第12話 マシュマロ幼馴染の出場種目
体育祭が始まり、全員出場種目の綱引きが始まった。
「お前ら!ちゃんと引っ張れ!」
「引っ張ってるよ!」
時間になり、お互い綱から手を離す。
『これにて綱引き終了です。ピンポン玉リレーに出場する三年生は……』
(ピンポン玉リレー……穂乃花が出る種目だ)
綱引きが終わり、退場する優が穂乃花がピンポン玉リレーに出場すると言っていたのを思い出す。
(借り人競走まで時間あるし、応援するか)
『それでは一年生、入場してください』
ピンポン玉リレーに出場する一年生が入場する。その中には穂乃花の姿もある。
(うぅ~緊張する~)
入場してみるとやはり緊張が走る。
ピンポン玉リレーは卓球ラケットの上にピンポン玉を乗せ、落とさないように走るリレーだ。
穂乃花は運動が大の苦手、そうなると出場するとしたら運動能力があまり関係ないピンポン玉リレーの一択になる。
(皆はリレーとか障害物競走に出たがるから空いててよかった)
「位置について!よ~いドン!」
エアガンの発砲を合図にリレーが始まった。
皆、ピンポン玉を落とさないように慎重になりながらゆっくり走る。
(そろそろうちの番だ……)
穂乃花がスタートラインに並ぶ。
「穂乃花!お願い!」
「うん!」
穂乃花がラケットを受け取る。
(うわ!難しい!)
ラケットを持って走るとピンポン玉が何度も落ちそうになる。
「あっ!」
ラケットからピンポン玉が落ちてしまった。
(早くしないとビリになっちゃう!)
再びラケットにピンポン玉を乗せ、走り始めるがすぐに落ちてしまう。
(あぁ~!また落ちた~!)
結局、穂乃花のクラスは最下位になってしまった。
「ごめん皆……」
「まぁ仕方ないよ。このピンポン玉リレーに出るの私たちみたいに運動が苦手な人が多いから」
「そうだけど……」
「それに体育祭なんだからさ!結果より楽しくやることが重要だし!」
「そうだね」
穂乃花はその言葉で元気を取り戻した。
穂乃花が自分のクラスの席に戻るとざわついていた。
「おいおいどうするんだよ」
「どうかしたの?」
「次のパン食い競争に出る木村が体調不良で保健室に行っちまったんだよ」
「お前が出ろよ」
「嫌だよ。昼飯もあるし……ってかパンでかいじゃん」
「あれだけでお腹いっぱいになる自信あるわ……」
チラッとクラス全員が穂乃花を見る。
「えっ……」
「頼む雪宮!代わりに出てくれ!」
「なんで⁉」
「雪宮、この前食堂の完食困難メニュー『超大盛り特大ビッグビッグラーメン』食べてたじゃん!」
(あれは初めての食堂で浮かれて食べただけだもん……)
「雪宮!この通りだ!」
クラスの男子たちが穂乃花に頭を下げる。
「……結果悪くてもいいなら」
「全然構わない!出てくれるだけですごくありがたい!」
穂乃花は急遽、パン食い競争に出ることになった。
その頃、咲人は体育祭の種目表を見ていた。
「次、パン食い競争らしいぞ」
「ふ~ん」
優がスポーツドリンクを飲みながら反応する。
「って言うかパン食い競争って小学校の運動会かよ」
「でも美味いらしいぞ。家庭科部が作ったパンらしいから」
「へぇ~」
「でもパンが大きいから誰も出たがらないしいぞ」
「だろうな」
『それではパン食い競走に出場する一年生は入場してください』
入場が始まると咲人は何かに気づいた。
「優」
「何?」
「雪宮出てるんだけど……ピンポン玉リレーだけじゃなかったのか?」
「え……」
(マジで最悪……)
とあるクラスの男子、木下はパン食い競走に誰が出場するかのじゃんけんで敗北し、渋々出ることになった。
(パンでけぇ……)
入場した瞬間、宙吊りのパンが見える。
どのパンもデカく、食べるにはある程度空腹である必要がありそうだ。
(それなのに……)
木下が穂乃花をチラッと見る。
(なんでこの女は目を輝かせているんだ⁉)
(なんでうちが出ることになったのよ……)
穂乃花は集合場所に移動していた。
(でもうちのせいでビリになったし、断る権利ないか……)
穂乃花がトボトボ歩いているとパン食い競走に出場していた二年生とすれ違う。
「六皇子すげぇな!パン食い競走で一位になるなんて」
「当たり前だろ!あのパン全部夕香が作ったから!」
「六皇子の彼女だっけ?」
「そうそう!ずっとパンの試作とかしてたらしいからさ!」
「三年生が言ってたけど今年のパンすごく美味いらしいな」
「当然だよ!夕香の手作りなんだから!」
それを聞いた穂乃花の口から気づかない間によだれが垂れていた。
「位置について!よ~いドン!」
生徒が一斉に走り出す。
(まぁ一番食べやすいクリームパン行きますか……)
木下はクリームパンに狙いを定める。
(クリームパンは俺のものだ!)
すると後ろから誰かが追い抜く。
そして、ジャンプして宙吊りにされたクリームパンを咥える。
(お、お前かよ⁉)
クリームパンを取ったのは穂乃花だった。
穂乃花はあっという間に食べ終わり、一着でゴールした。
「やった~!」
(マ、マジかよ……)
木下は穂乃花を見てポカンとする。他の生徒は必死にジャンプしてパンを咥えようとしていた。