第69話 マシュマロ彼女は怪しんでいる
とある日の夜。穂乃花がいつも通り夕食を作っていると、スマホの通知が鳴った。
見てみると優からメールがきてきた。
『ごめん!今日帰り遅くなる!』
「珍しい……いつも早く帰ってくるのに……」
穂乃花はメールで返事する。
『了解!寂しいけどお仕事頑張ってね!』
仕事なら仕方がない……お腹空いたし、今日は一人で食べよう。
この日はそう思っていた。
数日後。ペルルでの仕事がひと段落し、休憩していた穂乃花はムスッとしていた。
「穂乃花ちゃん。お疲れ」
美鈴が休憩室にやって来る。
「お疲れ様です。店長も休憩ですか?」
「えぇ。朝からずっと作ってたからやっと休めるわ」
美鈴が椅子に座ると、穂乃花に声をかける。
「朝から機嫌悪かったけど何かあった?」
「えっ……悪かったですか?」
「気づいてなかったの?他のパティシエもどうしたんだろう?って心配してたわよ」
「そうですか……」
自分……そんな顔してたんだ……
「それで?どうしたの?」
「最近……彼氏の帰りが遅いんです……」
「仕事で忙しいんじゃないの?」
「そう思ってたんですけど……この前お買い物してたら優を見かけて……声をかけようとしたら……知らない女の人と歩いてて……」
今でも忘れられない。優が綺麗な女の人と楽しそうに歩いていたところを。
「優……浮気してるのかな……?」
「……」
美鈴は落ち込んでいる穂乃花の肩に手を置いた。
「今日も遅いって言ってるの?」
「はい……
「彼氏さんの定時って分かる?」
「確か……6時半だった気がします」
「じゃあ6時にここを出て会社に向かいなさい」
「えっ?」
「浮気かどうか……直接確かめたら?」
「でも……」
「このまま疑い続けて穂乃花ちゃんは生活できる?」
「それは……」
穂乃花は黙ってしまった。
夜。穂乃花は変装して優が勤務している会社の近くに待機する。
(来た!)
優が会社から出てきた。仕事が長引いているのが噓であることが確定した。
(うちに噓ついて何してるんだろう?)
穂乃花は優にばれないように背後を追いかける。
(どこに向かってるんだろう?)
信号待ちの優をじっと見つめていると青信号になり、反対側から大勢の人がこちら側に向かって来る。
(噓⁉)
慌てて追いかけるが、追いつくことができず見失ってしまった。
(はぁ……はぁ……)
穂乃花は疲れて息を吐く。
噓をついているということは……やはり浮気しているのだろうか?
「ただいま~」
優が帰宅すると穂乃花が玄関まで歩いてくる。
「おかえり。今日の晩御飯疲れて作ってないから……買ってきたやつ適当に食べて」
「珍しいな。今日は忙しかったのか?」
「ちょっと……ね……」
落ち込んだ穂乃花を優はじっと見つめる。
「穂乃花?何かあったか?」
「別に何もないよ。気にしないで」
「もしかして……最近帰りが遅いこと気にしてる?」
穂乃花がピクッと反応する。
「ごめんな。最近、仕事が忙しくて……」
「噓つき……」
「えっ?」
「うち、知ってるんだよ?優が定時退社してること」
「それは……」
「うちに噓ついて何してるの?浮気?」
「それは違う!」
優が必死に否定する。
「じゃあ何?」
「……今は言えない」
「なんで?」
「日曜日の夜……日曜日の夜になったら分かる。その時に話す」
「今じゃダメなの?」
「あぁ」
優が真剣な表情で穂乃花を見つめる。
「その日じゃないとダメなんだ。頼む」
「……わかった」
「じゃあおやすみ」
「おやすみ……」
穂乃花はベッドに寝転がる。
(なんなんだろう……)
穂乃花はいつも楽しみな日曜日に不安を抱えていた。




