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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

美醜逆転世界の底辺王子だが、みんなから違う哀れな目でみられる件について。

作者: 狼蝶

勢いで書いた作品です。楽しんでいただけたら幸いです。




 フラワース王国の第一王子であるカモミーレ=ドル=フラワースは、自分は生まれてくるべき人間でないと幼い頃から思っていた。

 両親や弟とは違い醜い顔。生まれた瞬間感じたのは母親の悲鳴。

生後の涙は生理的なものだったのか、生を恨んでのものだったのかはわからない。

王宮でも廊下を歩けば使用人らが揃って顔を背けるか、遠くを歩いている者は進路を変える。


 人生を、未来を悲観し無気力になっていたカモミーレは、その日天使と会った。





 第一王子のご学友兼将来の側近となる人物の選定の期間、連日近い年齢の者たちに会った瞬間号泣されるか即倒されるかだったカモミーレの精神はもうすでにズタボロだった。

どうせ次に会う者も同じような反応をするに違いない。諦めきった気持ちで次の謁見者と顔を合わせる。


と、


 そこには天使と言っても過言ではないほど美しい子供が綺麗な礼をとっていた。

頭を下げる前に見た顔に唖然となり声をかけるのを忘れていたが、急いで顔を上げさせた。

するとやはり見間違いではなく、正真正銘の天使だった。

 深い紫色の髪は少し癖がついておりふわふわと肩を撫でている。目は非常に綺麗な線のようで、唇は薄く顔のパーツのバランスが良い。

カモミーレはこんなに美しい令嬢を見たことがなかったし、見たとしてもまともに顔を合わせたことなんかなかったため、不躾なのを承知で見とれてしまう。

名はミャートという。なんて可愛らしいのだ、と感動した。目を向けると、なんと信じられないことにミャートも目を合わせてくれ、花が咲く瞬間のような慎ましいだが美しい笑顔まで向けてくれる。


