第45話 マシュマロ彼女と過ごす開幕前(前編)
光星学園野球部は新幹線で新大阪駅に向かっていた。
「もうすぐ甲子園かぁ~緊張する~」
「俺たちの試合はまだ先だろ?」
「でも開会式は明日だろ?ちゃんと入場できるかな……」
「そこかよ!」
優は隣の席に座る穂乃花をずっと見ていた。なぜなら……
「なんで駅弁食べてるんだよ」
穂乃花は口をもぐもぐしながら優の方を向く。
「お腹空いたからに決まってるでしょ?」
「朝食べてないのか?」
「食べたよ。食パンにいちごジャムつけてサラダにコンソメスープ」
「結構食べてるじゃん……」
「足りなかったの!」
「さすが食いしん坊」
「食いしん坊じゃないもん!」
言い合う二人を美咲がじっと見つめる。
「二人共。車内でイチャイチャしないでよ」
「イチャイチャしてないもん!」
「そうだぞ!ホテルでする予定だから!」
「何言ってるの⁉」
「はぁ~。本当に仲良いわね……」
美咲は隣に座っている紗也華をチラッと見る。
「……あんた。ちゃんと甲子園ではしっかり働きなさいよ」
「は、はい!もちろんです!」
新大阪駅に到着し、そこから貸切バスに乗り換える。
部員とマネージャーがそれぞれ指定された貸切バスに乗車する。
「弁当配りま~す」
穂乃花が次々と部員に弁当を渡していく。
「はい!これ優の分!」
「ありがとう。ところで……穂乃花の分もあるのは気のせいかな?」
「ううん!気のせいじゃないよ。うちも食べるから当たり前じゃん!」
「あんだけ食べてまだ食うのか⁉」
「うん!」
「さすが食いしん坊……」
「食いしん坊じゃないもん!」
優と穂乃花の言い合いを聞きながら部員たちは黙って食べる。
(チッ!リア充が……)
(ここでイチャつくな!)
(山城がレギュラーだから文句言えねぇ自分に腹立つ……!)
彼女欲しいと心から思う部員たちであった。
紗也華は部員たちに弁当を渡し終わると座って弁当を食べ始める。
(前は皆声かけてくれてたのに……でも当然か……)
紗也華が黙々と一人で食べていると和夫がやって来た。
「隣いいですか?」
「う、うん……」
和夫が隣の席に座る。
「美味しそう~。いただきま~す」
「……」
紗也華は弁当を食べる和夫を見つめる。
「……どうして私のところに来たの?」
「一人で食べるのが嫌だっただけですよ」
「だからって私のところに来る必要ないでしょ……」
「そうですか?紗也華さんも誰かと食べたそうな顔してましたけどね」
「……私といたら嫌われるわよ」
「別に僕が誰といようとそれを咎める権利はないと思いませんか?」
「……」
「食べないんですか?美味しいですよ?」
「食べるわよ……」
紗也華は肉団子を口に含んだ。
ホテルに着き、部員たちはそれぞれ自分の部屋に移動する。
(部屋広……)
優はベッドにダイブする。ふっかふかだ。
「やっほ~優!」
茂雄と和夫がやって来た。
「この後何かあったっけ?」
「今日は夕食までフリータイムだったはずです」
「じゃあ俺疲れたから寝るわ……」
茂雄がベッドに寝転んだ。
「山城先輩も寝ますか?」
「そうだな……」
優も寝転がる。
(いよいよ夢に見た甲子園……絶対頑張るぞ……)
甲子園優勝を胸に優は目を閉じた。




