表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力回復はおにぎりで  作者: 金子ふみよ
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/49

兵站にて①

 陣というか、運動会の本部席みたいなテントで、姫崎見は給仕係となっていた。周りにはそれこそテントが設けられ医療スタッフもいた。先陣二人の治療待ちではない。兵士らもいるのだ。魔獣がフィフェティとテバサ・キをかいくぐって攻めて来た時の防御として幾重もの柵やら盾やらを構えなければならなかったのだ。そういう兵士たちの滋養のためにも調理係が要る。そこへ姫崎見も加わったのである。よって、姫崎見はキーパーソンなはずなのに、戦況を目撃できないというじれったい位置にいることになる。がしかし、姫崎見はごねることはなかった。フィフェティたちの邪魔になっては本末転倒だということが分っていたからである。

「まあ、戻って来た時に美味いもん食わせたいからな」

 炊き立てのご飯を木べらで切りながら独り言をした。

「きっと大丈夫です。ケン殿がいらっしゃったのですから」

 なぜか甲冑に身を固めた第二王女がいる。陣頭指揮を買って出たとは聞いていたが、ここにいるとは姫崎見にも驚きだ。

「時にケン殿」

 第二王女は微動だにせず、顔だけ少し動かしてためらいがちに、

「朝食から時間が経ったのだが、少しだけ気持ちばかりなのだが小腹が満たされてないような感じがしなくもないので、オニギリをいただけないだろうか」

 早口に言った。勇猛果敢と言っても、姫崎見から見れば妹よりも一つばかり年下である。顔が柔らかくなった。

「かしこまりました。具は何がお好みで?」

 作って恭しく頭を垂れてみた。第二王女は人目を憚らずに

「ツナマヨがいい!」

 にんまりとした。おにぎりの発音は例に漏れず片言なのに、ツナマヨのそれはなんとも活舌が良い。

「おお、それならば私はたらこを」

「何を言う。めんたいに決まっているだろ」

「いいや、角煮だろ」

 などなどと兵士らがざわめき始めた。こないだまで焼きたらこも辛子明太子も、豚の角煮も知らなかった連中だが。

「そちたらには十分な食料が用意されておるだろ!」

 第二王女は慌てて制止させようとする。それでもそこは戦場を忘れたようににぎやかになってしまっている。その口々からはやはり「オニギリ」と似非外国人の片言発音が矯正されることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