第39話 マシュマロ幼馴染がいない日々(前編)
「……もう朝か。眠れなかったな……」
今日は朝練が休みでよかった⋯⋯
穂乃花に別れを告げられてから一睡もできなかった。
スマホを確認するが通知はない。メールを見ても穂乃花の既読がついていなかった。
(穂乃花……)
スマホの待ち受け画面に映った穂乃花が微笑んでいる。
(今日ちゃんと謝ろう)
優はベッドから立ち上がり、部屋を出た。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
優は家を出て、学校に向かう。
(やっぱり来なかったか……)
でも学校で会えるだろう。そう考え、休み時間に穂乃花のクラスに向かったが……
「穂乃花なら今日は休みよ」
「えっ?」
美咲にそう言われ、優は固まってしまう。
「そっか……」
「私言ったよね?距離を取れって」
「そうだけど……困っていたみたいだったから放っておけなくて……」
「何を困っていたのよ?」
「秋風先輩の誕生日プレゼント……」
「はぁ⁉」
美咲の反応に生徒たちがビクッとする。
「それぐらい自分で選ばせなさいよ!なんでそんな相談でついていくのよ!」
「ごめん……」
「私じゃなくて穂乃花に言いなさいよ」
「電話もメールも繋がらないんだよ……」
「私も繋がらないわよ……あんたのせいで」
「ごめん……」
二人の間に沈黙が流れる。
「今日の練習は休んで穂乃花のところに行きなさい。いいわね」
「わかった……」
昼休み。優が食堂に向かっていると誰かにポンポンと肩を叩かれる。
「先輩!約束通りお弁当を作ってきましたよ!」
紗也華が自慢げにお弁当が入った風呂敷を見せる。
「……いらない」
「照れてるんですか~?先輩にも可愛いところがあり……」
「いらないって言ってるだろ。俺に近づくな」
優が睨みつけるが紗也華は全く物怖じしない。
「そんなこと言っていいんですか~?」
紗也華が優の耳に囁く。
「今、1年の間で話題になっているんですよ。私に彼氏ができたって」
「だからなんだよ」
「今も背後に私のことが好きな男子たちが先輩を見ています。先輩がどんな人か見てるんですよ?彼氏だと思われて」
優がチラッと見ると男子生徒たちがこっそり覗いていた。
「私にひどいことしたら甲子園のレギュラーもどうなりますかね?」
「……どういうことだ?」
「例えば……雪宮先輩を捨てて私に乗り換えた噂が野球部に広まったりして……」
「脅すつもりか?」
「そんなこと好きな人にするわけないじゃないですか!ただ私は先輩を心配して言ってるだけですよ?」
「……」
どうする……ここで逆らったら甲子園に出場できなくなるかもしれない……
「先輩。一緒に食べましょう?」
「……そんなに一緒に食べたいならあいつらと食べろ」
「……え?」
紗也華がポカンとする。
「じゃあな」
「ち、ちょっと待ってください!いいんですか?甲子園に出場できなくなってもしりませんよ?」
「勝手にしろ。俺は甲子園より穂乃花の方が一番大事だ」
「⋯⋯なんでよ!なんで私を見てくれないの!雪宮先輩より可愛いし、美人なのに!」
「……無理に振り向かせようとしてもそう簡単に人間が揺れるかよ。それに今の紗也華ちゃんは全然可愛くないよ?」
「~~~!」
優が離れると覗いていた男子生徒たちがざわつく。
「おいおい振ったのか?」
「あんなに可愛くて美人な紗也華ちゃんを可愛くないって……」
「うわぁ……最低だな」
その後、1年の間で優が美少女をひどい振り方をした最低男と噂になった。




