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マシュマロが好き  作者: 鵲三笠
第一部
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第14話 マシュマロ幼馴染の想い

保健室に運ばれた優は先生に足を包帯で巻かれていた。


「これでよし!数日経ったら治るはずよ」

「ありがとうございます……」

「治療はこれで終わりだけど……戻れそう?」

「あの……ちょっと体調悪いので休んでもいいですか?」

「あらそうなの?わかった。ゆっくり休みなさい」


優はベッドに横になる。


「ちょっと外出るけど大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「すぐ戻るから」


保健室の先生が出ていく。

今頃、穂乃花は空から告白されて嬉しがっているだろう。


(怪我さえしなければ……俺は……)


悔やんでも仕方がない。咲人も言っていた。中学生の時に告白しなかった俺が悪い。


(クソ……)


優が寝ようとしたその時、ドアが開く。


「優!」

「穂乃花……?」


今、一番会いたくない人が来てしまった。


「怪我したらしいけど大丈夫?」

「あぁ……大丈夫だよ」


優は穂乃花から目をそらす。


「で?借り人競走、先輩が選んでくれたんだろ?」

「うん」

「お題は何だったんだ?」

「分かんない」

「……え?」


分かんないって……最終走者はお題を生徒全員に発表して、正誤判定があったはずだ。


「分かんないって……お題聞いてないのか?」

「うん。だって先輩とゴールしてないから」

「なんで……」



数分前。空と穂乃花はゴールに向かって移動していた。


「はぁ……はぁ……」

「穂乃花ちゃん大丈夫?」

「すみません先輩……私、走るの苦手で……」

「分かった。じゃあ少し休もう」

「でもそんなことしたら一位取れなくなっちゃうんじゃ……」

「いいんだよ。ゴールさえできれば」

「そうですか……ありがとうございます」


気を遣ってくれての発言だろう。そうなると申し訳ない。


「もう大丈夫です。行きましょう」

「無理しないでね」

「はい。ところで先輩。お題ってな……」

「先生!こっちです!」


生徒が保健室の先生を案内する。

車椅子を運んでいるので誰かが怪我したのだろうか。


「ちなみに誰が怪我したか分かる?」

「確か体操服に山城って書いていたような……」

「えっ?」


山城……優の苗字だ。優が怪我したのだろうか。車椅子で運ばれるほどの……


(優……大丈夫かな……)

「心配か?」


空が話しかける。


「行ってあげなよ」

「でも先輩のお題……」

「いいんだよ。他の人にも当てはまるお題だから」


空がこっそりお題の紙をくしゃくしゃにする。


「山城君は穂乃花ちゃんにとって大切な人だろ?行ったらきっと喜ぶから」

「……すみません!」


穂乃花は保健室の先生が向かった方向に走り出す。

空はその背中を見送ると、くしゃくしゃにした紙を開く。

お題は『好きな人』。


(さようなら……俺の初恋……)



「なんでって……優が心配だからに決まってるでしょ?」

「ふざけるなよ!」


優の怒号に穂乃花がビクッとする。


「先輩は穂乃花のこと好きだったんだぞ!穂乃花とゴールしてそこで告白するつもりだったと思うのに……なんで俺のところに来るんだよ!」


保健室がシーンと静まる。


「そう……だったんだ……」


お互いの間に気まずい空気が流れる。


「ありがとう優。うちのこと思って言ってくれて。でももういいんだ」

「え?」

「確かにうちは先輩のこと好きだったけど……でも気づいたんだ。大切なものに」


穂乃花が優の両手を握る。


「優と夏休みに喧嘩して先輩と夏祭り行った時さ、小さい頃に優と行った夏祭りのこと思い出してたんだ。何でだろう?ってずっと思ってた。でも分かったんだ。

ずっと優に助けられてたなって。

うちのことをすごく大切にしてくれてるなって。そう思ったら優のこと好きになってた。

だから優がカッコイイって思ってほしい人がいるって聞いた時、モヤモヤしてた……」


穂乃花が涙を流し始める。


「その人と優が付き合ったら今までの関係じゃなくなると思うとすごく嫌だ……」


両手に穂乃花の涙が落ちる。


「気づくの遅すぎたけど……うちが彼女じゃダメ……かな?」

「えっと……」


優は穂乃花の告白に戸惑いながらもゆっくり話し始めた。


「その……あの話噓だったんだ……」

「えっ?」

「借り人競走に出た理由は先輩と穂乃花への告白を賭けていたからなんだ」

「そうなんだ……って優もうちのこと好きなの?」

「あぁ……」


優は恥ずかしさから穂乃花の顔を見ることができない。

穂乃花は嬉しさから優に抱きついた。


「優~~~!うちも優のこと好き!大好き!」

「ちょっ!足怪我してるからいきなり抱きつくのは……」


優と穂乃花のやり取りを見ていた保健室の先生がクスッと笑い、保健室の前を去る。


(もう少しだけ二人きりにさせてあげましょうか)


「ところで優のお題もうちが答えなの?」

「あぁ。行く途中で怪我してしまったけどな」

「お題何だったの?」

「食いしん坊な人」

「うちは食いしん坊じゃないもん!」

「食いしん坊じゃない人があんなスピード出してパン食い競走一位になるかよ!」

「パン好きなだけだもん!」


優と穂乃花のくだらない喧嘩がまた始まった。

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