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魔力回復はおにぎりで  作者: 金子ふみよ
第二章
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姫崎見は調理する②

 ただ、ある日なぞ米を一升炊いた上に朝食・昼食・夕食のメインがおにぎりだった。具がはちみつ漬けの梅、焼き鮭、おかか、ツナマヨ、明太子、ごま昆布といったメジャーからチャーシュー、タルタル、鯖味噌、魚肉ソーセージなどなどマイナーなものまで取りそろえた上、味付け海苔もあれば焼き海苔も組み合わせており、もはやキャンプへ行く様相である。しかもかなりな団体様仕様で。

 また「たまたま」下校時の道すがら兄に会って夕食の買い出しに行けば、スーパーの惣菜コーナーのおにぎりを一個ずつ手にとっては凝視してみたり、つくだ煮や食べるラー油系の小瓶やご飯に混ぜるシリーズが陳列されている棚の前に三十分以上立ち尽くしたり。別日には、通学の行動範囲内にあるコンビニというコンビニに立ち寄って、陳列してあったおにぎりを全種類買おうとしたり。

 さらには姫崎妙も何度か会ったことのある、兄の友人・鶴子つるこ(女子の名前ではない。姓であり、男子である)からは「妙ちゃん、あいつ大丈夫?」と毎日がエイプリルフールのお茶らけた様子とは天と地ほどの苦笑いで尋ねられた。詳細を聞いてみれば、その彼が持参したものだけでなく、親しい級友たちの弁当にあったおにぎりの試食を懇願したとのこと。弁当のおかずなんかと交換したりして。一口齧って「なるほど。こういう作り方もあるのか」との感想。味覚の研究ならいざ知らずもはや「とり憑かれてないよね」と鶴子が引きつるレベル。

 ちなみに、数時間後、鶴子は姫崎妙から渾身の力で襟元を絞り上げられる惨事に見舞われた。尋問、もとい詰問を受ける羽目に。姫崎妙には時間をおいて気が付いたことが一つあったのだ。鶴子が言った「級友」の定義を確認しなければならないと急かされたのだ。語義の中に女子が含まれているのかどうかという点である。結果は姫崎妙が安堵する内容だった。

 一点、鶴子が姫崎妙に秘匿し続けなければならないと、改めて腹を決めたことがある。姫崎見がしょっちゅう女子たちと弁当のおかずを交換しているという情報は墓場までどころか墓の下までもっていかなければならない。


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