ただいま
目を開けると、リビングにいた。自宅だと言うのはすぐに分かった。スマホを出して日時を確認した。二日も経っていなかった。事案が解決した日の夜、妹にはその旨を送信してあった。それでも家を空けたことが気にかかっていた。あの戦況の最中でさえ姫崎見は妹がどのように過ごしているかを案じていたくらいだ。その妹はリビングテーブルに伏せって広げた腕に顔をつけていた。テーブルには皿が置かれていた。横にはメモが書かれてあった。皿にはどこぞの誰かが姫崎見を称賛したような黄金比ではないが、端っこがちょっとめくれた海苔が巻かれたおにぎりがあった。それを見て微笑むと姫崎見は口を開けた。
「妙のおにぎりは丸くなるからなあ」
頬張った。噛む。噛む。噛む。喉を通った。
「うん、美味い」
何か分からないが、疲労していた心身がみなぎってくる感じが胃の中から全身に広がった。
兄の帰宅を待ちわびていた姫崎妙はどんな夢を見ているのかニッコリとした。
姫崎見のズボンのポケットには、ボタンがほのかに光るキッチンタイマーが入っていた。




