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破滅した世界の内側で  作者: めーや
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血まみれの日々

「さぁ、千咲。パパのお願い、聞いてくれるだろう?」

「え、ええ。でもどうして?」

「どうしてって、人にも魔法が通用するかの実験だよ。万が一の時、出来ることは多い方が良いだろう?大丈夫、洗脳魔法といっても娘である千咲に使うのは軽くお腹が空く程度にするから。さぁ、千咲を守る魔力をどかして?」

「うん……」


そして秀人の魔力が千咲へ注ぎ込まれる。

これが全ての始まりだった。




「お父様…仕事終わったから、その報告をしに来たわ」


諦めた様な、怯えた様な声を発する千咲ではあるが、その顔には僅かに期待の感情が浮かんでいる。

今の彼女にとっては父親の秀人が全てであり、彼に褒められる事、認められる事を史上の喜びとしているのだが、世界改変後から巨大都市が完成して間もない今まで一度も優しい言葉をかけられた事は無い。

そして現に今、秀人は彼女の声を聞いた事で眉間に皺を寄せて溜息をついた。


「報告くらい空間魔法で出来るだろう。何故態々ここまで来たんだ?馬鹿かお前は。本当に使えない奴だな……」

「それは……外だと、誰が聞いてるかわからないから…」

「それもお前の魔法ならどうとでも出来るだろう!?…いいか?一々俺にその顔を見せにくるな。不愉快なんだよ」

「……ごめんなさい、お父様」

「気分が悪い、報告は書面にまとめて魔法で送れ。……いつまでそこに突っ立ているつもりだ!とっとと失せろ!」

「あの…!お母様は、何処にいるの?」

「お前にアイツと合わせるつもりは無い。曲がったのなら消えろ」

「………。」


都市の完成から一度たりとも母親の姿を見ないので心配に思っていたが、それでも秀人の口調から死んだわけでは無いのだろうと無理やり胸を撫で下ろす。

例え冷たく当たられようともっと秀人と一緒にいたい。と言う気持ちを押し殺して書面を作る。


「あ…そうだ。お父様から言われていたんだったわ……」


秀人から与えられる仕事は残虐なものが大半であり、その度に精神をすり減らしている千咲へ罵声と共に与えられた宿題のようなもの。

「下層のゴミ共を拷問して殺しに慣れろ」

やりたくは無いがやらなくてはならない。全ては敬愛する父親の為に。




普段千咲に対する辺りが強い秀人だが、12席次の会合では周囲に良い印象を与える為に千咲にも優しく接した。

嫌々優しく接しているのは理解したが、それでもあの日より以前の様に優しくされたのが嬉しくてつい秀人に期待を寄せては、怒号と共に殴られる。


「お前は何処まで私を不愉快にさせれば気が済むんだ!!この、屑が!!!」


千咲の首を両手で力一杯握り締めその体を揺らす。

苦しみのあまり秀人の手を触れる千咲の手に力が入っている事に更に怒りを増し鬼の形相で彼女を押し飛ばす。


「いいか!!猿以下の知性しか持たない屑のお前に態々言葉にしてやるが!!私はお前にこれっっぽっっっちも愛情を捧ぐ事はない!!!寧ろその逆だ!!お前の事を心の底から悍ましく思い嫌悪している!!分かったのならもう余計な口をきくな!!!」


その言葉と共に何度も千咲を踏みつけ蹴り上げる。

何の抵抗もしない千咲へ一切の躊躇も容赦もなく魔力で強化された足で痛めつける。

内臓が傷つき血反吐を吐きながら謝る千咲だがそんなもので秀人の怒りは収まらない。


「あ”あくそ!!ほんっっっとうにお前の顔を見ているとイライラする!!!」


どうすればこの怒りが収まるか彼女を痛めつけながら考えを巡らせる。

拷問をしてもきっと胸が空くことはない。千咲のキャラ付けが崩れる可能性がある為適当な男に娘を犯させる事もできない。


「ああそうだ。下層の人間にお前を犯させてソイツを殺せば良い。運営の奴等はまた拷問の為のオモチャが連れてかれたとしか思わないだろうしそいつが死ねばこの事が外に漏れる事もない。なぁ、お前はどう思う?」


窒息しないよう必死に血反吐を吐き出す千咲を踏みつけ体を揺らさせる。


「おどぅ…様が……望むのなら……私…頑張るから……」


泣きながら笑みを作り秀人を見上げる千咲に更に怒りが湧きその顔を蹴り飛ばす。


(ちっ!余計な行動は取るくせにこう言う所は従順だなぁ、この屑。これじゃ何をしても私の胸はすかなそうだ。ああ、私は何て不幸な人間なんだ…!!)


