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破滅した世界の内側で  作者: めーや
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影を追う者

今週は水曜日も同行する予定です。よろしくお願いします。

「六角陣!!」


仁が玄関を開けた瞬間、魔力で作られた結界に閉じ込められた。

しかし先程トロールと接敵した時の様に動じることはなく、妙に冷静な脳で視線を動かして術者を見つめる。


(警察…?)


視線の先に立つのは警察の服に身を包んだ二十台後半から三十代前半程の年齢の男。

体格が非常に良く服の上からでも良く鍛え上げられているのが伺えるこの男から、確かに魔力が放出されているのが感知できる。


(六角陣を使ってるってことは恐らく高くてレベル100前後の雑魚か。殺気は無いけど随分警戒されてるなぁ、初対面の筈だし誰かと勘違いされてるのかな?…まぁ何にせよ、ぶっ壊れた世界で同種とのファーストコンタクトだ、高圧的にいくか、はたまた印象良く行くか……うん、敬語苦手だしタメ口でいいや)


「へぇ、警察ってお堅いイメージだがゲームやるんだな。っで、初対面なのに随分な挨拶をしてくれたおじさんは俺に何の様なんだ?」


仁の問いかけにも答えず、男は魔力を高めつつじっと仁の方を睨み続ける。

(流石に年上相手に舐めた態度をとり過ぎたか?)と不安になってきた仁だが(会話をしてくれる気が無いなら仕方がない)と考え結界を壊そうと手を動かした瞬間、漸く(ようやく)男は口を開き仁に問いを投げかけをした。


「さっき、この家の二階から桜色の火が上がっているのを見た。君は、ゲームの世界で[ジン]と言うプレイヤーネームで活動していたんじゃないか?」

「あぁそうだな。確かに俺はジンって名前でゲームをプレイしてたぞ」

「…君は、ゲーム内で多くのプレイヤーを虐殺していたあのジンなのか?」


その問いで緊張した面持ちの男が何を言いたいのか漸く察する。


(成程、人格改変の事を知っているからこそ警戒しているのか。国民を守るために身を挺して俺を拘束するぞ!って事をするつもりかね?それとも、段々男から殺気も出てきたし…もしかして俺のことを殺すつもりか?)


どっちでもいいや、何て投げやりに考えて男の問いに口を開く。


「アンタの言う通り、ゲームじゃ確かに大量のプレイヤーをこ_」

「[切り崩せ!ウィンドカッター!]」


仁が言葉を言い終わる前に結界内に不可視の刃が複数出現し仁へと襲い掛かる。が、いきなり現れた半透明のステータスパネルを見るに仁の生命力の数値に変化は殆ど無く、魔法が当たった箇所に外傷もない様だ。


「ちっ!![押し潰せ!フィンドブラスト!]」

「無駄だよ、アンタレベル150いってないだろう?流石にステータス差がありすぎるし、何よりレベル150と150未満は決定的な差があるって知らないのか?」


面倒臭そうに話し掛ける仁に対し、男は脂汗を浮かばせつつさらに魔力を高め大量の魔力を体に循環させていく。

(普通にやって勝てる相手ではない)直感的にそう理解し、ならばと自らの持つ奥の手を早々に発動する。


「[存在解放!風神よ!俺に力を与えたまえ!]」


[存在解放]

レベル100になる為に全部プレイヤーが会得しなければならない三者三様の一種の奥の手の様な技能、または魔法。

大抵の場合ステータスの上昇や、普段使えない様な強力な技能や魔法を使うことができる様になる。

しかし一度使用すれば、その者の生命力か保有魔力を持続的に消耗する為使用者が自滅する事も珍しくない。つまりこれを使ったと言うことは、この男は本気で仁を仕留める気なのだろう。


「[荒れ狂え!トルネードバースト!][八角陣!]」


地面をもえぐる強力な竜巻と、それをものともしない結界で更に周囲を覆われるが、それでもなお仁はポケットに手を入れ回避も防除もせず攻撃が当たるのを待った。


(無謀な戦闘を挑んでいるとはいえ力に溺れている訳じゃなさそうだし、何より俺を殺してでも民間人を守ろうとしているんだ、少々視野が狭すないかとも思うけどきっとこのおじさんはいい人なんだろう。魔力切れを待つのが平和的で良いんだろうが…応援を呼ばれたら面倒だしなぁ……)


出来るだけ平和的に組み伏せる方法が無いか、と薄れた記憶の中にある自信の魔法の能力を思い浮かべる。


「…あぁ、あれがいいか。[発芽せよ、彼岸桜]」

「なっ!!」


突然地面から出現した無数の太い木の幹が周囲一帯の魔力を吸収しながら竜巻と二つの結界を破壊し、その幹に巻きつかれた男は身動きが取れなくなったばかりか魔力を吸われ[存在解放]状態を強制的に解除された。

プレイヤーを選んだ限定的な話だが、レベル150とレベル100のステータス差はレベル100とレベル1程の差がある場合もある。それ程までにレベルの高低差は重要なものなのだ。

