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第85話 代替

昼過ぎには宿に帰れるかと思ったのに、早速スイーツが用意され延長戦となった。銀太とケンが大きく伸びをしながら寄って来る。


「マカロンとマドレーヌにスポンジケーキ、タルトにティラミスまである! 甘い物分解できなくて手に入らないんじゃなかったの? ここに住もう!!」

「勇者ユウイチが作業の合間に一人で出掛けることがあってな、尾行してやったのだ。そこではこれらが並べて売られており、ユウイチは我が見た事のない笑顔でこれらを食していた。それからはユウイチが行き詰った時に我が自ら買いに行っていたものだ。ユウイチの名誉のために今まで黙っておったが、時効であろう」

「別に男の人が甘い物好きでもいいと思いますけど」


昼食の代わりにとスイーツを差し出されたので頂く事にする。これ早くゲームを作れと暗に言われているのだろうか。


「この白と黒のてぃらみすとかいうものはユウイチの時代で最新の甘味らしいぞ」

「まさに昭和だ。私達はそれより三十年くらい先から来てるんですよ」

「たったの三十年か。我らからすれば一瞬の出来事であるな。しかし三十年もあればこの魔王を倒すゲームの三作目……いや四作目くらいは出ているであろう? どうだ、このゲームの内容はこの先どうなるのだ?」


「私は詳しくないけど……11作目の事をテレビで見たような」

「Ⅺが出てる?! くそ、就活のせいでチェックしてなかった! いつ出るんだ?! 平成28年にはもう出てんのか?!」


ややこしい人がいた。銀太は嬉しそうにスイーツを食べ始めているし、胸やけしにくそうなマドレーヌとタルトから頂くことにする。甘いものが好きでも、昼食代わりだと甘すぎるのだよ。


魔王さんは非常食というシリアルバーを齧っていた。魔王さんはゲームにハマってから、片手間に食べることのできるこのバーが主食となっているらしい。ボタンを押しながら片手で食べることが出来て手が汚れないからとか言っているけれど、本を読みながらポテチをお箸で食べるみたいなものかな。



「なあマニ、俺らはもう帰還方法教えてもらったし帰れる。もし俺がゲーム作らなければどうなる?」

「我が悲しむ」

「それだけ?」

「落ち込んだ我は食事も喉を通らぬであろう。このシリアルバーでさえな。さすれば側近の二人も悲しむだろう。お主らはこの二人を見捨てると言うのか?」


子供みたいな自論を展開する魔王マニをじっと見つめるケン。いつもの思案顔だ。側近の二人は雨の日に捨てられた子犬のような顔をしている。仕込みかと思ったけど今までの話を聞くと本当の表情なのだろう。


「例えば、ゲームじゃなくて体を動かすスポーツとかじゃダメなのか? 大人数で球を投げたり蹴ったりする競技があるんだが、俺らの世界では人気があって世界中が熱狂してる。野球やフットサルはいいぞ!」

「数百年前の勇者がそれを考案したが、我らの身体能力が高すぎてうまくいかなかった。蹴った球は破裂し、球を強化すれば辺りに被害が出る」


なるほど、基本的に魔力があるという人達が本気で球技をすれば死闘となってしまうのだろう。それにインドア派の人を外に引きずり出そうとするのはアウトドア派の人の良くないところだと思う。魔王さんどう見てもインドアだし。


「じゃあディスプレイに映るゲームじゃなくて、ボードゲームみたいな実際に手元で触って遊ぶようなゲームは?」

「それならば歴代の勇者が作ってくれたものがある。チェスなどはユウイチが来る前に五十年ほど遊び倒したぞ。ユウイチも最初はリバーシを作ってくれた」


チェスで五十年も遊べるんだ。私が飽きやすいのか魔王さんがハマりやすいのか。それを聞いたケンが実物を見たいと希望すると、歴代勇者が作ったというボードゲームを全て持って来てもらえた。チェスやリバーシにトランプ、見たことのない形の板とコマみたいなのもある。これは私達以外の世界から来た勇者が作った物かもしれない。魔王さんはどんだけゲームが好きなんだ。もしかして先代のお父さんもゲーム好きで百年毎に勇者を捕まえては作らせていたのだろうか。


巨大ドローンやこの部屋の自動ドアのような凄いものを作った勇者はさぞかし凄いゲームを作ったのだろうかと聞いてみたが、その勇者は狭く深い知識しかなかったようで、ドローンなどの機械の設計図だけ残して元の世界へ還ってしまったらしい。もしかしたら早く還りたくて知らないふりをしたのかも。



「仕方がない、百歩譲るとして画面に映らなくとも、ここにある物と違う種類であり長く楽しめるのであれば良い。そうだな、譲歩するのであるから出来れば百年は楽しみたい」

「そうか……ということは、アレはどうだ……?」


「あるのか? 我が楽しめる物があるのか? ならばそれを作成すればお主らの元居た人族の城へと送ってやっても良い」

「魔王さんがお城へ送ってくれるんですか? それってドローンに乗ってとか?」


「いいや、あれは可動範囲が狭いのだ。長距離用の屋根付きの乗り物がある。ユウイチは『ヘリに似てる』と申しておった。それであれば一日かからず人族の城へとたどり着ける。あと我はマニだ」

「ヘリ……ヘリコプターがあるの?! すごい、しかも速い! ぜひそれでお願いします! ケン頑張ってね!」

「他人事かよ……」


ケンは呆れ顔だが、その顔は何かのアイディアが浮かんでいるように見え明るい。


テレビゲームが作れそうにないと知ったマニさんは、セーブデータの続きを遊ぶからと言って畳の上にジャージで寝転がってゲームを始めてしまった。座布団を折りたたんで枕にしているあたり、勇者ユウイチさんの影響を受けすぎていると思う。召喚した国よりも勇者と良い関係を築き続けている魔王やばい。



私達は追い出されるように宿へ帰り会議を開くことになった。



「ケンでもテレビゲームは作れないんだね」

「一介の大学生に無茶言い過ぎだろう。ユウイチはやらかしてくれたよな。それよりさ、見せてもらったボードゲームの中に見当たらないものがあった。そんで、あのでかいゲーム機の中に作りかけのがいくつかあることも分かった」

「勇者のユウイチさん、作りかけで亡くなっちゃったのかなぁ」

「どちらかと言うと、作ろうとしたけどうまく動かないからお蔵入りになってるみたいだったんだ。だからそれをリアルで作ったらどうかと思ってさ」


「よくわかんないけど魔王さん満足しそう?」

「チェスで五十年遊べたなら、同じくらいはいけるんじゃないかと思う。作るのに人手と道具がいるからあの側近二人に手伝わせようか」


また人に手伝わせようとしている。ケンの得意なやつだ。側近さんは魔王さんがのめり込みすぎて、顔も見れない日々が続く事を避けたいだろうから手伝ってくれない気がする。


「いや、それも含めてどうにかできるかもしれん。ユウイチがあのテレビゲームで実現出来なかったこと、それは……」



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