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さらば、ラワタ国
一日にしてまだ疲労感が完全に癒されてはいないものの、姫崎見は帰途を国王に嘆願した。朝からキッチンタイマーのボタンが光っていたのだ。
国王は慌てた様子で特別職を用意するとか、とはいえラワタを出立する手段がないではないかとか、果てには第二王女を嫁としないかとまで言い出してきた。すべて丁重にお断りした、するしかなかった。
「俺はこっちの人間じゃないし」
そう言って国王にキッチンタイマーを見せた。
「これが光ってるんで帰れるみたいです。詳しいことはフィフェティか、その師匠とやらにお聞きください」
異世界の男子に謝辞を告げる国王。せめて恩賞をとの提案も姫崎見は拒否をした。
「おにぎりの研究費に当ててください」
「ありがとう。オニギリの勇者よ! 幸あれ!」
冗談で言ったつもりなのだが、真に受け取られてしまった。
キッチンタイマーのボタンを押した。魔術を行使できるラワタ国の人々の前から、おにぎりで国を救った男子が消えた。




