Reunion
十九、再会
私は里奈と一緒に水曜に向けて作戦を練った。平日だから朝か夕方がいいのではないかと思い、朝その駅に行ってみることにした。私は手紙と何かちょっとしたお礼の品を渡したいと思った。里奈は「相手に気を遣わせないような物にしな」とアドバイスをくれたので、いろいろ考えた末自分でも好きなカントリーマームを贈ることにした。水曜日が近づくにつれ段々と緊張してきたが手紙を書いたりしていたら、里奈にも言われたが「玉砕覚悟」。ダメもとでも「ありがとう」さえ伝えられればいいと思えるようになった。
当日私の最寄り駅で里奈と待ち合わせて久々に朝の通勤ラッシュの混みあった電車に乗った。里奈は「私が花実を守るからずっと私の腕掴んでおきなね」そう言ってずっと寄り添い私を守るように満員電車の中ずっと隣に居てくれた。私は里奈にどんな恩返しができるだろう。一生をかけてでも里奈に何かを返していきたいと思った。
そして最寄り駅に着いた。里奈は「憶えられていなくても、無視されても「ありがとう」も花実の気持ちも受け入れられなくても、私が慰めてあげるから大船に乗ったつもりでいて。大丈夫だから安心して」そう言ってくれた。
私たちは助けてもらった駅のホームのベンチに座って待ち続けた。里奈は「一回で再開できたら奇跡だからもし今日会えなくても何回でも付き合うから」そう言いながら私が強引に渡したミルクティーを飲んでいた。もう自販機にはホットのドリンクは売っていなかった。確かに最近気温も上がってきたから当然のことだと思った。
待ちはじめてから一時間が経った頃里奈が呟いた。
「ラッシュ過ぎたら今日は諦めようか?」
「うん。ごめん」
「なんで謝るの。あっそうだ。折角久しぶりに会ったんだしこの後何処か行かない?」
「えっ、いいの?」
「うんうん。花実は何処行きたい」
「私は海を見に行きたいな」
「いいじゃん、賛成。ちょうどこの沿線海行けるもんね。海なんて久しぶり。春の海なんてなんか素敵だな」
「春の海かぁ。里奈は言葉のチョイスもいいね」
「そう?」
「うん」
そんな話をしながら二人で笑いあってまるで高校生に戻ったみたいだった。
「そろそろ行こうか。次の各駅に乗って海行こう」
「そうだね。ありがと」
「いえいえ」
そして各駅電車が着いて乗り込もうとした瞬間、まるで夢のようにハルタさんが駅に降り立った。私は電車に乗り込もうとしていた里奈のスプリングコートの袖を引っ張った。里奈は「んっ?」と一瞬驚いていたが私が目線をハルタさんへと向けると急いで電車を降り私のことを抱きしめて「行っておいで」そう言って私の背中を押してくれた。
私はハルタさんを追いかけた。そして「すみません」と声を振り絞った。ハルタさんは振り返り「はい?」と言った瞬間私を見て「あっ」と言った後口に手を当て「ごめんなさい」と言って「この前大丈夫でしたか?」と聞いてくれた。私は「はい、あなたのおかげで大丈夫でした。ありがとうございました」そう伝えるとハルタさんは「よかった」と心から安堵した表情で胸に手を当てた。
「これ」そう言って私は手紙とカントリーマームの入った紙袋を渡した。ハルタさんは「えっ、何々?」と驚いてしまったので「お礼です。心ばかりですが」と一言添えると「僕そんなたいしたことしていませんよ」と言うので「ほんの気持ちです」と言ってまたハルタさんに紙袋を差し出すという工程を二人で繰り返していたら、里奈が突然「あの、初めまして。私この子の友達なんですけど、もしお時間があったら海に連れて行ってあげてくれませんか?」といきなり切り出した。私とハルタさんは鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていた(と思う)。ハルタさんは「わかりました。喜んで」と意外な返答をした。すると里奈は「私これから用事があるのでよろしくお願いします。この子ハナミっていうんですけど、この子あなたのことずっと想っていたんですよ。めっちゃいい子なんでどうかこれからもよろしくお願いします」そう言い残して改札へと続く階段へ向かい歩きはじめた。そして一回だけ振り返って満面の笑みでピースをしてまた歩きはじめた。私とハルタさんは顔を見合わせて「あはは」と二人で笑いあった。
そして自己紹介もほどほどに「もう電車空いているし、この電車で海行きましょうか?」と言ってくれたので私は「お願いします」と言って二人で電車に乗り込んだ。私は「里奈!ありがとー」と心の中で叫んでいた。
二十、リユニオン
バイト休みの水曜日、僕はいつもより早く目が覚めてしまった。二度寝をしようと思ったがスッキリと目が覚めていたのでバイト先の最寄り駅にあるお気に入りのカフェに行こうと思い立ち急いで着替えてバッグに読みかけの本を忍ばせて自転車を走らせた。途中にある桜の木はもうちらほらと葉桜になっていた。でもピンクと黄緑のコントラストがとても綺麗だった。
駅に着いて僕は思いっきり後悔をした。朝の通勤ラッシュのことを忘れていたからだ。「満員電車は嫌だな。目的地変えようかな」とも思ったが人ごみに流されるように電車へと乗っていた。「今日最悪。なんで僕はこんな揉みくちゃになってるんだろう」そう思いながらイヤホンで聴いていた音楽に助けられていた。そして目的駅へ着きようやく降車しホッと一息ついていたら後ろから「すみません」という声が聞こえた。間違えなくハナミさんだった。思わず「あっ」と口にしてしまい慌てて自分の口を手で覆った。とっさに「大丈夫でしたか?」と聞くとハナミさんは「ありがとうございました」と深々とお辞儀をした。僕は本当にホッとして「よかった」と言葉を返した。ハナミさんは僕に紙袋を差し出した。何かと思ったらお礼の品だった。僕はなかなか受け取れず二人で「どうぞ」「いえ」と遠慮しあっていたら急にハナミさんのお友達という人が現れて、「この子を海に連れて行ってください」とか「この子はすごくいい子でずっとあなたのことを想っていた」と言い出したので僕は一瞬ビックリというか圧倒されたが、こんなお友達がいるハナミさんはいい子なんだろうなと思い、つい「わかりました。喜んで」と答えていた。僕の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだったがとりあえず受け入れた。
そしてハナミさんのお友達は階段へ向かいその途中で振り返り笑顔でピースをしてまた前を向いて歩きはじめた。その姿を見て僕とハナミさんは顔を見合わせて思わず笑った。緊張がほぐれたので僕たちは海へ向かう電車へと一緒に乗り込んだ。




