第55話 マシュマロ彼女と修学旅行(京都観光後編)
「げっ……」
美咲がそう言ったのは歩いている途中に千秋と出会ったからだ。
「……」
「……」
気まずい空気が流れる。
「あんた何してたの?」
「穂乃花ちゃんに謝りたくて……これ買ってた」
そう言って千秋が見せたのは和菓子だった。
「穂乃花ちゃん甘いの好きだから……喜ぶかなって……」
「……そう」
「そういう美咲ちゃんは何してたのよ」
「私はお土産を買いに行ってたのよ……穂乃花の分も含めて」
「お互い考えてること一緒だね」
「そうみたいね」
「ごめんね美咲ちゃん。ついカッとなっちゃって」
「謝るのは私の方よ。あんたのことよく知らないのに偏見で嫌いになってた」
「仲直り……ってことでいいのかな?」
「そうね」
「穂乃花ちゃんに謝らないと」
二人が移動しようとすると気まずそうに穂乃花がやって来た。
「ごめん二人共!勝手に離れて……」
「謝るのは私たちの方だよ!」
「私が千秋と関わることを避けてたのが原因だから……ごめん穂乃花」
「私もごめんね!」
二人は頭を下げた。
「顔を上げて。うちは大丈夫だから」
「これからは美咲ちゃんと仲良くするから!ね!」
「まぁ……」
「何その反応!」
「じゃあ平等院行く?」
「行く!」
「うん!」
仲直りした三人は平等院に向かって歩き始めた。
17時になり、生徒たちが全員京都駅に集合するとバスでホテルに移動する。
「清水寺楽しかったなぁ~!また行きたいなぁ~!」
「今日はたくさん歩いたから疲れたな」
「ホテル着いたらゆっくり休もう」
「そうするか」
穂乃花たちも車内で今日の出来事について語り合う。
「楽しかったね」
「うん!」
「宇治抹茶も美味しかったわね」
「明日は奈良かぁ~鹿さんに会うの楽しみだなぁ~!」
「ちーちゃんは動物大好きだもんね」
「うん!鹿せんべいあげたい!」
ホテルに着き、部屋でゆっくりしていると夕食の時間になり全員レストランに移動する。
「奈良も楽しみだけどホテルのご飯も楽しみだな!」
「ビュッフェだからな」
優たちが移動していると穂乃花たちと目が合った。
穂乃花が手を振ったので優も手を振る。
穂乃花が優に話しかけようと移動しようとすると千秋が手を引っ張る。
「お腹空いたから早く行こうよ!」
「う、うん……」
穂乃花は話すことができずそのままレストランへと向かって行った。
(楽しんでそうだな。穂乃花)
話すことはできなかったが表情を見るだけで元気が出た。
「「ごちそうさまでした」」
生徒たちが全員手を合わすと学年主任が前に立つ。
「ではこれからクラスごとに大浴場に移動してもらいます。入浴時間は決まっているのでそれ以上は入らないように。時間外のクラスの人は部屋でゆっくりして明日に備えてください」
「「はい!」」
優は席から立ち上がると穂乃花のクラスが座る席に向かう。
(俺のクラスも穂乃花のクラスも入浴まで時間あるしロビーで話せないかな?)
男子部屋と女子部屋の行き来禁止だし……
「あっ……優!」
「なぁ穂乃花この後……」
優が誘おうとすると千秋が割り込んできた。
「ダメ!穂乃花ちゃんは私たちと部屋で女子会するの!」
「げっ……千秋……」
優が嫌そうな顔をする。
一年の頃から休み時間に穂乃花と話すことがあったが千秋が邪魔してきたため、学校で話す時間は昼休みと放課後に限られていた。
「入浴の後でいいだろ」
「ダメ!大体私は優君と穂乃花ちゃんが付き合ってるの認めてないからね!」
「なんでお前の許可がいるんだよ」
「穂乃花ちゃんの大親友だから!」
「えぇ……」
美咲がため息をつきながら千秋に話しかけた。
「お喋りなら私が付き合ってあげるから二人きりにさせてあげなよ」
「嫌!穂乃花ちゃんともお喋りしたいの!」
「バスで散々喋ったんだからいいでしょ」
「ダメ!」
千秋が穂乃花を無理やり引っ張る。
「行こう!穂乃花ちゃん!」
「優ごめんね」
「あ、あぁ……」
そこは断ってくれよ……そう思った優であった。
時間が経つと、ホテルの大浴場で千秋が気持ちよさそうに湯に浸かる。
「はぁ~あったかい……」
「どんな顔して入ってるのよ」
「美咲ちゃんは気持ちよくないの?」
「私は美肌効果があるお風呂にしかそういうの感じないのよね」
「へぇ~意外。穂乃花ちゃんは?」
「気持ちいいよ。疲れがなくなっていく感じがするね」
「そうだね~」
千秋が後ろから穂乃花を抱きしめる。
「ち、ちょっとちーちゃん……」
「穂乃花ちゃんのお腹……直接触ると柔らかいね」
「優みたいなこと言わないでよ……」
恥ずかしそうに言うと千秋の表情が変わる。
「え……?優君にも触らせてるの?」
「触らせてるっていうか……勝手に触ってくる……」
「じゃあ明日優君に怒ってあげる!」
「そ、そんなことしなくていいよ!」
「なんで?嫌なんでしょ?」
「えっと……」
嫌……なのかな?
触ってくるのは嫌だけど触られたら優の愛情を感じて嬉しいという複雑な感情な気がする……
「いつも触ってくるのはやめてほしい……かな……」
「……穂乃花ちゃんって優君のこと好き?」
「好きじゃなかったら付き合ってないよ」
穂乃花がニッコリと微笑む。
「わかったでしょ?これからちょっとは山城と二人きりにさせてあげなさいよ」
「でも……穂乃花ちゃん取られるの嫌だ……」
「安心して。うちはずっとちーちゃんの親友だよ」
「穂乃花ちゃん……」
穂乃花の言葉で千秋は心に抱えていた不安がなくなったような気がした。
穂乃花たちが大浴場から出てくると優も出てきた。
「「あっ……」」
優と穂乃花の目が合うと千秋が優に近づいてきた。
「穂乃花ちゃんのお腹!触るのは程々にしないとダメだよ!」
そう言うと穂乃花と美咲に行こ!と言って部屋に戻って行った。
「なんだあいつ?」
優が首を傾げた。




