯磨きしたのか?」
「まだ……」
「俺も眠いから洗面所に……」
穂乃花が優に抱きつく。
「ちょっ穂乃花!」
「むにゃむにゃ……」
(柔らか……)
穂乃花を抱きしめると太っているからこそ感じられる柔らかさがある。
「穂乃花。行くぞ」
「抱っこして~」
「それは無理」
歯磨きが終わると、穂乃花が目をこする。いつ寝てしまってもおかしくない状態だ。
「穂乃花は俺のベッドで寝ろよ」
「優はどうするの?」
「俺はソファーで大丈夫だから」
「……いやだ」
穂乃花が背後から優に抱きつく。
「優と一緒に寝る……」
「な、何言ってるんだよ!」
優の頬が赤くなる。
「穂乃花はキャプテンのこと好きなんだろ?」
「わかんないけど……今は優と一緒に居たい……」
そんなこと言われたら……都合よく捉えてしまうだろ……
「ダメだって……一人で寝……」
「どうしても……ダメ?」
そんな目で見るなよ……何も言えなくなる……
「なぁ……穂乃花」
「何?」
「なぜかベッド狭いんだけど……ソファーに行っていい?」
「ダメ」
「なんでだよ」
「夜中にトイレ行きたくなったらどうすればいいの?」
「行けばいいじゃん」
「怖いもん!」
「高校生なんだからそれぐらい……」
「怖いものは怖いの!」
「わかったよ」
優は体を穂乃花とは反対方向に傾ける。
「優」
「何?」
「寝れるの?」
「寝れるけど?」
「うちらが子供の頃、優が眠れないからうちを抱き枕にして寝てたじゃん」
「!」
優の頬が赤くなる。
「うちが柔らかいから抱きしめたら安心するって……」
優が咄嗟に穂乃花の口を抑える。
「それ以上言うな。恥ずかしい」
「んんんん!」
「心配しなくても寝れるから大丈夫だ」
「本当?」
「あぁ。だから安心しろよ」
優が再び寝る体制になる。
「おやすみ」
「……」
優がおやすみと言ってからすぐ寝息が聞こえた。よほど疲れていたのだろう。
穂乃花が優の寝顔を見ると穏やかに眠っているように感じる。
あんだけ眠かったのに一緒にベッドに入ってから眠気が吹き飛んでしまった。
(なんで急に優といるとドキドキするようになったんだろう……)
穂乃花が眠るまでにしばらく時間がかかった。
朝になり、眩しい日差しが部屋に差し込む。
「優!起きて!」
「ん?」
「朝だよ!起きて!」
「今日、練習休みだろ……昼まで寝るから……」
怒った穂乃花が頬を膨らませる。
「起きないと……」
穂乃花が優の上に乗る。
「重い!」
「起きて!」
「たまには昼まで寝かせろ!」
「嫌!」
優と穂乃花の揉め合いを陰ながら母親が見守る。
(本当に仲良いわね。あの二人♡)