両者とも理解していたが、もとより男に勝ち目なんてなかったのだ。


「殺しはしない、ただ弁明させてくれ。俺は衝動を押されられなくなる程人格の変化はしていない。おーけー?」

「そこでわかったと言える程、俺が受けた人格改変は緩くないみたいだ」

「いや、おっさんの元の人格が生真面目すぎるんじゃない?第一、俺に勝てる見込みなんてないだろう?」

「勝てないと分かっていても、最低限の時間稼ぎくらいはしなくちゃならない。それが俺の仕事、いや、生きる意味だからな」

「随分と頑な(かたくな)だな……レベル150行ってる奴が知り合いにいんのか?まぁ何にせよやめようぜ?これ以上やるんだったら俺暴れちゃうよ?」

「……俺を殺す気がないなら、とっとと何処かに逃げればいいだろう」


確かにその通りだがこれから何をしようと思える目的が無い仁は、積極的では無いにしろとりあえずやるだけやろうと考えている事が一つあった。その為には避難所の場所等を知っているだろう警察の人間と一緒に行動したいのだ。


「まぁ確かにアンタのいう通り何だが……親子中は良くなかったとはいえ、一応父さんと母さんが生きてるかどうか確認したいんだよ。だから避難所にでも連れてってくれない?」

「…できるわけ、ないだろう」

「どうして」

「君が、罪のない人を殺す可能性があるからだ」

「そんな事する気はないが、罪があればいいのか?」

「駄目だ!いくら力を持っているとはいえ人の罪を裁くのは君じゃない!頼むから、もう力は使わずに大人しくする事を約束してくれ」


男は苦しそうに懇願した顔で仁に語りかける。しかしエネミーや人の域を逸脱した力を持つ人間が跋扈する様な世界でそんな事出来るわけないと考える仁は、良心を痛めることも無く男に嘘をつく。


「わかったわかった大人しくするよ。おじさんが俺を見張ってるといい、どうせレベル150勢がそっちに居るんだろう?俺が力を使おうとしたらそいつらにすぐに報告を入れるといいさ。これでいいかい?」

「……わかった。絶対に使うんじゃないぞ?」

「おーけーおーけー。絶対に使わないよ」


面倒臭げに相槌をつきつつ魔法を解除して男の拘束を解いた仁に、未だ疑いの目を向けつつ男は無線に声をはっする。


「こちらSA部隊[明石]。要注意人物:ジン。ルートBにてクリア。人格レベルの低下は少ない模様。力は健在。どうぞ」


(SA?…スペシャルアビリティか?もしそうなら凄い安直だなぁ…。つか何そのギャルゲー攻略しましたみたいなノリ、やめてよおっさんエンドとか正直きついんだけど)


「了解。すぐに向かう。ジンくん、避難所よりも先に寄りたい場所があるがそっちを優先していいか?」

「いいよ別に。てかすぐに向かうっていってたけど、やだって言ってたらどうするつもりだったの?」

「その時は向かう途中誰かに君を託してから俺だけで向かうつもりだったよ」

「成程ねぇ」

「さて、無駄話をしている暇は無いから。着いてきて!」


そう言って走り出す男に「了解。明石さん」と返事を返してその背を追う。


「これから向かうところでは十中八九戦闘になるけど、君には戦わないでほしい」

「戦闘ねぇ、エネミー?それとも人間?」

「残念ながら人だよ。エネミーを使役(しえき)して好き勝手に暴れているらしい。人数は六人、全員手練れらしいけど報告を聞く限りでは覚者は居ないらしい」

「かくじゃ?って何?」

「え、レベル150に行ったプレイヤーは覚醒者を略して覚者って呼ばれてるんだけど…もしかして知らなかったのか?」

「しらん」


(しらねぇーよ何それ公式が呼んでる呼び方じゃ無いよな?ローカルネーム持ち出されて「え?何知らないの?」って言われるとちょっとウザイんだけど…)


けどまぁ自分も舐めた態度とってるしおあいこか。と考えつつもう一つ疑問を投げかける。


「おっさん一人で大丈夫なん?現地に味方はいんの?」

「いや、この事を報告した部隊は全滅したらしい」

「え、じゃあ別のところから人が送られるまで待機するの?」

「誰かが来るまで俺に民間人を見捨てろと?」

「大丈夫なん?明石さん無駄死にするかもよ?」

「いや、俺が戦っているうちにジン君が民間人を逃がしてくれれば万事解決だ。あぁ、民間人を守る為なら力を使ってくれても構わないよ。けど出来るだけ使わない様にね」

「何それ、さっきは使うなって言ったくせに言ってる事バラバラじゃん」

「ははは。悪ね、俺は強い人間じゃ無いから、君みたいに強い力を持つ人にはつい頼ってしまうんだ」

「それはこの世界がぶっ壊れる前から?」

「ああ、本当に情けないことにね」


(何が情けないのかはよく分からんけど、この人は多分思ってるよりクソ真面目で馬鹿な人なんだろうな)


明石の左手にはまった指輪を眺めながら、最後に一言自分なりの忠告をする。


「あんたが死んだら奥さん悲しむぞ。例え奥さんが死んでたとしてもな」

「……あぁ、そうだね。出来るだけ死なないように頑張るよ」


しかし忠告は意味をなさなかった。

世界が壊れて半日と少し、未だ青い青い空の下、明石陽平は死に場所を求めていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!!!!!

もしよかったら、いいねやレビューのほうよろしくお願いします!!

何より次の話を読んで頂ければ幸いです!!!!!!!!

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