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姫崎見は調理する①
休日。姫崎見は昼食の準備に余念がなかった。リビングのソファから兄のいるシステムキッチンに何度も何度も姫崎妙は視線を行ったり来たりさせていた。開いている女性ファッション誌なぞしっかり見ているわけではなかった。淡々と調理を進めている様子は平素と変わりはない。が、ここ数日どこか兄は普通とは違っていた。それもこれも思い出して見れば、変な時間に弁当を届けに来た日からである。料理の味付けが濃くなったとか薄くなったとか、激辛ブームの波に乗り遅れないようにし始めたとか、化学を駆使したエキセントリックになったとかそういうわけではない。