第11話 マシュマロ幼馴染との新学期
夏休みが終わり、新学期が始まった。
今日のホームルームはもうすぐ始まる体育祭の出場種目を決める。
「じゃあ障害物競争はこのメンバーで決定だ。次は借り人競争に出たい人は手を挙げろ」
「はい!」
優が手を挙げる。
「え~と山城と……」
「優。お前借り人競争に出るのか?」
後ろの席から咲人が話しかける。
「あぁ。先輩と告白を賭けて勝負する」
「ふ~ん……がんば」
「もうちょっと応援してくれよ……」
親友なんだからさ……
「咲人は何出るの?」
「リレー」
「そっか。咲人は陸上部だもんな」
咲人は陸上部でずば抜けて速く、この前の朝礼で表彰されていた。
「咲人なら一位なんて余裕だろ」
「まぁな。優はどうだ?先輩に勝てそうか?」
「分からない。けど絶対勝つ」
昼休み。優は穂乃花と食堂でご飯を食べていた。
「もうすぐ体育祭だ……嫌だな~」
「なんで?」
「うちが運動苦手なの知ってるでしょ?」
穂乃花は子供の頃から運動が大の苦手だ。
走るのも遅いし、キャッチボールするときも変な方向に投げるし……
「穂乃花は何出るの?」
「ピンポン玉リレー。あれだったら運動関係ないしね」
「パン食い競走じゃないんだ」
「競争だから出るわけないじゃん。なんでそう思ったの?」
「だって穂乃花は食いしん坊だから食欲で足が速くなるかなって」
「もう!うちは食いしん坊じゃないもん!ちょっと食べる量が多いだけだもん!」
穂乃花が頬を膨らませる。
「ごめんごめん!帰りアイス奢るから」
「本当⁉」
穂乃花が目を輝かせる。
「ほら食いしん坊じゃん」
「あっ!騙したの⁉」
「騙してないって。ちゃんと奢るから」
「……うちの機嫌損ねたからアイス二個ね」
「えぇ……騙してないのに……」
穂乃花をからかうのはやめようとこの時、いつも思うんだけど可愛いからやめられないんだよな~
「優は何出るの?」
「借り人競走」
「へぇ~てっきりリレー出るって思った」
「リレーは人気だからな」
「出れなかったの?」
「いや、自分の意志で決めた」
「なんで借り人競走に出るの?」
「それは……」
先輩と勝負するからって言うわけにもいかないし……
「……誰かさんにカッコイイと思ってほしいから、かな」
「それって誰……」
聞こうとした時にチャイムが鳴る。
「やべ!五時間目実験だから行かないと!じゃあな!」
優が慌てて食堂を出る。
(誰かって誰なんだろ……すごくモヤモヤする……)
これは幼馴染だから感じる嫉妬なのだろうか?それとも……
体育祭当日。会場となるドームには多くの光星学園の生徒が集まっていた。
「遂に体育祭だ!」
「悪いけどリレーは俺のクラスが勝つから」
「いいや!勝つのは俺のクラスだ!」
優も自分のクラスの観客席に座る。
(いよいよだな……)
まもなく始まろうとしている。今日で穂乃花との関係がガラリと変わる。
『これより第73回光星学園体育祭を開会いたします!』