表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力回復はおにぎりで  作者: 金子ふみよ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/49

妹のクラスにやって来る兄

 その日の最終限の終了チャイムが鳴って、そそくさと教科書やノート、ペンケース類を鞄に突っ込むと姫崎妙はキョロキョロしたり、立ったり座ったりなどなどをし始めた。

「あれは、一体何してるのだろうか?」

 ドア付近に立っていた金井は、教室にいる友人のその不審な姿を生ぬるく見ていた。その横で、

「お兄さん待ってるみたい。晩御飯の買い出しに手伝ってくれってラインが届いたみたいで」

 北山はせめてものフォローを試みる。

「なら、すぐ行きゃあいいのに」

「そういういかにもってのが恥ずかしいんじゃない?」

「いや、私らの方が見てて恥ずいって」

「ええ、コミック読まなくても、毎日目の前でラブコメるようなことしてくれるからね」

「兄さん、優しそうだなって言っただけで睨まれたことあったからな」

「親代わりのお兄さんだからねえ、私らには分かんない感情なんだろうね」

 やはり二人の視線は生ぬるくなってしまう。そこへ、

「あのー、妙いる?」

「あ! ラブコメ兄!」

 教室に近づいた姫崎見からすれば、出入り口付近にいた二人に声をかけるのは容易。しかも、妹の友人であるのは幾度となくあっていれば、それもなおさらである。それにもかかわらず、実に心外な応答。

 どの時点で気付いたのか、それを漏れなく見やった姫崎妙は、鞄をガシッと掴むと、床を踏み鳴らす勢いで近づいた。

「みんなに見られるからって言ってるじゃん」

 ひとまずクレームを言ってから兄の制服の二の腕の辺りを握って引っ張る。

「いや、だって。妙が」

 言い返そうにもズンズンと引っ張られて行く。

「妙、バイバイ」

「妙ちゃん、また明日」

 級友からの挨拶である。ちょっとだけ振り向いて頷いた。

「ちゃんとあいさつを、妙」

「いいの、もう言ってるから」

 兄はそれでも悪いと思ったのか軽く手を振る。二人も応答の代わりに手を振るが、

「行くの!」

 やはりズンズンと歩く姫崎妙は振り向いていた兄を向き直させた。

 その一連の様子を目撃して、金井なぞは

「いやあ、今日もいいもん見れましたねえ」

 孫を慈しむ老人のような目になり、

「目の保養ですねえ、そして、ネタを提供してもらってありがたい」

 北山は燃える目で、もとい萌える目でメモを取る始末であったとさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