第15話 マシュマロ彼女が不機嫌です。
「優~!起きて~!」
「うん?」
優が目を開けると幼馴染の……いや、彼女の穂乃花がいた。
「朝練遅れちゃうよ?」
「あと5分だけ……」
「起きないと必殺技使っちゃうぞ~」
寝ている優に穂乃花が乗っかる。
「重い……」
「あれ?いつもしんどそうにするのに……」
「さすがに慣れたよ。残念だけど必殺技は通用しないよ」
「どうしようかな……」
「諦めな。じゃあ5分だけ寝るから……」
優は穂乃花が乗ってるにも関わらず寝始める。
穂乃花は少し考えて、何か思いついたのか優に耳打ちする。
「起きないとチューするよ?」
「!!!」
優が慌てて起き上がる。
「よ~し!朝飯食べようっと!」
優が部屋を出ると、穂乃花は頬を膨らませる。
(優のバカ……)
「行ってきま~す!」
優と穂乃花が玄関を出る。
「今日いい天気だな」
「……」
「どうした穂乃花?」
「ふん!」
穂乃花が不機嫌そうに先に歩く。
「おいおい。なんで先に行くんだよ」
「……」
「一緒に行こうよ」
「……」
「食堂の超大盛り特大ビッグビッグラーメン奢るから」
「!……ふん!」
(今、一瞬迷ったな……)
結局、穂乃花が先に学校に行ってしまい、優が着いた頃には穂乃花はマネージャーの仕事をしていた。
「なぁ穂乃花。先に行くなよ」
「うちに話しかけてないで早く練習したら?」
穂乃花がすぐに去ってしまう。
(朝から不機嫌だな……俺何かしたっけ……)
昼休みになるといつも穂乃花が教室に来るが、今日は来ない。
(あれ……もしかしてまだ不機嫌かな?)
優は穂乃花のクラスに向かう。
「穂乃花~食堂行こう~」
穂乃花が優に気づくがすぐに目をそらす。
「超大盛り特大ビッグビッグラーメン奢るよ」
「!」
穂乃花がピクッと反応する。でも目を合わせてくれない。
「唐揚げつける」
「……」
「ホットドッグつける」
「!……」
「わかった……デザートつける」
「……しょうがないなぁ」
穂乃花が優のところに来る。無事、穂乃花と食堂に行くことができた。
「お待たせ穂乃花ちゃん!超大盛り特大ビッグビッグラーメンだよ!」
食堂のおばちゃんが巨大などんぶりを穂乃花に渡す。
「お、美味しそう……!」
穂乃花の目が輝いている一方、優の目は沈んでいた。
(さ、財布があっという間にすっからかんに……高すぎるだろ……)
「いただきま~す!」
穂乃花がどんぶりにある大量のラーメンをバクバク食べる。
「美~味し~い!」
「よかったな……」
「どうしたの優?元気ないよ?」
「大丈夫だよ……」
まぁ機嫌良くなったならいいか……
部活が終わり、優はバッグを持って穂乃花に話しかける。
「穂乃花~。帰るぞ」
「うん!」
帰り道も機嫌悪いかと心配したが、大丈夫そうだ。
「今日、監督に褒められたよね」
「あぁ。秋季大会も大丈夫だろうって太鼓判を押されたよ」
「頑張ってね!」
「おう!」
「あのさ……優……」
穂乃花が恥ずかしそうに話しかける。
「どうした?」
「手……繋ごう?」
「!……おう」
優が穂乃花と手を繋ぐ。
「懐かしいなぁ~優と手繋ぐの」
「そうだな……」
穂乃花の手……あの時より柔らかくなったな……
「そういえば穂乃花。朝、機嫌悪かったけど俺何かした?」
「……優のバカ!」
穂乃花が手を離し、先に帰って行く。
(ヤバ……言わなければよかった……)
これは明日の朝、迎えに来てくれないかもな……
「優~!起きて~!」
「うん?」
優が目を開けると穂乃花がいた。
(来てくれたんだ……)
「朝練遅れちゃうよ?」
「あと5分だけ……」
穂乃花は期待していないが一応言う。
「起きないとチューするよ?」
優がピクッと反応し、起き上がる。
(また起きた……うちとチューしたくないのかな……?)
「穂乃花……ベッドに座って……」
「何?」
穂乃花は言われた通り、ベッドに座る。
すると、優が穂乃花に抱きついた。
「優⁉」
「……この状態であと5分……」
「ダ、ダメに決まってるでしょ!」
「穂乃花ってマシュマロみたいにすごく柔らかい……最高の抱き枕だ……」
「!!!」
起こさないといけないのに、もう少しこの状態でいたいという自分がいる。
「……あと5分だけだからね」
「おやすみ~……」
そう言った瞬間、優から寝息が聞こえる。
(今はこれでいいか……)
穂乃花はおとなしく5分待つことにした。