 カモミーレは恋に落ちてしまったのだ。


それからはご学友に選ばれたミャートと共に広い王宮で子供らしい遊びをしたり、庭園で花を探し贈り合ったりと、まるで今までの生きにくさが嘘のような日々を過ごした。

それまで対応が悪かった両親や使用人たちの態度も徐々に変わっていった気がした。


 しかし2人が少年といえる頃、王子は王になるための特別な勉強のためミャートと離れることになった。

 全国民が通うことになる学園の入学まであと4年。ミャートはカモミーレの一つ下のため、共にいられるようになるまではあと5年である。

 冷遇される社交界にも辛い勉強にも、5年後のもっと美しくなっているミャートのことを考えて耐え抜いた。



 入学すると、王子は今まで交流のなかった者たちにも当たり前に遠巻きにされた。しかしそれは慣れきったこと。ミャートのことを考えるとさほど辛くはなかった。

王子とミャートはあれから本当に一度も会っていなかったのだ。会おうとしても、ミャートはすることがあるらしく、きっかり『学園で』という話になった。


 そして1年が経ち、カモミーレは待ちに待ったミャートが現れることを期待した。

きっとものすごくステキな女性になっているに違いない、と。


 新年度の登校初日、そわそわして目当ての人物を探していると、人々の視線を一身に浴びた人物が目に入った。

 そしてその人物の目がカモミーレを捕らえると、次の瞬間その美しい容姿の周りに極上の花を飛ばしながらとびっきりの笑顔で走ってきたのだ。


 「カモミーレさまぁあああああああああああ!!!やっどあえ゛だぁあああああああ!!!!!」


とびきりのイケメンにとびきりの笑顔で駆け寄られることに、しかもその相手が『あの』カモミーレであることに周りが少なからずざわつく。

王子は『知らん。誰だお前は』と問いたかった。

髪はミャートと同様の色をしており、髪のクセも似ているような気がする。顔も・・・・・・、どことなく昔のミャートと似ている気がするが・・・・・・・・・


 「ミャートです!!カモミーレ様っ!!俺をお忘れになったんですか!!!?」


シュンッを通り越して見るもの全てに同情心を煽るその顔は昔のミャートと同一のものだった。

まさか、この男が・・・・・・ミャートなのか・・・!?と汗が流れ出す。

するといきなり顔を両側からガシィッと掴まれ、ビクゥッ!!とすると、それに構わず秀麗な顔をググッと近づけ大変な表情をした。


 「はぁあああああ~~、カモミーレ様のお顔だあぁああーーーー。5年ぶり!!5年ぶりの!!!!」


そして次に胸元へと顔を寄せ、


 「んはぁあああああああああああ~~~!!!カモミーレ様の匂い!!!さいこーーーーーー!!!!!!」



 スンスンと犬のように匂いを嗅ぎ出した。

皆もギョッとしてその様子を凝視している。ちなみにやられているカモミーレはなにが起きているのか理解の範疇を超えていたため、そのまま固まっている。

やっと意識が戻ったカモミーレはわなわなとさせながら、やっとのことで声を出した。



 「いや誰だよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」









 その麗人は正真正銘ミャートだった。

背は王子ほどではないがスラリと高く、輪郭や目元もはっきりとし、幼い頃よりもはっきりと美形だという顔だ。

 彼がミャートだとわかった瞬間、カモミーレの初恋は打ち砕かれた。そもそもミャートを女だと思っていたのだ。可愛い天使だと。今は天使というより神のようだ。美の神。

深い紫の髪は変わらず艶々として、それながらクセを出している。声は格段に低くなった。令嬢たちの耳元で囁いたら一発で気絶させそうなほどだ。


 頭も良くて、何でもできて、おまけに美形。いやおまけではない。まず第一情報として美形がくるのだ。


 そんな彼が入学してきてから、今まで冷たい視線や見下した視線で見られていたカモミーレが全生徒から哀れみを持った目で見られるようになった。

その原因は、他でもないミャートである。

運良く廊下で姿を見るとすぐに『カモミーレさまぁああああああああああああああ!!!!!』と狂乱したかのように走ってくる。

授業が終わりドアを開けると必ず笑顔で待っている。ランチも一緒、トイレも一緒・・・・・・と、所構わずついてくるのだ。

 しかもその目はカモミーレのみを映しており、その他の生徒は入っていない。

つねにカモミーレのみを捉えているのだ。

それにミャートは所構わずカモミーレを愛でる。


 「はぁあんもうこの腕!!この腕の逞しさ最高!! ふわわ!首から垂れてる汗エッロ!!!舐めていいです!!?舐めていいです!!!?」


 「あ~~・・・この胸筋たまらんわーー・・・・・・。いやもうこれは筋肉じゃないですね。オッパ」「やめてくれ」 「えーー・・・」スリスリスリスリスリスリ・・・・・・


 「カモミーレ様!!!今日はどんな下着を身につけているんですかぁ!? いや、俺も側近になることですしね、カモミーレ様の身につける下着の一枚一枚を認識していないと・・・・・・

あ、一度使った下着はもう使わないとかあります?じゃあ、俺が貰ってもよろしいですかね??ではカモミーレ様付きのメイドにそう伝えておきますね・・・・・・」




と、こんな風に絡んでくるのだ。

みんな始めは少なからず醜いカモミーレが麗しいミャートを独り占めしていて狡いと憎く思っていたのだが、いつの間にかみな『イケメンこっわ!!!』と思うようになったのだ。

だから、みんながカモミーレをいたく哀れに思いその視線を注ぐのだ。


 カモミーレはというと、連日の愛の囁き(?)にゲッソリとしていた。あの天使がこんなイケメン男に変身しただけでも精神的にくるものがあるのに、その愛のアピールが激しすぎるのだ。

しかし一度強く惹かれた相手、そう嫌な気持ちにもなれないというのにも困った。



 一方ミャートも、カモミーレに会った瞬間彼に恋をした。

彼は皆と好みが逆だったのである。そして王子と会った時、好みド直球だったカモミーレに目を奪われたのだ。ちなみに初対面時、『カモミーレ!?めっちゃ可愛い名前じゃん!!!』とか思った。そしてめでたくご学友に選ばれ、カモミーレの可愛さに惹かれるうちに、『よし、鍛えて背も伸ばして完璧になってカモミーレ様をお守りしよう!!』と心に決めたのである。

 そして冷遇されていたことにも苛立ち、ミャート作であるカモミーレ様の魅力を綴った分厚い本を量産し、使用人たちに配って


『今の態度のままだったら俺が側近になったときに解雇しちゃうよ? そうなりたくないならこれ読んで勉強することだね』


ととびっきりの笑顔で脅した。ちなみにカモミーレの両親も脅したのはこの男である。



 なんとも恐ろしい、だが外見は美しい男に惚れられてしまった王子カモミーレの人生、いや学園生活はいかに。


























続編に、『美醜逆転世界の底辺王子だが、みんなから違う哀れな目でみられる件について。――第二王子を改良の巻――』があるので、それも合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです。

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