第62話 マシュマロ幼馴染との関係
休み時間、小学生たちが運動場でドッジボールをしていた。
「いくぞ!」
小学五年生の優がボールを思いっきり投げる。
「うわっ!」
クラスメイトに直撃し、アウトを勝ち取る。
「よっしゃぁ!」
「優強ぇ!」
クラスメイトたちが優に注目する。
「優がいればドッジボール無敵だな!」
「今度のドッジボール大会も優勝間違いなしだな!」
「任せろ!」
優がクラスメイトたちの期待に答えるとチャイムが鳴る。
「もう終わりかぁ~。早く教室行こうぜ!」
「おう!」
皆が教室に戻っていく中で、優は幼馴染の元に駆け寄る。
「穂乃花。行こう」
「……」
穂乃花はムスッとしている。
「どうした?」
「いいなぁ優……ドッジボール強くて……うちはすぐアウトになったもん……」
「苦手な人は一回しか出なくていいんだから、そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ」
「そうだけど……」
優は穂乃花に手を伸ばす。
「ほら。授業始まるよ」
「……うん」
穂乃花は優の手を握る。
「柔らかいね」
「うるさい!」
家庭科の時間では調理実習でピザを作っていた。
「できた!」
穂乃花は軍手をしてオーブンからピザを取り出す。
「美味しそう~!」
穂乃花がよだれを垂らす。
「はいはい。もうちょっとで食べられるからな」
優は手慣れた感じでハンカチで穂乃花の口を拭く。
「それじゃあピザを切って皆で食べましょう!」
優が包丁で切り、皿によそっていくと穂乃花が待ちきれないようにピザを手に取り、パクッと口に入れる。
「おい!」
「美味しい~!」
穂乃花が目を輝かせる。
「……ったく。俺たちも食べよう」
「うん」
皆がピザを口に入れる。
「美味っ」
「美味しいね!」
「うちが生地作ったからかな?」
「そうかもな」
穂乃花が優の顔をじっと見つめる。
「優。ほっぺにケチャップ付いてる」
「マジか……食べる時に飛んでいったんだな」
優がティッシュで拭こうとすると穂乃花が優の頬にキスをする。
「何してるの⁉」
「ケチャップ美味しい~!」
穂乃花はピザを食べるのに夢中だ。
同じ班の女子が顔を赤くしながら二人に質問する。
「ねぇ。優君と穂乃花ちゃんって……付き合ってるの?」
「……つ、付き合ってねぇよ……」
優が恥ずかしそうに否定する。
「そうなんだ!今のが普通なの?」
「……初めてだ」
「穂乃花ちゃんって優君のこと好きなの?」
「……!何言って……」
反論しようとするが、気になる自分がいて口を閉じる。
穂乃花はピザを食べながら答える。
「好きだよ?」
「!!!」
それを聞き、穂乃花以外の班のメンバーの顔が赤くなる。
「いつもうちと一緒に居てくれるし、遊んでくれるし」
「……」
優は覚悟を決めた。穂乃花が好きって言ったんだから俺も……
「穂乃花……俺も穂乃花が……」
「皆も優のこと好きでしょ?」
「……え?」
全員ポカンとした顔になる。
「休み時間いつも仲良く遊んでるじゃん」
「穂乃花ちゃん……もしかして友達として好きってこと?」
「……?うん」
優はショックを受けたのか凄く落ち込んでいた。
帰りの時間になり、優がランドセルを背負うと穂乃花が抱きついてきた。
「優!一緒に帰ろ!」
「ちょっ!離れろよ!」
「なんで?」
「なんでって……距離考えろよ」
「……?」
優がそう言った理由を穂乃花は理解できなかった。
「早く帰るぞ」
「うん……」
下校中、穂乃花は楽しそうに明日について話す。
「楽しみだね!お泊まり!」
「あぁ……」
「優と一緒に遊ぶの楽しみ!」
「……」
穂乃花はそう言うが異性として意識されていないショックを受けていた。
(だからいつも距離が近かったんだ……穂乃花の中で俺はただの幼馴染なんだ……)
「久々に優とお風呂に入れるね!」
「……!」
優が立ち止まる。
「どうしたの優?」
「穂乃花……俺のこと男として見てないんだろ?」
「……?どういうこと?」
「それなのにさ……こんなに距離近いのよくないと思う……」
「近いって……うちは優と幼馴染だから……」
「……もういい」
優はダッシュで走って行く。
「ま、待って優!」
穂乃花は追いかけるが、運動が苦手な穂乃花が追いつけるはずもなく、優の背中を見失った。
「ただいま……」
「おかえり穂乃花」
母親が穂乃花の顔を見ると落ち込んだ表情をしていた。
「……何かあった?」
「……ぐすん」
穂乃花が泣き始めた。
「どうしたの穂乃花⁉」
「優に……嫌われちゃったよぉ~……」
「……何があったか話してみて?」
穂乃花は泣きながらさっきの出来事について話す。
「そっか……」
「うち……何か優が嫌がることしちゃったかな……」
「穂乃花。聞いて」
母親が穂乃花の両手を握る。
「優君はね、大人になろうとしてるの」
「大人に?まだうちら小学生なのに?」
「穂乃花も最近体が成長してきてるでしょ?優君も成長してきてると思う。でもね、優君は体だけじゃなくて心も大人になってきてるの」
「心も……?」
「そう。大人になってきたらね、子供の頃にやっていたことが恥ずかしくなったりするの。
優君も穂乃花に甘えられるのが恥ずかしくなったんじゃないかな?」
「じゃあ……優に甘えたらダメなの?」
穂乃花が寂しそうに言うと母親が頭を撫でる。
「穂乃花は甘えん坊だからね。わからないけど、優君も恥ずかしいだけで嫌っていうわけじゃないんじゃないかな?」
「そっか……」
「明日、優君と話してみたら?」
「うん!」
翌日。穂乃花が優の家にやって来た。
「穂乃花ちゃんいらっしゃい!」
「お邪魔します……」
「優!穂乃花ちゃん来たわよ!」
母親の声で優がやって来る。
「……部屋来て」
「うん……」
二人が優の部屋に入ると優が頭を下げた。
「穂乃花ごめん!あんなこと言って!」
「ううん!うちが悪いの。優に甘えすぎたから……」
「いや、穂乃花は悪くないよ。穂乃花の距離が近くなるのが怖かったから……」
「あのね、優」
「何?」
「うち……甘えん坊なの」
「知ってるよ」
「恥ずかしいって思うかもしれないけど……これからも優に甘えたい……」
「……二人きりの時だけなら」
「本当⁉」
穂乃花が嬉しそうな顔をする。
「優~!」
穂乃花が優に抱きつく。
「ちょっ!抱きつくのはダメだって!」
まだ意識されていないとは思うけど、もう少しこの関係を続けてもいいかな……
そう思った。




