第74話 マシュマロ婚約者と日常を振り返った
優が目を覚ますと、ベッドから起き上がり、リビングに向かう。
「おはよう」
「おはよう」
「明日だな。結婚式」
「そうだね……」
優は穂乃花の顔が少し赤くなっていることに気づいた。
「どうした?顔赤いぞ?」
「えっと……改めて言われると緊張するなぁって思って」
「そうだな。皆に祝福されるのは少し恥ずかしいかもな」
「うちはドレスを見られるのが恥ずかしいなぁ……」
「試着した時、似合ってたじゃん」
「そう……かな?」
穂乃花が少し照れる。
「朝ごはんできてるよ」
「今日は何?」
「フレンチトーストとコーンスープ」
「それは楽しみだな」
優は嬉しそうな顔をした。
「「いただきます」」
二人はフレンチトーストを口に入れる。
「美味しい」
「ありがとう!」
「こうやって二人で朝食を食べるのも当たり前になってきたな」
「そうだね。うちらは小さい時から一緒だったけど、ずっと過ごすことはなかったからね」
「この生活にも慣れてきたな」
優は薬指にはめた指輪を見つめる。
「俺たち……もう結婚する歳になったんだな。早いなぁ……」
「本当にあっという間に大人になったよね」
「ついこないだまで高校生だと思ったんだけどな」
優は高校生の頃を思い出す―――
「優!起きて!」
「嫌だ……」
「朝練遅刻するよ!」
いつものように優は穂乃花に叩き起こされようとする。
「あと5分だけ……」
「5分経ったら起きる?」
「起きるから……ね?」
「……わかった」
優は穂乃花をギュッと抱きしめて再び眠り始める。
(いつもギュッとされるけど……そんなにうちって柔らかいのかな?)
この5分間、穂乃花はいつもドキドキして優を待っている。
(優が気持ちよさそうに寝てる……)
穂乃花はじっと優の寝顔を見つめるとチュッとキスをする。
「ほ、穂乃花……?」
優は思わず目を開けてしまう。
「ごめんね……我慢できなかった……」
「ま、まぁ……いいよ……」
優が起き上がり、ベッドから離れる。
「じゃあ……歯磨きしてくる」
「うん……」
歯磨きをしている間、優はずっとドキドキしていた。
(穂乃花に朝キスされたの初めてだな……)
チラッと穂乃花を見ると目が合い、慌ててそらす。
(クソ~!可愛いなぁ~!)
優は出ていくまでの間、一人で葛藤していた。
昼休みになると、二人でいつも、食堂でご飯を食べるのが恒例だ。
「今日は何にするんだ?」
「そうだね~……がっつり食べたいからカツ丼定食にしようかな」
優はチキンカレー、穂乃花はカツ丼定食を頼み、テーブルに持っていく。
「「いただきます」」
二人は食べ初める。
「美味しい!」
「思ったけど穂乃花って嫌いな食べ物ないの?」
「う~ん……ないかも」
「そうなんだ。じゃあ昆虫食も食べれるのか」
「食べたことないからわからないけど食べたくない」
「穂乃花は虫嫌いだもんな」
「優がカブトムシ捕まえた時は怖かったなぁ……」
穂乃花は幼少期を思い出す。
「穂乃花~!見て見て!でっかいの捕まえた~!」
「いやぁ~!こっちに来ないで~!」
「あの時めちゃくちゃ母さんに怒られたなぁ……」
「ねぇねぇ。今日は部活ないから優の家に行ってもいいかな?」
「いいぞ」
「やった~!今日は長く優と一緒にいれるね!」
長く一緒にいれる……その発言に優はピクッと反応した。
学校が終わると、二人は優の家に入る。
「お邪魔しま~す」
「先上がっててくれ。飲み物取ってくる」
「わかった~!」
優はコップに麦茶を入れて、部屋に持っていく。
「ほらよ」
「ありがとう」
「で?俺の家に来て何するつもりなんだ?」
「……?一緒にいるだけだけど?」
「珍しいな。俺から誘わない限り、家に入ることなんてなかったのに」
「……」
「穂乃花?」
穂乃花が優に近づき、ギュッと抱きしめる。
「……!」
「うちらが付き合ってからどれくらい経つ?」
「1年ちょっと……かな?」
「あのね……うち……優と付き合ってからさ……どんどん優のこと好きになってる気がするの……ずっと優のこと考えちゃうんだけどどうすればいいかな?」
「それは……」
優にとっては嬉しい悩みだ。いつも自分のことを考えてくれているなんて……
「俺も一緒だよ。穂乃花と恋人になってから、どんどん好きになっていく……穂乃花と一緒にいる時が一番楽しい」
「優……」
「だから一緒にいようよ。これからもずっと」
「うん……」
優がギュッと抱きしめる。柔らかいなぁ……凄く落ち着くなぁ……
「……してもいい?」
「いいよ……」
穂乃花の制服に手をかけようとする。
「ただいま~!」
玄関から母親の声が聞こえる。
「あら?優!穂乃花ちゃん来てるの?」
「はぁ……」
「今回はお預けだね」
「そうだな……」
「……」
穂乃花は落ち込んだ優の顔に近づき、キスをする。
「今日はこれで我慢してね」
「そんなことされたらもっと我慢できなくなるんだけど……」
「早くおばさんのところ行ってあげて」
「わかったよ……」
優は渋々、部屋を出て行った。
―――「優?何ニヤニヤしてこっちを見てるの?」
「いや、穂乃花って高校生の頃は俺のこと大好きだったなぁって」
「高校生の頃《《は》》って何よ。今も優のこと大好きだもん」
穂乃花が頬を膨らませる。
「そうだったな」
「楽しみだね。明日」
「あぁ」
家のカレンダーには翌日の予定にハートが書かれていて、その中に結婚式と書かれてあった。




