第48話 独身同盟
翌朝ルイーズさんに再度面会の機会を作ってもらった。部屋へ入るとやはりソファに座って書類仕事をしていたルイーズさんに座るよう言われ、向かいのソファに三人で座る。セシリアさんが紅茶をテーブルに並べてくれた。
「昨日はバタバタしちゃったんですけど、私達元の世界に帰る方法とか以前の聖女様と勇者様のことを知りたくてここに来たんです。図書館とか書物室みたいな場所ってありますか? 私達でも入れますか?」
「殿下からもそう聞いているのだがね、不思議だったのだよ。書庫はあるにはあるが城に比べると量は少ない。城の書物室のほうがよほど充実しているだろうに、なぜここへと疑問であったし殿下も不思議がっておられた」
「ええぇ、少ないんですか? あると思ったのに」
「見られて困るような書物はないから確かめてもらっても構わない。地下に書庫があるから案内させよう。街中にも書物はあるだろうが、魔術についてなど専門的な書物はないと思われる」
ルイーズさんがセシリアさんをちらりと見るとセシリアが頷いていたので案内してくれるのだろう。
「カルロスさんが言ってたのは何だったんだろう……」
「北部辺境に帰還に関する書物があると言ってたのか? タケの聞き違いとかじゃないのか」
「僕は聞いていた。『何かがある』と言っていた」
銀太に言われて思い返してみると、確かにそう言ってたような……。私が勝手に書物があるのだと思い込んでたのかもしれない。それにもしかして大した情報じゃないのに手がかりだと思い込んでここまで来てしまった可能性がある。そうすると恥ずかしい。
「カルロス? 西のカルロスの知り合いなのか? ……もしやあいつの言っていた城に住んでいる男女二人というのは君たちの事なのか?」
「あれ? カルロスさんから何か聞いてました? 王都の孤児院でお会いして、そこでカルロスさんから北部辺境の事を聞いたんです」
「そうだ、孤児院で知り合った男女二人と聞いた。カルロスが婚約したのも二人が関わっていると言っていた」
「あのあと一人増えたんですよね。それで、以前の聖女様と勇者様が魔王討伐後にここへ戻ったとかも聞いたんですけど」
そう言うとルイーズさんは口元に手をあてて考え込んでしまった。しばらくぶつぶつ言っていたが顔を上げてこちらを見た。
「であれば、この街にいる生き証人のような者達から話を聞かれるといいだろう。もちろん書庫へも入ってもらって構わない。魔王討伐後の勇者たちの事などわざわざ書物に残そうとする者もおらんだろうし、実際に書庫にもそういった書物はないがな。だが当時を知る人物…はもういないだろうが、その話を受け継ぐものが街のどこかには居るだろう」
「ええぇ、人いっぱいいたけどどうやって見つけるんだろう。聞いて回るしかないってこと?」
「そうなるだろうな。しかし見つけたところで見ず知らずの者に当時の事を語るかも疑問だ。カルロスは何を考えている?」
ルイーズさんが首を傾げて考え込む。私の行動は決まった。書物を読み漁ることと、街の人達から当時の事を聞き出す。気が遠くなるなぁ。それともう一つ、銀太の訓練の事も確認しておかないといけない。
「訓練の事なんですが」
「待ってくれ。君たちがカルロスの婚約に関わっているというのは本当だろうか。先に真相を聞きたい」
「はぁ、マーガレットさんの事ですよね。私たちはマーガレットさんを着飾っただけで、実際はカルロスさんが頑張って声をかけたから婚約できたんだと思いますよ」
話し出そうとした私を遮るようにルイーズさんが質問してきたので返答する。私の返答を聞いたルイーズさんはその答えに納得のいかないような顔をしている。
「そうではないのだよ。カルロスは顔の火傷跡を気にして自分から女性に話しかける事などなかったのだ。それがいきなり婚約したと嬉しそうな文面で知らせが来た。私と二人で独身同盟を結んでいたというのに、ありえないではないか」
「ルイーズさん独身なんですか?」
「そうだ。私はおそらく一生独身だろう。君達はどのような策を練ったのだ? マーガレットという女性は実在するのか?」
ルイーズさんが現実逃避し始めた。ルイーズさんは体は細いけれど茶髪茶目で彫りが深く整った顔をしているし、すぐお相手は見つかりそうなのに。カルロスさんとの同盟については辺境伯同士の連携があるとか言ってたような気がするのでその時に仲良くなったのだろう。見た感じ二人とも二十代半ばくらいに見えて年も近そうだし。
私はマーガレットさんをどう着飾ったかと、その結果しか知らないのでとりあえずマーガレットさんの美しさだけを伝えておいた。ルイーズさんは項垂れていた。
「実在するのか、裏切られた……心の友だと思っていたのに……」
「まあまあ。ルイーズさんもまだお若いですしこれからですよ! たぶん!」
適当に励ますとケンが肘でわき腹を突いてきた。
「えっと、マーガレットさんは外見は気にしないタイプで性格に惚れたって言ってたから、うん、頑張ってください!」
やっぱり私には人を励ますことは出来ないらしい。
落ち込んだままのルイーズさんと話し合い、銀太は聖界もあるので実際に魔物と戦うことになった。冒険者組合で登録すれば街を出入りできるようになるし、訓練で魔物を倒しても報酬がでるらしい。それ訓練じゃなくてもう本番だと思う。組合の建物までは毎回馬車を出してくれるらしい。銀太がいるから大丈夫だと断ろうとしたが、物理的な事ではなくて言葉巧みに話しかけてきて所持品を巻き上げてくる人とかもいるから念の為と言われた。
「君たちが死んだら私が殿下に怒られるのでね。出来れば死なずに戻ってきて欲しい」
出来ればじゃなくて絶対死なないでと言って欲しかった。
面会が終わり、武器とかもないしとりあえず登録だけしてみようという事になったので、馬車を出してもらいそのまま冒険者組合へと向かう。
「銀太は城にいることになってるけどどうする?」
「登録しないと街を出入りできないんだよね。銀太は登録せずにケンが登録して背負って出入りする? 私はエビ釣りに行きたいから登録するけど」
「あの背負うやつ結構腰にくるんだよ。わかったぞ、あの時俺が光ったのは腰痛だったのかもしれん!」
「名を変える」
あの時の光が腰を治してたのかは知らないけれど、銀太の提案で銀太の名前を変えて登録することになった。
「そういえば銀太の本名って何なの?教えてもらってないよね」
「タケの名はなんだ」
「私は水野……いやいやいや、名乗りそうになったわ危ない危ない」
「迂闊すぎんだろミズノアヤカ」
「ではミズノにする」
銀太が口の端を上げてニヤリと笑う。普段は表情筋動かないのにこういう時は笑うんだ。意地悪なヤツだ。ケンもニヤニヤして見てくる。何でフルネーム知ってるんだ。
「自分の名前を使われるのって微妙なんだけど」
「いいじゃん、ミズノー!って戦いの時に連呼してやろう。俺もルシファーにしようかな。城で最初に名乗ったのルシファーだし」
「出たよ中二病。ケンも本名教えてよ」
私の願いは全てが華麗にスルーされ銀太はミズノになり、私たちのパーティー名がルシファーになり、冒険者組合に着いてしまった。私だけ別行動で情報収集しようかと思ってたけど自然と三人パーティーで行動することになってしまった。一日のスケジュール決めないと。
文章に間違いがあったので訂正致しました。ご指摘ありがとうございました!




