第30話 マシュマロ彼女の本命チョコ
優が教室に入ると男子たちがそわそわしていた。
「お前……まだ貰ってないよな?」
「そっちこそ貰ってないよな?」
「貰ったら許さないぞ」
「俺だって」
クラスメイトが睨み合っている。
「咲人。皆なんでそわそわしているんだ?」
「今日バレンタインだからだろ?」
「あっ……」
そうか。今日は2月14日……バレンタインか。
「だからか……」
「いいなお前は。雪宮から貰えるんだろ?」
「そ、そうかな?」
去年は皆に渡していたチョコと同じのを貰ったけど……
今年は本命チョコ……だよな?
「咲人は?チョコ欲しいの?」
「別に恋愛に興味ないし。他の男と一緒にするな」
「素っ気ないなぁ……」
昼休み。優は食堂で穂乃花とご飯を食べていた。
「今日はバレンタインだからチョコレートパフェにしたんだ~!」
穂乃花が美味しそうに食べる。
「優のクラスはバレンタインで告白された人とかいた?」
「いや、休み時間の度にロッカーを確認して落ち込むの繰り返しが多いよ」
「そうなんだ。うちのクラスはバレンタインを気にする男子はいなかったなぁ~」
「ふ~ん」
「優のチョコも用意してるから放課後渡すね」
「ありがとう」
放課後。野球部の面々が練習に取り組んでいると美咲が大声で呼びかける。
「皆さん~!今日はバレンタインということでマネージャー陣からチョコを渡しま~す」
「マジで⁉」
部員たちが嬉しそうに美咲の元に走る。
「さぁさぁ皆さんどうぞ!」
美咲と穂乃花が部員たちにチョコが入った包みを渡していく。
「ほら優もどうぞ」
「ありがとう」
穂乃花から受け取った瞬間、あることに気づく。
(これ、去年と同じ流れでは?)
去年のバレンタインで渡されたチョコも皆と同じものだった。
その時は義理チョコだったから当然だが、今は恋人関係だ。
自分だけ特別なチョコを貰えるって期待していたんだけど……
(まぁ……貰えるだけありがたいと思うか)
「さぁさぁ!チョコを貰って元気になったらさっさと練習してくださいね!」
「おう!」
「甲子園優勝するぞ!」
部員たちが練習に戻る。
「無事に渡せてよかったけど疲れたね~」
「そうだね。喜んでもらってよかった」
美咲は家で穂乃花と共にチョコを作っていた。
先生、友達、部員……渡す人が多かったので作るのがかなり大変だった。
「でもやっぱり本命チョコ渡したいなぁ~義理だったらただプレゼントしてるだけの気分」
「美咲は好きな人いないの?」
「いないから言ってるのよ。野球部にもいい男いないし」
「そんなこと言わないでよ!優はいい男だよ!」
「それ、捉え方次第では山城以外はダメ男に聞こえるよ……」
「練習終わり!各自解散!」
「うっす!」
部員たちは荷物を持ち、学校を出る。
「優。帰ろう?」
「おう」
二人は帰り道を歩く。
「穂乃花のチョコ。美味しかったぞ」
「もう食べたの?」
「練習疲れるから甘いものが欲しくなるんだよ」
「そっか。よかった」
歩いていると優の家に着いた。
「じゃあまた明日」
「ま、待って!」
「どうした?」
穂乃花が鞄からプレゼントが入った包みを取り出した。
「これ……」
「何それ?」
「バレンタイン……だから……」
「?放課後貰っただろ?」
「~~~!」
穂乃花が恥ずかしそうに言う。
「気づいてよ……本命チョコって……」
「……え?」
優は思わず固まってしまう。
「じゃあ放課後貰ったのは?」
「あれは……義理チョコっていうか……幼馴染チョコ……かな?」
「そっか……ありがとう!凄く嬉しい!」
優が笑顔になる。
「優のために作ったんだからちゃんと味わってよね」
「もちろんだよ」
「じゃあまた明日」
「お返しちゃんとするから」
「期待してるよ」
穂乃花は嬉しそうに帰った。




