第2話 マシュマロ幼馴染との恋に絶望する
「はぁ……」
「ため息つくなよ。昼休み一緒に食べたんだろう?」
「そうだけど予想外のことが起こった……」
優は咲人に穂乃花は空のことが好きと言われたこと、付き合うのに協力してほしいと言われたことを話した。
「マジか。強敵だな」
「だろ~?どうすればいいんだよ~」
「ちなみになんて答えたんだよ」
「キャプテンとあんまり喋ったことないから無理って答えた」
「だろうな。優はレギュラーに選ばれたことがない落ちこぼれ君だからな」
「お前冷たすぎるだろ!」
「優はいつから雪宮のこと好きなんだよ」
「好きって自覚したのは小学生の頃から……」
「じゃあ中学生までに告白しなかった優が悪いな」
「そんなこと言うなよ~!」
「事実だろ。優が中学生までに告白して付き合うことができれば秋風先輩のことを好きになることもなかった」
グサッ!優に言葉の針が刺さる。
「そもそもこんな落ちこぼれ君と付き合っていたか分からないけど」
グサッ!さらに言葉の針が刺さる。
「~!」
「で?ここからどうするんだ?」
「そんなの俺が聞きたいよ~!」
優の悲鳴が学校中に響いた。
放課後。グラウンドにはバッティング練習をする空の姿があった。
「ふぅ~……」
「お前すごいよな。この前の練習試合でもホームラン打つなんて」
「俺より凄い奴なんて全国にたくさんいるよ」
「そうは思わないけどな」
「あ、秋風先輩!」
穂乃花が水筒を持ってやってきた。
「今日暑いので……」
「ありがとう穂乃花ちゃん。気が利くね」
「そ、そんなこと……マネージャーとしての役割を果たしてるだけです……」
穂乃花は否定しているが嬉しそうに照れている。
「そんなことないよ。穂乃花ちゃんはよくやってくれてるよ。いつもありがとう」
「い、いえ……ではこれで……」
穂乃花は顔を真っ赤にして去っていく。
(あの野郎~!)
ずっと見ていた優は怒りをあらわにしていた。
(あんなこと言って穂乃花を惚れさせるなんて……許せない~!)
「空って穂乃花ちゃんのこと好きなのか?」
「えっ?」
(ナイス鈴木先輩!どうなんだ?)
「好きだよ。この学校で一番可愛いと思ってる」
「……」
「へぇ……美女が好きなイメージだけどな」
「そんなことないよ」
優はゆっくり両膝を地につけた。
(終わった……)
優はしばらくしてから監督に話しかけた。
「監督……」
「おう。どうした?」
「今日は早退させてください……」
家に帰り、寝転がると穂乃花からメールがきた。
『早退したみたいだけど体調大丈夫?』
「誰のせいだよ……」
優はスマホの電源を切る。
(咲人の言う通りだ。俺が告白していれば今頃付き合っていたのかな?)
後悔しても仕方ない。そう思った優はとりあえずメールを開く。
『穂乃花はキャプテンのどこを好きになったの?』
送信するとすぐ返信がきた。
『努力家でかっこよくていつもうちを褒めてくれるところ!』
「そっか……」
『優は好きな人いないの?』
「お前だよ……」
優は再びスマホの電源を切り、眠った。
翌日の昼休み。優はいつも通り穂乃花とご飯を食べていた。
「うち、秋風先輩をデートに誘おうと思うんだけどどうかな?」
「えっ……」
優は思わず箸を落とした。
「優、箸落としたよ」
「あ、あぁ……」
優は箸を拾う。
「……いいんじゃないか?」
「それで水族館にしようと思うんだけど……秋風先輩好きじゃないかな?」
「……本人に聞けよ」
優がボソッと呟く。
「何て言ったの?」
「何でもない。次の時間、漢字テストだからもう行くわ」
「あっ、うん!バイバイ!」
教室に戻る道中、優は自販機でコーヒーを買って飲んだ。
(もう諦めるしかないのか?)
コーヒーの苦味が口に広がった。