第71話 マシュマロ婚約者一家へのご挨拶
とある休日。優と穂乃花は穂乃花の実家に向かっていた。
「優大丈夫?」
「何が?」
「緊張してるように見えたから」
「緊張するに決まってるだろ。挨拶するんだから」
穂乃花が優の手を握る。
「大丈夫。お父さんとお母さんに伝えたら喜んでくれたから」
「ならいいけど……」
穂乃花が家のインターホンを押すと穂乃花の母親が出迎える。
「二人共いらっしゃい!」
「ただいまお母さん」
「お邪魔します」
「さぁ上がって上がって」
穂乃花の両親は温かく出迎えてくれた。《《両親》》……は。
「穂乃花……本当に大丈夫か?」
優が心配そうに穂乃花に耳打ちする。
なぜなら東吾がギロッと優を睨みつけているからだ。
「大丈夫だって。お兄ちゃんはうちが幸せなら許してくれる……はず……」
「はずって……」
母親が昼食をお盆に乗せて持ってくる。
「久しぶりに二人に会うからはりきって作りすぎちゃった。たくさん食べてね」
「ありがとうございます」
「ありがとうお母さん!」
優はスッと深呼吸をする。母親が席に座ったタイミングで話し始めた。
「先日、穂乃花さんにプロポーズをして結婚の承諾をもらいました。必ず幸せにするので結婚をお許し頂けますでしょうか」
優が頭を下げる。
「もちろん……」
「ダメだ」
母親の言葉を遮るように東吾が否定する。
「どうして?」
「穂乃花。覚えているか?幼い頃、俺に言った言葉を」
「何?」
「穂乃花はお兄ちゃんみたいな人と結婚すると言っていた。だが……」
東吾が立ち上がり、優を睨みつける。
「優は全然俺に似てないじゃないか!まさか俺と優が同じとでも言いたいのか⁉」
「ごめんなさいね。見苦しいところをお見せして」
「母さん⁉」
「東吾も穂乃花から妹離れしなさいよ」
「だって……だってぇ……」
東吾が涙を流し始める。
「そんなこと言ったてぇ!俺の可愛い妹なんだよぉ!お兄ちゃんお兄ちゃんってくっついてきてた穂乃花が優に夢中になるのが嫌なんだよぉ!」
うわ~ん!東吾が号泣する。
「おい東吾……」
「なんだよ父さん!父さんは穂乃花が結婚するって聞いて寂しくないのか⁉」
「寂しいに決まってるだろ。親なんだから……子供は可愛くて自分たちに幸せを感じさせてくれる。しかし、大人になったら一人で生きるために成長しなければいけないんだよ」
父親が穂乃花を見つめる。
「私と母さんは東吾と穂乃花が出ていって寂しい気持ちになったよ。でも親はそれを受け入れなければならない。次に向かって成長しようとしているんだから」
「お父さん……」
「東吾。結婚して寂しくないかと聞いたが、むしろ嬉しいんだよ。穂乃花を幸せにしてくれるって言ってくれているんだ。穂乃花も一緒になりたがっているんだったらそれを見守るのが親の役目だと思う。それは兄弟姉妹も同じじゃないか?」
「……」
「優君。穂乃花をよろしくお願いします」
両親が頭を下げる。
「東吾は?」
「……絶対幸せにしろよ。じゃないと許さないからな」
「はい!」
帰り道、二人は手を繋ぎながら駅に向かっていた。
「緊張した~」
「大丈夫って言ったでしょ?」
「そうだな。お義兄さんには驚いたけど」
「お兄ちゃん心配だなぁ。結婚できるかな?」
「お義兄さんが結婚ねぇ……想像つかねぇな」
「だね」
「来週は俺の実家だな。穂乃花は緊張しないの?」
「大丈夫!うちは優よりお義父さんとお義母さんに好かれてるもん」
「それ本当だったら泣くぞ?」
二人は笑いながら歩いた。




