第7話 マシュマロ幼馴染と仲直り
「ねぇ!そこのお姉ちゃん!」
穂乃花が振り返るとガラの悪い二人が立っていた。
「何ですか?」
「俺たちと楽しいことしない?」
「いえ……結構です……」
穂乃花が立ち去ろうとすると男に腕を掴まれる。
「は、離してください!」
「大丈夫だって!ちゃんと楽しませてあげるからさ」
「だ、誰か助けて!」
穂乃花が泣き叫ぶ。
「うるせぇなぁ~こうなったら眠らせて……」
男が手段に出ようとすると頭に何かが当たる。
「なんだ?」
振り返るとピストルを持ち、タコのお面をつけた男が立っていた。
「てめぇ……何しやがるんだ?」
「おまわりさん!こっちです!」
後から来た咲人が叫ぶ。
「やべ!警察が来る!」
「逃げろ!」
男二人が逃げて行く。
「雪宮!大丈夫か?」
咲人が穂乃花のもとに走る。
「咲人君……ありがとう。大丈夫だよ」
「無事でよかった」
「ところで警察は?姿が見えないけど……」
「あれは噓だよ。来たのが僕たちだけなら無理やり雪宮を連れて行くつもりだっただろうから」
「僕たちって……じゃああのお面をつけた人は咲人君の友達なの?」
「友達も何も……」
咲人が振り返るとお面の男はそこにいなかった。
「あいつ……逃げやがった……」
「さっきの人誰なの?」
「……雪宮が一番よく知ってる人だよ」
お面の男は真っ暗な夜の道を歩く。
(我ながら俺の射撃技術はすごいなぁ~)
鞄にはさっき使ったおもちゃのピストルとBB弾が入っていた。
(くじ引きではずれだと思ったけど案外使うと子供心をくすぐられるよな~)
お面の男は立ち止まり、夜空を見上げる。
(穂乃花……大丈夫かな?まぁ咲人がいるし大丈夫だろ)
再び歩き出すと後ろからハァハァという声が聞こえる。
(こんな時間にランニングか?)
振り返ると走って疲れた穂乃花が立っていた。
「なんでうちから離れるのよ!優!」
今日の夏祭り、優は咲人と夏祭りを楽しんでいた。
「今日は付き合ってくれて助かったよ」
「別にいいけど……雪宮と一緒に行かなくてよかったのか?」
「いや~穂乃花は予定あるらしくてさ~」
「……噓だろ」
「え?」
「雪宮と何かあったか?」
「なんで?」
「僕を誘う時、声暗かっただろ」
「……本当に咲人って俺の隠し事見抜けるよな」
「分かりやすいからな」
「実はな……」
優は咲人に穂乃花に八つ当たりしてしまったことを話した。
「なるほどな……まぁそれは雪宮も悪いと俺は思うが……」
「いや、好きな人に誘われたら誰だって行きたくなるだろ」
優が屋台で買ったポテトを食べる。
「悪いのは俺だ。告白してないくせに勝手に怒って……最低だよ」
「優はどうしたいんだ?」
「俺は……穂乃花と仲直りしたい……」
「じゃあ探してこいよ。まだここにいるだろ」
「あぁ……行ってくる」
「あとでお菓子奢れよ」
「おう!」
優が会場を探し回っていると離れたところに穂乃花を見つけた。
(いた!キャプテンはいない……な)
優は穂乃花を追いかけると背後にガラの悪い男を二人見つける。
「あの子いいだろ?」
「そうか?イマイチだろ」
「いいか?人気がなくなったら行くぞ」
「わかったよ」
それを聞いた優は即座に咲人に連絡した。
『どうした?まだキャプテンとイチャついて……』
「咲人。今すぐこっちに来てくれ。緊急事態だ」
「なんでうちから離れるのよ!優!」
「……」
「もしかして別人のふりするつもり?」
穂乃花が男の仮面を取る。その素顔はずっと見続けてきた幼馴染の顔だった。
「ほら優じゃん。なんで逃げたのよ」
「……気まずかったからさ」
「メールで謝ったのに……全然見てくれなくて怒ってるって思ったんだよ?」
「ごめん……穂乃花からのメール見たくなくてさ」
お互いの間に沈黙が流れる。
「優……ごめんね。誘ってくれたのに断っちゃって……」
「俺の方こそごめん。好きな人と行きたいのは当然だろ」
「来年は絶対優と行くから」
「どうせ俺に奢らせるんだろ?」
「ダメ?」
「ほどほどならいいぞ」
「あっ……鼻緒が切れちゃった……」
下駄をよく見ると鼻緒が切れている。
「優。おんぶして」
「無理」
「小さい頃してくれてたじゃん!」
「いや今の穂乃花はあの頃と比べてだいぶ重っ……」
穂乃花が無理やり優の背中にしがみつく。
「おい!」
「おんぶして?」
「……ったく」
優が穂乃花の両足を持ち上げて、おんぶする。
「重っ!」
「女の子に向かってそんなこと言うのよくないよ!」
「じゃあ穂乃花って体重何キロ?」
「ダメ!」
穂乃花が優の頭を叩く。
「優」
「なんだ?」
「助けてくれてありがとう」
「あぁ」
綺麗な満月が二人を照らしていた。