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マシュマロが好き  作者: 鵲三笠
第二部

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第48話 マシュマロ彼女と甲子園(中編)

開会式が終わり、野球部は練習場で練習していた。


「お前らペース遅いぞ!」

「「うっす!」」


監督の怒号が練習場に響く。


「はぁ……疲れた……」


優が水筒に入った水を飲む。


(柏原大和……俺の投球はあいつに通用するか?)


優は開会式で見た大和の顔を思い浮かべる。


(いや……通用するじゃない。通用させるんだ!)


優は水を思いっきり飲むと練習に戻った。



数日経ち、光星学園の甲子園初試合が始まった。

相手は南陽学園。序盤、優の好投で0点に抑え、試合は緊迫した投手戦に。3回、光星学園の4番・岸本がセンター前にタイムリーを放ち、1点を先制。

中盤は互いに無得点。味方の堅い守備がリズムを作る。

7回、相手に1点を許し同点。だが9回、代打・中谷の一打がレフト線を破り、ランナーが一気にホームイン。2-1。

最終回、最後のバッターを三振に仕留め、ゲームセット。

光星学園、甲子園初勝利。夢の舞台での第一歩を、確かに踏み出した。


(この調子で甲子園を優勝するぞ!)


優はやる気に満ちあふれていた。


「この調子がずっと続くといいわね」

「……」

「穂乃花?」

「う、うん!そうだね!」


穂乃花は笑顔を浮かべていたがそれでも不安そうに優を見つめていた。



数日後、優は奈良神鹿高校の試合を観戦していた。


『柏原打った~!』


実況で観客が大いに盛り上がる。


『満塁ホームラン5-1で一気に突き放した!』


優は嬉しそうにする大和を見つめる。


(俺も頑張らないと……)


次の2回戦では試合開始早々、優は立ち上がりからボールが高めに浮き、先頭打者に四球。その後もヒットとエラーが絡み、いきなり1失点。

2回以降も毎回走者を許し、味方ベンチの空気も重くなる。

だが、ピンチのたびにバックが踏ん張り、ダブルプレーや好守で流れを断ち切る。

打線は4回、下位打線からの連打とバントでチャンスを作り、タイムリーで逆転に成功。6回には犠牲フライで貴重な追加点。

7回途中、球数がかさんだ優が降板。リリーフ陣が無失点でしのぎ、試合終了。優は本調子ではなかったが、勝利することができた。



ホテルに戻った優は部屋のベッドにダイブする。


「優大丈夫か?今日の試合結構打たれてたけど」

「いや、大丈夫じゃない。調子悪くなってる気がする」

「おいおい。お前がいないと甲子園優勝は難しいぞ?大丈夫か?」

「優勝どころかレギュラーから外されるかもな……」


調子悪いのは今日だけだと信じたい。でも……この状態がまだ続いたら……


「ちょっと外の空気吸ってくる」


部屋を出ると目の前に穂乃花がいた。


「あっ……優……」

「どうした穂乃花?」

「ちょっと話せる?」

「?」


二人は近くの公園に移動する。


「話って?」

「じゃ~ん!」


穂乃花が見せたのはグローブと球だ。


「キャッチボールしよう?」

「なんでだよ」

「いいじゃん!ほらグローブ持って!」


優は穂乃花から渋々グローブを受け取る。


「投げるよ!」

「あぁ」


穂乃花が球を投げる……が変な方向に飛んでいく。


「どこに向かって投げてるんだよ……」

「う、うるさい!じゃあ優が投げて!」


優が球を取る。


「いくよ」

「うん!」


優は球を投げる。


「うわっ!」


穂乃花が飛んできた球に驚き、慌ててキャッチする。


「早いよ~。少しは手加減してよ……」

「手加減したつもりだったんだけどな」


その後も二人はキャッチボールを続ける。

穂乃花の投球が変な方向に行ったり、キャッチできなかったりしたがそれでも優は笑って楽しんでいた。


「もう暗くなったな。そろそろ夕食だし戻るか」

「うん!」


穂乃花が優と手を繋いで移動する。


「なんでキャッチボール誘ったの?」

「……不安だったんだ。甲子園に凄い人がたくさんいたから大丈夫かなって」

「そっか……」

「迷惑だったかな?」

「ううん。気分転換になったからやってよかったよ」

「よかった」

「穂乃花が球を拾いに行ったり、変なとこに投げたりするところが可愛かったから本当に気分転換になったよ」

「そっち⁉」


穂乃花が頬を膨らませる。


「ありがとう穂乃花。俺、頑張るよ」

「うん!」


優は穂乃花の手を強く握った。



甲子園のマウンドで優は深呼吸して右腕を振る。


「ストライク!」


球審の声に、スタンドが沸く。

だが、優の視線はまっすぐバッターに向けられたままだ。


(あと二つ……)


キャッチャーの茂雄がミットを構えながら、小さく呟く。

優はうなずくと、再び深く息を吸った。

優の右腕が再び振り下ろされる。カーブ。内角低めギリギリを狙った一球。

バッターのバットが空を切る。


「ストライクツー!」


スタンドがどよめく。ツーストライク、ノーボール。追い込んだ。

キャッチャーの茂雄が、何も言わずに外角高めにミットを構える。

最後の一球、信じて任せるという合図だろう。

優はうなずき、目を閉じて最後の深呼吸。


(いくぞ!)


優が右腕を振るとバッターがバットを振る。

そして聞こえた音は……ミットが球をキャッチする音だった。


「ストライクスリー!バッターアウト!ゲームセット!」


スタンドと部員たちが盛り上がる。


「凄いぞ優!俺たちが準決勝に出れるなんて信じられないよ!」

「皆の守備のおかげだよ」

「んなことねぇよ!」


歓喜する部員たちを見ながらマネージャー陣も喜ぶ。


「本当に準決勝に進出するなんて皆さん凄いですね!」

「あんたうるさい」

「す、すみません!つい……」

「いいじゃん美咲。喜んだって」

「そうは言っても準決勝の相手は……」

「大丈夫。皆なら絶対勝てるよ」


穂乃花は周りの中心にいる優を見つめていた。



ホテルの部屋に戻り、茂雄は優に話しかける。


「優。準決勝の相手……」

「わかってる。奈良神鹿高校だろ?」

「俺たちが勝てると思うか?」

「……不安か?」

「不安に決まってるだろ。相手は去年の準優勝校だぞ」

「だからなんだ。どんなに怯えても試合から逃れられない」

「優は勝てると思っているのか?」

「思う思わないじゃない。勝つんだよ。勝つって信じないと勝負に勝てない」

「……そうだな。お前の言う通りだ」


茂雄は納得するとベッドから立ち上がる。


「よし!じゃあ夕飯食いに行こうぜ!」

「あぁ」


優も立ち上がった。


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