第3話 マシュマロ幼馴染と水族館に行く
夜の遅い時間に山城家のインターホンが鳴った。
「優~。出てくれる?」
「は~い」
優がドアを開けると穂乃花が立っていた。
「穂乃花?どうしたんだ?」
「こんな時間にごめん……どうしても優に話したいことがあって」
「わかった。とりあえずあがれよ」
「デート断られた~!」
穂乃花がギャン泣きする。
「なんで?」
「自主練で忙しいって……」
「まぁ……甲子園に向けて頑張らないといけないもんな」
「気分転換にどうかなって思ったけどダメだった……」
「……」
こんなに落ち込んでいる穂乃花を見たことがない。
(そんなにキャプテンと行きたかったのか……)
優の頭に一つ考えが思い浮かぶが断られるかもしれない。
それでも今の穂乃花を放っておくことはできない。
片想いしている人間としても。幼馴染としても。
「穂乃花」
「何?」
「水族館……俺と行かないか?」
「えっ?」
「その……キャプテンの代わりにはなれないけど……穂乃花って水族館好きだろ?久しぶりに一緒に行かないか?」
「……!うん!」
優は穂乃花を玄関まで見送る。
「ありがとう優!でも部活は……」
「週末は休みだろ?その日に行こうよ」
「わかった!楽しみにしてる!」
穂乃花は嬉しそうに帰って行った。
日曜日。優は公園のベンチに座っていた。
(さて……そろそろ時間のはず……)
そう思いスマホを見ると穂乃花からメールがきていた。
『ごめん~遅れる~』
「全く……寝坊か?」
優は呆れつつ、待つことにした。
「おまたせ~!」
穂乃花が走って来た。ぜぇぜぇ息が上がっている。
「めっちゃ疲れてるじゃん。家からここまで距離ないだろ」
「うちが運動苦手なの知ってるでしょ!」
穂乃花が頬を膨らませる。
「まぁまぁ。これがあるから」
優が穂乃花に缶ジュースを差し出す。
「オレンジジュース好きだろ?」
「好きだけど……ずるいよ……」
「何が?」
「そうやってうちの好きなもの出して怒りを鎮めようとするんだから」
「穂乃花の好きなものはお見通しなんだよ。ほら」
「ありがとう……」
穂乃花の笑顔を見て優がドキッとする。
「は、早く行こうぜ!」
「うん!」
優と穂乃花が水族館に入ると数々の水槽が展示されている。
「優見て!クラゲだ!」
優は穂乃花がはしゃいでいるのを見つめてしまう。
(やっぱり可愛いな……)
「どうしたの?優」
「何でもない」
「早く来てよ!」
「あぁ」
優と穂乃花は数多の魚を見る。
「このフグ……穂乃花みたいだな」
「なんで?」
「この丸い感じが……」
穂乃花が優の腕をつねる。
「痛たたたたた!」
「もう一回言って?」
「いや~あそこのエイ可愛いなぁ~!」
「優!イルカショー見たい!」
「じゃあ行くか」
会場に向かうと大勢の人だかりで前しか空席がなかった。
「濡れちゃうかもね」
「そう言うと思って」
優は鞄からタオルを取り出す。
「これがあるから」
「さすが優!」
「小学生の頃もイルカショー見て二人とも濡れたからな」
そんな会話をしているとショーが始まった。
イルカが水面から飛び上がり、空中のボールをつついたり、様々なジャンプを披露する。
「凄い!」
穂乃花の目が輝いている。
イルカが再び高く飛び上がる。そして尾でボールを叩き、水中に戻った。
水しぶきが優と穂乃花にかかる。
「以上でショーは終了です!ありがとうございました!」
大勢の観客の拍手が聞こえる。優と穂乃花もイルカに向かって拍手した。
「やっぱり濡れちゃったね~」
穂乃花が優の方を見ると優は恥ずかしそうに目を逸らす。
「優?」
「穂乃花……服透けてる……」
「えっ⁉」
穂乃花が恥ずかしそうに胸を隠す。
「エッチ!」
「イルカショー見るなら濡れることも想定して暗い色の服を着ろよ!」
「う~~~~~!」
結局、服が乾かなかったためお土産屋で服を買うことにした。
(こういう服しかないとは……)
優が買ったのはマンボウが描かれた服だ。
「お待たせ~!」
穂乃花がやって来る。穂乃花はイルカのフード付きの服……?
「それパジャマだろ」
「服だよ!」
「いやどう見ても……」
「うちが服と言ったら服なの!」
そういうことにしておこう。
「お昼食べに行くか?」
「うん!お腹空いた!」
優と穂乃花はレストランに行くことになった。