第5話 マシュマロ幼馴染と不穏な空気になる
夏休み。甲子園出場を逃した光星学園野球部は来年の出場に向けて練習を始める。
空の推薦で優がレギュラー候補になっているが自分にはまだレギュラーになるほどの力がない。
(甲子園で通用するピッチャーに必ずなる!)
優は固い意志を胸にボールを投げる。
「ナイス!今の投げは速かったぞ」
キャッチャーの伊藤茂雄が優を褒める。
「いや……今のは甲子園には通用しない。もっと速く投げれるようにならないと」
優と茂雄の会話を穂乃花が見守る。
「最近、山城君頑張ってるね」
穂乃花と同じマネージャーの濱野美咲が話しかける。
「そうだね。秋風先輩がいなくなってから優も頑張らないといけないって思ったんだろうね」
「三年生が多かったから野球部の人数も結構減ったね」
「そうだね……いつも秋風先輩が仕切っていたからすごく違和感ある」
「穂乃花ってばいつも秋風先輩見てたからね~」
「だ、だって……!」
「わかってるってば!応援してるよ!」
優が穂乃花と美咲が喋っているところを見つめる。
「優~早く投げろ~」
「あぁ……」
優は再びボールを投げた。
お昼になり、昼食の時間になる。
野球部はマネージャー手作りの塩おにぎりを食べる。
優が食べているところに穂乃花が話しかけてくる。
「ねぇねぇ優」
「なんだ?」
「そのおにぎり誰が作ったでしょう?」
「穂乃花だろ?」
「ピンポン!正解!なんでわかったの?」
「こんなにでかいおにぎり作るの食いしん坊の穂乃花しかいないだろ」
「く、食いしん坊って……ちょっと食べる量が多いだけだもん……」
穂乃花が少し恥ずかしそうにする。
「去年の夏祭り、屋台の食べ物いっぱい食べてたくせに……」
「あれは美味しい食べ物がたくさんあるから悪いのよ!」
「……今年も一緒に行くか?」
「え⁉優の奢り⁉」
穂乃花が目を輝かせる。
「言ってねぇよ。まぁ……ちょっとだけなら奢ってやるよ」
「やった~!楽しみだな~!焼きそば……ミルクせんべい……りんご飴……」
穂乃花がよだれを垂らしながら妄想する。
(小遣いあったかな~)
優は財布にある金額を心配していた。
「ただいま~!」
穂乃花が家に帰宅する。
「おかえり。機嫌良いけど何かあった?」
「優と今年の夏祭り行くことになった~!」
「相変わらず二人共仲良いわね」
「え?幼馴染だから当たり前でしょ?」
「この子ったら……気をつけなさいよ」
「うん!」
穂乃花が部屋に入り、鞄からスマホを取り出すと着信メッセージがあった。
送り主は空だ。
(あ、秋風先輩⁉何だろう?)
穂乃花はメッセージを開く。
『この前は約束を断ってしまってごめん!埋め合わせって訳じゃないけど今度の夏祭り一緒に行かない?』
「あっ……」
穂乃花に迷いが生じる。自分はすでに優と約束してしまっている。
その後に想いを寄せている人に誘われてしまった……
優とは毎年行ってるし断って……でも……
「どうしよう……」
穂乃花はスマホの画面を見つめていた。
翌日の練習。
優がトレーニングルームでストレッチしているところに穂乃花がやってきた。
「穂乃花……どうした?」
「あの……ちょっと言いたいことがあって……」
「なんだ?」
「今年の夏祭り……秋風先輩と行っていい?」
「!」
優の動きが止まる。
「なんで?」
「秋風先輩に誘われちゃって……前、水族館に行けなかったし……」
「……穂乃花は俺よりキャプテンと一緒に行きたいのか?」
「そういうわけじゃ……」
「そうだから俺よりキャプテンの方に行こうとするんだろ!」
優が激昂する。それに穂乃花がビクッとする。
「……悪い。言い過ぎた。楽しんでこいよ」
優がトレーニングルームを出ていく。
(優……どうしちゃったの?)
優の想いを知らない穂乃花が激昂した理由に気づけなかった。
「クソ!」
優が壁に拳をぶつける。
(何やってるんだよ……うまくいかなくなったからって穂乃花に八つ当たりして……)
優は壁に頭を打つ。汗が地面に落ち続けていた。