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第54話 また光る

「あの油は何で燃え上がったのかな? 火の勢いは調整出来てたしいけそうだったのにね」

「油が不純物を含んでいたとかか? それか食材に含まれる水分が多かったとか。見た目がまんまだから地球と同じ様に考えてたけど、素材自体が違うかもしれんし何かが反応しあったとかか? だからこの世界には揚げ物がないのかもしれんな」


「見た目が同じでも中身が違うってこと? それにしても唐揚げ食べたかったな。銀太も絶対好きになると思うんだよね」

「外でつくればいい」


「外で作る? キャンプみたいにってことかな。鍋と油を持ち出して、野外で唐揚げ作ったらどうなるんだろう。燃え上がっても大丈夫なように雑草が少ない河原とかで低温から肉を入れてみるとか。……まって、河原ってことは魚とかいるかもしれなくない? そしたら唐揚げができなくても素揚げとかアヒージョが出来るんじゃない? 今度街の外に出るときに鍋と材料持って行ってみる?」

「持っていく」

「タケも銀太も……凝りてねぇよな」




 教会は街の冒険者組合に近い位置にあった。やはり孤児院らしき建物がくっついているが、王都のような古さはなく周りの家と同じように白塗りの建物でしっかりとした造りだった。周りを掃除してる子供たちも元気があるように見える。王都の孤児院を見てからここを見ると、その差に違和感を感じる。


 教会内部へ入るとお祈りをしている人はいなくて、神父様らしき男性は隅のほうで街の一般人のような人と話をしていた。あの一般人との話が終わったら挨拶に行こう。そして何かを聞き出そう。正面には女神様の像があったのでゆっくりと三人で近づく。


「大丈夫だよね銀太。そんなに光らせないよね。光ったとしても人いないしごまかせるよね。でも何かあったらセシリアさんにまた怒られちゃうんだよ。連帯責任なんだから気を付けてよね」

「光ったのはこの世界にきてからだからしらん」


 何とも頼りない返事を貰い、覚悟をして女神像の前にたどり着く。王都の教会の像と顔は違っていたけれど、たぶん女神アウローラ様の像だった。三人で並び立って女神像を見上げると、窓から差し込んでいた光が急に明るくなり女神像がキラキラと輝きだした。


 この光景、過去に二回くらい見たことある。幻想的な光景に神父様と一般人の視線が女神像に注がれ、私たちの姿をとらえる。神父様は一般人に断りを入れてから足早に私たちに近づいてきた。一般人の人、早く帰って欲しい。



「これは貴方がたが祈りを捧げたからでしょうか? もしや聖女様と勇者様であられるのでしょうか?」

「いえいえ、たまたまです。私たちは一般人です。何も知りません。何でこんな事が起きてるんでしょうかねぇ、不思議ですねぇ」

「百年前に聖女様と勇者様が祈りを捧げた際にもこのような光が降り注いだと伝え聞いております。この教会には他に人もいませんし、貴方がたの中に聖女様か勇者様がおられるのでは?」


 神父様は疑いの目で銀太を見つめている。黒髪の私とケンよりも銀髪の銀太のほうが勇者っぽい見た目だからだろうか。この国は茶髪と金髪ばかりだからどちらかと言えば黒髪の私たちの方が目立つのに。歴代勇者様はどんな風貌だったのだろう。





「勇者様と聖女様が魔王討伐後にこの街へ戻ったという噂は聞いた事があります。しかしその後もずっとこの街で暮らしたかと聞かれますと、それについては知らないとしかお答えができません。その戻られたという話につきましても、私の曽祖父がこちらで神父をしていた頃に噂で知っただけと聞いています。百年前の勇者様は無神論者だったようで、魔王討伐前に一度しかこちらには立ち寄らなかったと。聖女様の事は存じませんが……曽祖父が嘆いていたと父から聞きました」


 神父様はベイルという名で二十代前半の男性だった。お騒がせした後、なんとかごまかして話の方向を百年前の事へと誘導した。ごまかせてないかもしれないし誘導したのはケンだけど。


「そのおじいさん?ひいおじいさん?から直接は聞かれてないんですか? ベイル神父のおうちはみなさん神父様をされてるんですか? 勇者様とかに興味はないんですか?」

「曽祖父と祖父は既に亡くなっております。短命な家系でして。かろうじて祖父とは話した事がありますが、私も幼かったですし勇者様の話を聞いた記憶もありませんね。ああ、曽祖父も祖父も父も神父をしておりました。神父になる為には信仰心も大切ですが長年にわたる教育などの準備が必要になるのです。それさえ済ませていれば誰にでもなれるのですが、なかなか神父を長年目指し続けるという方もおられません。私は父から幼い頃より隔離されるようにして準備させられていましたので世間の事については疎いのです」


「短命な家系……? それって病気が遺伝してるって事? 遺伝子とかの話かなぁ?」

「今はそれは置いとけ。それで当時の噂に詳しい人物とかどこに行けばそういう話が聞けるとかの情報が欲しいのだが」


 ケンにベシリと突っ込みをいれられた。そうだ今は噂話に注目しないと。ベイル神父は詳しい人物、場所と呟きながら考え込んでいる。


「詳しいかは存じませんが、領主様か海辺に住む者達でしたら何かを知っているかもしれません」

「あぁ領主様ってルイーズの父だろ? 知らないぽかったからここに来たんだ。海辺はなんでだ?」

「領主様のご子息を呼び捨て……なるほど、先触れがあった領主様のお知り合いとは貴方がたの事でしたか」

「あれ? 先触れとかあったんだ。私達だけだしなくてもいいのにね」


 ベイル神父は納得のいったように頷いている。最初に名乗っておけば良かったかもだけど、変な先入観とか持たれて恐縮とかされたくなくてわざと言わなかった。ケンのおかげであっさりバレたけど。そしてベイル神父の態度が変わらないのは領主様が客人ではなくただの知り合いと伝えたからか。



「海の向こうに魔王領があると聞いた事があります。ですので勇者様は魔王討伐の際に海辺を目指されたのではないかと。それも真偽のほどは定かではなく作り話の可能性もありますが」

「正確な場所を知らないように聞こえるが」

「私は幼い頃より狭く深い知識を学んで参りました。お恥ずかしながら伝承などにつきましてもかなり疎いのです」

「それも聖職者っぽいといえばそうだけど……まあ海には行きたいと思ってたし、ちょうどいいか。よし、じゃあ次は孤児院を見たい。俺らだけで行ってもいいなら行くけど」


 切り替えが早い。そして自分勝手さが増加している気がした。それにしても魔物が出る地域だというのに肝心の魔王について知っている人は少ないのだろうか。なぜか重要人物ぽい人達よりもカーラさんが一番詳しかったような。


 神父様は教会の管理があるというので私たちだけで孤児院に行くことになった。すぐ隣の建物だし、中にシスターがいるから声をかけるようにと言われた。


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