「はぁぁ……。もういい。とっとと失せろ」


これ以上失望されたくない千咲は秀人の言葉に素直に従い転移する。






人を痛めつけ、殺し、残虐を気取る内にその人格も壊れていき、いつしか千咲は秀人が作り出した悪逆な人物のその者へと成り下がっていた。

しかし、父親への想いは何処まで行っても果てることはなく。何をされても薄れることはなかった。

数ヶ月もの間。千咲は唯愚直に秀人に従った。全ては親愛なる父親の為に。






「景虎に続いてアルラルトの奴も怪しい行動する事が多くなってきたわね……」


景虎も時折こぼす言葉から反逆の意思があるのだろうと思っていたが、覚醒者とはいえゲーム時代研究ばかりしていた彼はステータスも保有魔法も然程強力であるわけではない為、脅威には感じていなかったがアルラルトは別だ。

アルラルトも特筆すべき点は少ないもなの彼の持つ天秤の潜在能力は恐ろしいものである。

何せブレサリで今後追加される予定だったアイテムや能力を生み出すことができるのだから、さしもの千咲であっても対策されて殺される可能性がある。


「何かしでかす前に叩き伏せたいけど…まだ泳がせておいてあげるわ。まぁ、明確に尻尾を出したら引きちぎってやるけどな…!」


こんな事をしなくとも秀人がアルラルトを従順になる様に洗脳すれば良いのに、と考え世界改変初日の事を思い返す。


「あれ?そういえば…洗脳魔法は人には聞かないんだっけ…?」


秀人の言葉を盲信する千咲は彼を疑うことなどあるわけがない。何か…それこそ世界改変前の秀人と今の秀人に違いを感じようが、無理やり適当な理由をこじつけて納得する。


「ふぅ……」


(今日の分の報告書は書き終わったけど……これからは何をしようかしら?もう拷問にも飽きてきたしなぁ………)


暇潰しにと街の様子を眺めていると、あちこちキョロキョロしながらあちこち行き来している男が目についた。


(コイツ……確かクーデター軍とアルラルトがご執心の覚醒者だったよな?名前は確か……仁、だったっけ?何やってんだ?コイツ……道に迷ってるのはわかるけど……あ!そうだった!今日はコイツとクーデター軍が会う日じゃない!……てことはコイツ、劇場に行く最中に道に迷ったって事よね…?………あっはははははははは!!何それダッサ!!てゆーかゴンドラ乗り場から大通りを一直線に進めば良いのにどうやったら迷うんだよ!!あっははははははははは!!!)


随分と間抜けな姿の仁に笑いが止まらず涙目になるまで腹を抱えて笑う。しかしこのまま放置してクーデター軍と出会わず終わってしまうのは秀人の意志に反してしまう為。空間魔法で仁の下へむかう。


(コイツ…周囲にとんでもない魔力場を作ってやがる。私でもない雑魚がこれを維持できるって何かの冗談?まぁ良いわ。五メートルも離れれば拮抗されるってだけで私が勝てない相手じゃないし)


「おい」


それが仁とのファーストコンタクトだった。

第一印象はパッとしない間抜けだったが、アルラルトとの一件の後その評価も変わった。

仁が全力で対抗するつもりならば千咲の魔力も押しのけられる。触れれば勝てるとはいえ一方的に魔力をぶつけられれば殺される可能性もある。

故に警戒する様にはしたが………。


「ご主人、俺お腹すいたんだけど」

「は?貴方一週間くらい飲まず食わずでも大丈夫でしょう?我慢しなさい」

「え〜〜〜」


気の抜けた仁と接する内に血で錆びついた千咲の心にも変化が生じた。

本人はその事に全く気づいて居なかったが、彼女とそれなりに接する機会の多い者はその変化を感じ取っていた。


そしてそれは秀人も例外ではない。

このまま仁と雪月に懐柔されてはたまらないと忌避感を覚えるものの、千咲への洗脳に大部分の魔力を割いているため仁達を洗脳する余裕はない。一度発動させれば持続的に洗脳状態にさせられる魔法もあるが、仁や雪月といった覚醒者クラスにそれが効くとも思えない。

(厄介だ)そう考えても状況は好転せず、楽しそうに笑う千咲へ憤怒と憎悪が湧いてくる。


そんな秀人の心も知らず千咲は今日を謳歌する。

明日はクーデター軍の人間の処刑日。

仁と雪月とも明日でお別れだろう。


(あーあ。ここ数日は…悪くない日だったんだけどなぁ……)


そう、名残惜しい思いを浮かべ今日という日も終わりを迎える。


最後まで読んで頂きありがとうございます!!!!!!!

良ければいいねやご感想等よろしくお願いします!!!

次の話も読んで頂ければ幸いです!!!!!!!



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