兵站にて②
「よし、出来た」
一升炊いたご飯を、手乗りサイズの正三角形に変形させ、一通り小山の縦列渋滞をこしらえた後、姫崎見は
「ケン殿、本当に入れるのですか?」
本職の若い料理人(おそらく姫崎見と同年代と思われる、まだまだ厨房では新米扱いなのだろう)に何度も尋ねられながらも、
「昨日食べたでしょ。旨かったでしょ? けど、こっちの人って、というかやっぱりこういうのは文化なんだなあ」
大鍋をかき混ぜながら、
「ええ、大変おいしゅう。けれど、その海藻を入れるんですか?」
味噌汁をこしらえていた。中庭で先日作った際にはラワタの野菜でじゃがいもやニンジンや玉ねぎっぽいのを使って豚汁にしたのだ。だから、この国の人々でも味噌汁はいけるんだと思って作り始めて見れば海藻を食す習慣がないと言う。「そう言えば、最初の頃、海苔がどうのこうのと」と今は昔なことを呟いた。それよりも。では、なぜ城にそんなものがあったかというと生態研究用だったらしい。海水を張った盥にあったのを、わかめと思って持って来てしまったのだ。
「大丈夫。さっきかじってみたけどいけるいける」
本当にわかめと変わりがなかった。
「本当ですか?」
いまだにいぶかしげな料理人に
「おにぎりに巻いてあったのも海藻ですよ。種類は違うけど」
「! ……な、なんと。あれが……」
目を見開いてテーブルに置いてある焼き海苔や味付け海苔が巻かれたおにぎりを見る。近づいて顔を間近にさえ寄せた。
「これが……海藻。……ケン殿、嘘や冗談ではあるまいな?」
そこまで疑われては、その反応の方がコントではないかとさえ思えてくる。すでにさんざん食い散らかしているというのに。
「嫌なら食べなくていいですよ」
それならばオチに入らなければならない。
「食べないとは言っておりません。私は何をお手伝いしたらよろしいでしょう」
スクッと身を直して、誤魔化すように姫崎見の顔色をうかがう。
「いやもう完成だし。食器の用意とかですかね」
「そうですか。ところでケン殿。この汁物は一体どうやって作っているのですか? とても濃厚なシチューですが」
「ああ、それは」
兵士たちとの呑気が終わった。




