第1章 見えない影
オフィスに帰って来たレイは、ある女性の所まで行き、話し掛ける。
「今日、また新人よこしただろう…。最近、その率が高いんだけど?医療班の主任さん…で、人の話…聞いてるのか?」
振り向いた女性が…
「人材が足りないって言ったのは、そっちでしょ…。捜査班のチーフさん。」
小さな火花を散らせる2人。
初めてみる対象をそわそわしながら見ていた。レオは、ドキドキしていたが周りの人達は素知らぬ顔で各々の仕事を進めている。
「だっ大丈夫なんですか?2人、喧嘩してるみたいなんですけど…。」
「大丈夫だよ。あの2人の痴話喧嘩なんて、気にする事ないから。」
「痴話喧嘩…なんですか?」
「あぁ、あの2人…夫婦だから。」
「えぇっ!」
レオの驚いた声が大きかった為、オフィスにいた全員が振り返る。
「どうしたんだ?レオ。」
「いえ、お2人が…ご夫婦だと聞いたので…。」
「ギルか?…余計な事、言いやがって。」
チッと舌打ちをする…。
「レオ、医療班に自己紹介!」
「あ…はい。アカデミー生13期卒のレオリード柚葉マルクスです!19です!」
白衣を着た女性が立ち上がり…
「私は、ミレイユ道院カルマです。よろしくね。19で同じ歳だし。私の事は、ミユって呼んでね。」
「…猫被り過ぎだよな…。」
「レイ…何か言った?」
「別に〜。仕事しよ〜。医療班の主任が怖いから…。」
そう言うと、そそくさと自分のデスクに戻る。
デスクに戻ったレイが見ていたのは、さっきまでいた現場の捜査資料…。自爆テロとして片付けられていた捜査資料まで引っ張り出して読み漁っていた。
今回の事件も自爆テロとしていいものか…でも、今回の場合ポリスを挑発するかのようなメッセージが残されていた。
以前の事件には、なかった物がある…。直感で事件性を感じていたが…。
「レイ?」
「ん〜?」
「レオが立ち竦んでいるわよ。」
事件の資料を置いて見ると…何をすればいいのかわからないと言うように、立ち竦んでいるレオがいた。
「あぁ、レオ悪い…。」
「いえ、何をしたらいいですか?」
「大昔の紙の資料をPCにアップデートしといてくれるか?大量にあるから残ってても定時で帰っていいから。」
「わかりました。」
紙の資料なんて大分前に廃止になっていたが、レイ班は全部PCにアップデートしていた。思わぬヒントがあったりするからだ。
だが、レイ班以外の班は…紙の資料をシュレッダーにかけ処分している。
検挙率No. 1のレイ班…。昔の書類にも目を通しているからなのかは、今のところ不明。
「我、死して世を闇に返す…。」
「何?その気持ち悪い言葉…。」
「現場に残されてたメッセージ…。」
あまり現場に出ない医療班のミユは、眉間に皺を寄せて気持ち悪いというがレイにとっては、事件解決の糸口となる肝心なメッセージなのだ。
「お前、仕事しろよ…。」
「はいはい。捜査班のチーフは怖いわ…。」
「また、そういう事…。」
はぁ…と、溜息をついたレイ。