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マシュマロが好き  作者: 鵲三笠
第二部

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第37話 マシュマロ彼女と甘い約束

ゴールデンウィークに山城一家は新幹線で秋田に向かっていた。


「ごめんね。急に帰省したいって言って」

「いいんだよ。お義母さんの体調が悪いんだろ?娘と孫の顔を見たら元気になるよ」

「……」


二人の会話を優は黙って聞いていた。


(ばあちゃん……大丈夫かな?)


小さい頃から優しくしてくれた祖母が病気で入院したという。

そこで急遽、家族で母方の実家がある秋田に向かうことになった。


(ばあちゃんは元気だって言ってたけど心配だな……)


そう思っている間も新幹線は秋田に向かっていた。



「お母さん。来たよ」

「来なくていいって言ったのに」


病室に入ると祖母が本を読んでいた。


「だって病気なんでしょ?心配に決まってるじゃない」

「病気に負ける程私は弱くないよ」


祖母が読んでいた本を閉じる。


「優ちゃん久しぶり。野球部の練習があると思うのにわざわざここまで来てもらって……申し訳ないわ」

「休みだから大丈夫だよ。ばあちゃんが元気でよかった」

「ちょっと飲み物買って来る。優、お願いね」

「わかった」


両親が病室を出ると優と祖母の二人きりになる。


「優ちゃん。学校は楽しいかい?」

「楽しいよ。成績はギリギリだけど……」

「そうかい。頑張らないとね~」


祖母は楽しそうに聞く。


「ばあちゃん……本当に大丈夫なの?」

「今もこうして元気に話せているだろう?お母さんが心配しすぎなんだよ。手術すれば治るから大丈夫よ」

「そっか……ならよかった」


優はホッと安心する。


「でも……私ももう長くは生きられないよ」

「どうしてそう思うの?」

「分かるのよ。長く生きていたら自分の死期が」


祖母が窓の景色を眺める。


「……俺はばあちゃんに長生きしてほしいと思ってる。だから諦めないでほしい」

「もちろん諦めるつもりはないよ。少なくとも優が結婚式するまでは長生きしたいわね」

「……」

「ごめんなさいね。優ちゃんが結婚を考えていないのかもしれないのにこんなこと言って」

「ううん。俺もばあちゃんに見てほしい。実は俺、彼女がいるんだ」

「あらそうなの?よかったじゃない。彼女さんとは一緒にいて楽しいかい?」

「楽しいよ。明るくて、優しくて、いつも迷惑かけてるけど……それでも俺を好きでいてくれて……」


優は穂乃花と過ごす日々を思い出す。


「大切にしなさいよ」

「わかってるよ」

「私の長生きを願うのもいいけど優も長生きしなさいよ。じいちゃんは一生大事にするって私に言っておきながら私を置いて先に天国に行ったんだから」

「……ばあちゃんから見てじいちゃんってどんな人だったの?」

「そうねぇ……頭良くて勉強できるのに私へのアプローチが下手で好きってことがバレバレだったのよね」

「そんなじいちゃんにどんなプロポーズをされたの?」

「僕と結婚してください。ダサくて頼りないけど君を幸せにしたいという僕の我儘を聞いてくれますか?って聞いた時は思わず笑ってしまったよ。

プロポーズで我儘を言われるとは思わないんだから。

結婚後も妊娠や出産という大変な時期でも私を支えてくれたし、一緒にいて楽しかったし、幸せだったよ」

「そっか……」

「優ちゃんが彼女さんと幸せになることをばあちゃんは願っているよ」

「ありがとう」


やがて両親が帰ってきた。


「何の話してたの?」

「あんたには関係ないだろう」

「なんで私にはいつも冷たいのよ」

「子供には厳しく、孫には優しくしないとね」



ゴールデンウィークが明け、平日になると穂乃花が優を起こしに来る。


「優起きて!」

「……」


優が黙って起き上がる。


「優が起きるなんて珍しい……どうしたの?」

「穂乃花……」


優が穂乃花を抱きしめる。


「優?」

「俺……絶対穂乃花を幸せにするから」

「え?急にどうしたの?」

「……」


優から寝息が聞こえる。


(もしかして寝言?)


穂乃花はそう思いながらも優に囁く。


「うちも優を幸せにするよ」


恐らく優には聞こえていないだろう。

それでも……例え寝言であったとしても穂乃花は嬉しそうな顔をしていた。

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