第38話 マシュマロ彼女との別れ
とある日。野球部の朝練を見ながら美咲と穂乃花が話していた。
「穂乃花。今度の休み、渋谷に行かない?」
「いいよ」
「どこ行く?」
「じゃあ……」
二人の会話を聞いた紗也華はニヤリと微笑んだ。
教室で優と咲人が話していると紗也華がやってきた。
「先輩!少しいいですか?」
「どうした?」
優が立ち上がり、廊下で紗也華と話す。
「昼休みに監督から話があるそうなので教官室に来てほしいらしいです」
「それってすぐ終わる?」
「さぁ?甲子園も近いので長いんじゃないですかね?」
「マジかよ……穂乃花とご飯食べられないじゃん……とりあえずありがとう」
「ではまた!」
「あぁ」
紗也華が廊下を歩くと生徒が思わず振り返る。
「あれが1年の学年首席か?」
「可愛い~」
「彼氏いるんだろうな~」
『ごめん!昼休み一緒にご飯食べられない!』
スマホに送られたメッセージを見て穂乃花は頬を膨らませて了解と返信する。
「美咲~。今日ご飯一緒に食べよう?」
「山城と食べないの?」
「なんか一緒に食べられないんだって」
「それ大丈夫?」
「何が?」
「もしかして紗也華ちゃんとご飯食べたりするんじゃ……」
「優はそんなことしないから大丈夫!」
「ならいいけど……」
美咲は不安に感じていた。
昼休みに優が教官室に向かうと紗也華がいた。
「紗也華ちゃんも監督に呼ばれたの?」
「いいえ。呼ばれていませんけど」
「じゃあどうして……」
「実は監督が呼んでいるというのは噓なんです」
「噓?」
「相談したいことがあるんです。聞いてくれませんか?」
帰り道、穂乃花は優に気になっていたことを聞いた。
「なんで昼休み一緒に食べれなかったの?」
「やっぱり気にしてた?」
「気にするよ。うちより大事なことなんでしょ?何だったの?」
「監督に呼ばれただけだよ」
「そっか。じゃあ仕方ないね」
穂乃花はホッとした表情をしていた。
「どうした?」
「実は……紗也華ちゃんと会っていたんじゃないかって不安になってたからよかったと思って」
それを聞いた優の体が一瞬固まる。
「そ、そんなわけないだろ」
「そうだよね。優はうちのこと大好きだもんね」
「ハハ……」
優の力のない笑いに穂乃花は気づかなかった。
日曜日。穂乃花は美咲と渋谷のカフェに来ていた。
「ケーキ美味しそう!」
「本当に穂乃花はスイーツ好きだよね」
「デザート食べる時って幸せだと思わない?」
「それはそうだけど」
穂乃花が美味しそうにケーキを食べるのを美咲はじっと見つめる。
「山城とは順調なの?」
「うん!ラブラブだよ!」
「そう」
美咲はパンケーキを口に入れる。
「ねぇ。紗也華ちゃんは大丈夫なの?」
「優はうちのこと大好きだもん。だから大丈夫」
「……本当にそう思ってるの?内心不安になってるんじゃないの?」
「それは……」
穂乃花の手が止まる。
「吐き出してみなさいよ。一人で抱え込まないで」
穂乃花はしばらく黙っていたが少し時間が経つと口を開いた。
「実は……」
穂乃花は美咲に抱えていた不安を話した。
優がもうすぐ紗也華の彼氏になると予言されたことを。
「何それ⁉信じられない!」
「美咲落ち着いて!」
「落ち着いていられないわよ!だってまた山城に何かするつもりなんでしょ⁉」
「そうだけど……」
「紗也華ちゃんに電話して注意しないと」
美咲はすぐに紗也華に電話をかけた。
『もしもし濱野先輩?どうかしましたか?』
「どうかしましたかじゃないわよ!あんたまだ山城のこと諦めていなかったの⁉」
『あちゃ~バレちゃったか~』
「次山城に近づいたら許さないわよ!」
『……雪宮先輩そこにいますか?』
「いるけど今は関係ないでしょ!」
『先輩たち今、渋谷ですよね?少し話しませんか?私も渋谷にいるので』
「はぁ⁉」
『ではハチ公のところで待っててくださ~い』
「ちょっと!」
通話既に切れていた。
「紗也華ちゃんはなんて?」
「ハチ公前に来てって。少し話したいから」
「そう……」
「どうする?なんなら私だけで……」
「うちも行く!優に近づいてほしくないから」
穂乃花と美咲はハチ公前で待っていたがなかなか紗也華がやって来ない。
「人呼んでおいてどんだけ待たせるのよ」
美咲はずっとイライラしていた。
「お待たせしてすみません~」
紗也華が全く反省していない感じでやってきた。
「あんたここに呼んでおいて何の話をするの?」
「ちょっと雪宮先輩に言いたいことがあって……」
紗也華が振り返り、誰かを呼ぶ。
「先輩こっちです!」
穂乃花が紗也華が呼んだ人物を見ると動きが固まった。
「紗也華ちゃんなんでここに……え?」
やってきた優が穂乃花と美咲を見て固まった。
「あんた……なんで一緒にいるの?」
「違う!これは……」
優の説明を阻むかのように紗也華は優に抱きついた。
「雪宮先輩。予言通り、私の彼氏になってくれました」
「はぁ⁉何言って……」
それを見た穂乃花は涙を流し、去って行く。
「穂乃花!待って!」
優は腕をほどき、穂乃花を追いかける。
「はぁ……はぁ……」
穂乃花は涙を流しながら走る。
「穂乃花!待って!」
優が追いかけて呼び止めるが穂乃花は止まらず、走り続ける。
「待てって!」
優が穂乃花の手を掴むが、すぐに振りほどかれる。
「離して!」
「違うんだ!これには訳が……」
「嫌だ!優の口から何も聞きたくない!」
穂乃花の涙が止まらない。
「優……うちら……別れよっか」
「え?」
穂乃花は再び泣きながら走っていく。
「おい!待てって!」
優が再び追いかけようとすると追いかけてきた紗也華に腕を掴まれる。
「先輩~。彼女を置いていかないでくださいよ~」
「もしかして今日俺を誘ったのって……」
「そうですよ。やっぱり先輩は優しいですね!後輩の相談に乗ってくれて」
紗也華が優の耳に囁く。
「その優しさが仇になりましたけどね」
「!!!」
「ちなみにお兄ちゃんの誕生日はまだ先で~す!探してくれてありがとうございました!おかげで誕生日になったらすぐ渡せます!」
「……」
「じゃあまた明日!先輩の分のお弁当作るので楽しみにしていてくださいね!」
呆然とする優を置いて、紗也華は駅に消えて行った。




