第10話 マシュマロ幼馴染への告白を賭けた宣戦布告
「終わった~!」
優は夏休みの宿題を全て終わらせた。
「疲れた~」
「頑張ったね」
「部活の後に勉強はきつすぎる……」
優が床に寝転がる。
「これで明日から部活に集中できる」
「明日の部活、秋風先輩来るらしいよ」
「え?なんで知ってるの?」
「先輩からメールで教えてもらった」
マジか……メールでやり取りする仲なのかよ……
「先輩が引退してから会ってないから久しぶりに会うな。穂乃花も会うの楽しみなんだろ?」
「う、うん」
「どうした穂乃花?いつもなら嬉しそうにするのに」
「そんなことないよ!嬉しいよ!」
「そうか……」
なんか聞き返さないほうがよかった気がする……
翌日。いつも通りグラウンドで野球部が練習していると空がやってきた。
「やぁ!お前ら元気だったか?」
「キャプテン!」
空を慕っていた部員たちがぞろぞろと集まる。
「キャプテンなんてやめろよ!僕はもう引退したんだから」
「すみません!先輩こっちに来て大丈夫なんですか?受験勉強で忙しいんじゃ……」
「勉強ばかりだと疲れるからな。息抜きのついでに会いに来たんだよ」
「先輩に会えて嬉しいです!」
空が後輩たちと話しているところを美咲が見つめる。
「ほら穂乃花。秋風先輩来たわよ」
「う、うん」
「話しかけないの?」
「今は喋っているからあとで……」
「ほらほら行った行った!」
美咲が穂乃花の背中を押す。押した音で空が穂乃花に気づいた。
「穂乃花ちゃん!久しぶりだね!」
「は、はい!あの時はありがとうございました!」
優は空と穂乃花が喋っているところを不服そうに見る。
(……ったく。なんでこんな時に来るんだよ)
茂雄が優の肩をポンポンと叩く。
「おいおい穂乃花ちゃんに見惚れてないで早く投げろよ」
「分かってるよ!」
昼休憩になり、優はマネージャー手作りのおにぎりを食べる。
(今日は濱野のおにぎりが当たった)
美咲と穂乃花、それぞれが作るおにぎりの違いが分かりやすい。
「隣、座ってもいいかな?」
空が話しかけてきた。
「……いいですよ」
「ありがとう」
空が優の隣に座る。
「監督から聞いたよ。最近、頑張っているらしいね」
「俺なんかまだまだですよ」
「でもこの前の練習試合は無失点だったらしいじゃないか」
「たまたまですよ」
「そうかな?山城君の努力の成果だと思うけどね」
空がおにぎりを口に入れる。
「そういえば山城君に言いたかったことがあるんだ」
「何ですか?」
「最近、穂乃花ちゃんと夏祭りに行ったんだ」
優の動きが一瞬止まる。
「そう……ですか」
「聞いても何とも思わないのか?」
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「山城君と穂乃花ちゃんは幼馴染って聞いていたから穂乃花ちゃんのこと好きだったりするのかなって思っていたけど」
「……」
「まぁいいや。最後に一つ言っておきたいことがあるんだけど……」
「何ですか?」
「僕……穂乃花ちゃんのこと好きなんだ。だから体育祭の日に告白するつもりだ」
「!!!」
優が思わず空の顔を見る。
「それで山城君に聞きたい。穂乃花ちゃんに告白してもいいかな?」
空が優の返事を待つ。
「……ダメです。俺だって穂乃花のこと好きですから」
二人の間に沈黙の時間が流れる。
「……そうか」
空が立ち上がり、去ろうとする。
「先輩!」
「なんだ?」
「勝負しませんか?」
「勝負?」
「体育祭では毎年、全学年共通種目の借り人競争がありますよね。それにお互い出場し、お題の答えが穂乃花になった方が告白する」
「……なぜそんな勝負わざわざ仕掛ける?」
「先輩に勝ちたいからです」
優が真剣な表情で空を見つめる。
「それって運になるけど君は納得できる?」
「運も実力のうちですから」
「……分かった。その勝負、引き受けよう。僕が勝ったら僕が穂乃花ちゃんに告白する。それでいいね?」
「はい」
「君との勝負、楽しみにしてるよ」
空が去って行く。その背中を見えなくなるまで優は見つめていた。




