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闇の螺旋  作者: 加賀美 紫樹
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☆プロローグ☆

 現場は人体の腐敗臭が漂い、血肉が散乱する残虐さだった。

「レイッ!」

 呼ばれて振り返ると、親友であり同僚でもあるギルバディスがいた。

「ギル…。お前は、いつも現着が早いな。」

「お前がのんびり過ぎんだよ!レイ。」

 血生臭い現場でのやり取りとは、思えないような陽気なギルにレイは、はぁっと溜息をついた。

「本当にお前は…何でいつもそうなんだろうな。」

「…何が…?」

 何を言われているのか検討もつかないといったような表情でギルが答える。

「…此処は、何処だ?」

 もう1度、溜息をついたレイが切り返す。

 ギルは、首を傾げながら答える。

「…現場だな…うん。」

 悪びれた様子もなく、そう言う彼にはぁっと3度目の溜息をつく。

「…現場なんだから、頼むから仕事してくれよ…。」

「仕事は、し・て・る!」

「はいはい。で?わかった事は、あるんだろうな…?」

 仕事はしていると豪語するギルに、腕を組みながら聞くレイ。

「…わかった事は…聞いたら驚くぞ?」

 と、ニヤニヤしながら言う、彼の頭をバシッと叩きながら…

「ちゃんと報告しろ!バカ!」

 ついに堪忍袋を切らすレイ。

 ギルは、頭をさすりながら…

 「もう、レイは短気なんだから…。報告としては…まぁ、現場を見てもわかっただろうけど、3年前の模倣犯の可能性が大ってとこだな…。」

 3年前の模倣犯…。レイが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


 3年前…まだアカデミー生だった頃、現場研修中にその事件は起こった。

 その頃は、半人前だった事もあって、4歳年上のカリアスという先輩とバディを組んでいた。

 あの日、街で自爆テロが起きると警告があり、市内を捜査していた時に事件は起こった。

 カリアスが巡回の為に入ったビルが一瞬にして爆破され大破した。

 ビルの中にいた人々の呻き声、飛び散る血肉…。数名、奇跡的に救助されたが…その中にカリアスの姿は…なかった。

 研修時代だったとはいえ、レイにとって忘れてはならない事件だった。

 その日の光景が今、目の前にある現実にレイは武者震いのようなものを感じていた。

「…絶対、犯人あげるぞ。」

 静かに闘志を燃やしていた。

「レイ!一個、気になる点があるんだよ…。」

 握り拳をギュッと握っていたレイに話しかけてくるギル。

「気になる点…?」

「そうそう、コレなんだけどさ…。」

「コレは…。」

 2人の目の前にあったのは、無数の血肉の山の頂上に鎮座されているかのように置かれた人間の頭部。

「…3年前の事件では、こんなのなかったはずだぞ…?」

「あぁ、それとココ見て。」

 ギルが指さしたのは、鎮座された人間の頭部の額部分。

「…ワレ…シシテ…ヨヲ…ヤミニ…カエス?何だコレ…。」

「しかも、この仏さんアカデミー生らしいんだよ。」

「マジかよ…。」

 まだ幼さの残る仏様にそっと手を合わせるレイ。自分に何が起きたのかわからなかったのか、瞳は見開き空を映していた。

「これからだったのにな…。」

「あぁ、そうだな…。」

 俯いていたレイは、はぁと、一息ついて空を仰いだ。

 その時、後方でエンジン音がしたので振り返る。

「あれ…?ラボの奴等、車種変えたのか?」

「さぁ、そんな話、聞いてねーけど。」

 その車から、2人の男が降りてくる。1人は見慣れた男。もう1人は見慣れない少年だった。

「…ルディ…?」

 見慣れた男が手を振りながら声をかけてくる。

「よう、お2人さん。」

 のほほんとした声で手を振っている男にレイは、また溜息をついた。

「俺の同僚…こんなんばっか…。」

 何故かわからない切なさが心にチクンと居座る。

「レイ〜。コイツ今日からお前の部下な。」

「はっ?聞いてないぞ…俺…。」

 初めての現場が此処とは可哀想にと思いながら、言葉を発していた。

「研修終了したばっかの新人なんだけど、ミレイユがお前んとこにって言うから…。」

「出たー。お得意の投げ出しだね〜。ミレイユ姫。」

 ガックリと肩を落とすレイ。

「オフィスでの夫婦喧嘩は、やめてくれよ…。」

 嫌そうな表情でルディが吐く。

「…わかってるよ。」

 ミレイユは、レイの年上の奥様。新人を育成するのが面倒だと、いつもレイに押し付けてくる。そこを除けば、いい捜査官なのだが…と、心の中で思うレイ。

 来てしまったものは仕方がない。

「新人、名前は?」

 溜息をつきながら少年に話しかける。

「あ、じっ自分は、レオリード柚葉マルクスです。アカデミー13期卒の19歳です。」

 緊張したように発言するレオリードを宥めるように肩に手を乗せるレイ。

「肩に力入り過ぎ。俺は、グレイシル道院ゼウス…歳は16だ。年下の上司だけど…かまわないか?レオリード。」

「はい。よろしくお願いします。グレイシルさん!」

「俺の事はレイでいい。これから頑張れよ!レオ。」

 レオの肩乗せた手をポンポンと動かしながら言った。

「はい!よろしくお願いします!レイさん!」

「だから…力入り過ぎだっつーの。」

と、苦笑いするレイ。

後方から、またエンジン音が聞こえてきたので振り返る4人。

見覚えのある白いワンボックスカーが近づいて来る。

「あ、来た来た。」

ギルが嫌な表情で呟く。

「そろそろ退散だな…。」

ボソッとルディもぼやく…。

「レイさん。あの車は…?」

1人、何の事だかわからないといった表情のレオが聞いてくる。

「あれは、ラボの連中の車。」

「…ラボ…?」

「現場を色々、調べたがる連中さ。」

はぁ…と、溜息をつきながらレイが言う。

「俺等が此処にいたら、アイツ等…煩いから…とりあえず、レイ班…オフィスに帰還するぞぉ〜。」

言うが早いか、現場を足早に去るレイ達。


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