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魔力回復はおにぎりで  作者: 金子ふみよ
第五章

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ラワタ国でおにぎりをこしらえる③

 ところがである。翌日、なぜか、姫崎見が大量におにぎりを握らなければならないことに変わりがなかった。なぜなら、国王はおろか、王妃、王子、王女らも毒見を経て口に入れたところ、姫崎見のおにぎりを所望したのである。それは切望と言い換えられるほどである。しかも、王女の一人が姫崎見の腕を介抱してくれた当のご本人だった。その日の飾ったドレスとは違い、あの時はいわばルームウェアみたいな衣類だったのだろう。ラフとは言わないまでも、ジャージというか何かの制服というか、ともかくそんな装いをしていたのだ。医療スタッフだと思わせるくらいなら、せめて名乗っていただきたかった。いや、それはひとまず庶民に寛容な王女の施しと済ませて置ける。今はそればかりではないのだ。というのも、他の騎士も兵士も医療従事者も、はては調理関係者もこぞって「オニギリはやはりケン殿でなければ」と言い出す始末。「それではケンに負担が」などと良心的判断をしてくれた発言もあったものの、しかし「ケンのオニギリを独占するつもりか」と一触触発の事態になり、内紛の火種になりかねない緊張感となった。本当にそれどころではないなずなのに。

「ケン殿には決戦に備えていただかなくてはなりません。ですから私どもも自戒し、節制をし、堪えようではありませんか。魔獣との争いが収まったあかつきまで待とうではありませんか」

 なんと例の第二王女がそんな非常事態の自粛要請みたいなことを言い出し、改めて姫崎見の腕に治癒魔術を行使しだした。マジもんの魔術で。ともなれば、国王が改めて仕切り直し、検証結果に基づいて食材の調達を指示、さらには魔獣との決戦を二日後と宣言したのである。歓喜し奮起し盛り上がる一同の中、

「俺の意向まるで聞かないのな」

 治癒魔術ですっかり快癒した腕をさすりながら姫崎見だけが嘆いたのである。


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