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第28話 火傷跡

 舞踏会の話を聞くと、やはりその場で婚約破棄が行われたという。カルロスさんの話も総合して聞いてみると、他にも破棄をしている人がいたとか。同時開催とかどうかしてる。他の人達は広間の中央で大声で宣言されていたそうだが、マーガレットさんはなぜか隅のほうで静かに宣言されたらしい。破棄された後はカルロスさんはじめたくさんの男性からお声がかかり、それはもうダンスを踊る暇もなく忙しかったとか。


「聖女様は婚約破棄を劇のように楽しんでおられるようでした。そしてマーガレット嬢があまりにも美しく、誰よりも人目を惹いてしまっていたので睨んでいるように私には見えました」


 婚約破棄された令嬢は傷物扱いされてその後は男性は声を掛け辛いらしいが、マーガレットさんに関してはそんな事などお構いなしとばかりにたくさんの男性から声が掛かったとのこと。私たちの努力とセンスの成果だったりしたら嬉しい。子供たちも刺繍がんばってたもんね。


 そして舞踏会を終えて屋敷へ帰ると、すぐさま婚約の打診が殺到したという。マーガレットさんはそんな男性達の中から、話していて楽しく心が休まるカルロスさんを迷わず選んだのだ。


「実はカルロス様と婚約が決まった後に、ダニエル様からおかしな事を言われるようになりまして。ダニエル様は広間の中央で破棄宣言をされなかったでしょう。ですので聖女様は本当に婚約者へ別れを告げたのかが分からなかったと仰っておられるそうです。それでもう一度舞踏会で婚約破棄を大々的にしたいので、再度婚約してほしいとダニエル様が仰るのです」

「そんなくだらない要求に従う事はないよ。マーガレット嬢はもう私の婚約者だ。それでもと言うのなら私が出る所に出ようじゃないか」


 また二人でイチャイチャしだした。

 ダニエルさんはマーガレットさんを大勢の前で貶めるまでは聖女様付きの騎士になるのは保留にされているという。そんなの綺麗になってモテまくるマーガレットさんに対する聖女様の嫉妬以外何でもないと思うのに。聖女様はマーガレットさんが傷ついている姿を見たいのだろう。しかし新しい婚約者のカルロスさんは顔の火傷があるから聖女様の好みではなく、本人の実力も相当強いから、懐柔も強制も出来ずにカルロスさんを動かすことが出来ない。ダニエルさんに八つ当たりしているようだった。私たちのせいでマーガレットさんが敵認定されてしまってごめんなさい。



「このまま屋敷にいると煩わしい事が多くありますので、婚約したばかりですがカルロス様のご実家のある西部辺境へお邪魔しようかと思っておりますの」

「同棲始めるってこと?」

「カルロス様のご家族が、ご実家にわたくしのお部屋を用意してくださっているようなのです。ですのでお言葉に甘えようかと」

「私の家族もとても喜んでおりまして。今まで周りには私の顔を恐れるご令嬢しかおりませんでしたから、マーガレット嬢に早くお会いしたいと言っております。場合によっては婚姻も早めるつもりです」


「じゃあもう会えない?」

「辺境へは馬車で数日かかるそうです。ですがたった数日だとわたくしは思っております。タケ様とケン様と子供たちに今までのように頻繁にお会いできなくなるのは残念ですが、今生の別れと言う訳ではございません」


 馬車で数日というと、青森と大阪くらいの距離かな。距離感はいまいちわからないけど、マーガレットさんが幸せになるのなら笑顔で見送ろう。それにしてもマーガレットさんは強くなったなと思う。


「そういえばタケ様に作っていただいたドレスですが、とても評判が良かったようで我が家に問い合わせが多く来ておりますの。タケ様にご迷惑かかからないように返答しておりますが、万が一そちらに押しかける方がおられましたらご一報くださいませ」

「今は何て答えてるの?」

「わたくしと孤児院の子供達との共同制作とお伝えしておりますわ。それによりこちらの子供達を引き抜きたいと仰る服飾店の方もおられると聞きます」

「それは将来安泰だね!」


 思わぬところで子供達に恩恵があって良かった。それを聞いたあたりで急にケンがわざとらしく騎士さん達を誘導して部屋の外へ出そうとしだした。


「じゃあその話はタケと詰めてくれ。俺は騎士と食事の用意を手伝ってくるから後で来いよ。荷物も後で取りに来るからここは任せた」


 ケンの気持ちをなんとなく汲み取った私は彼らを部屋の外に追い出して、マーガレットさんとカルロスさんに向き直った。部屋の隅でリュックが動いた気がした。



「お二人はこれから辺境のおうちに向かわれるんですよね。この王都にはあまり来なくなるんですよね?」

「ええ、出来ればほとぼりが冷めた頃にはまた参りたいと思っておりますが、しばらくは辺境で過ごそうかと。いかがされましたか?」


「カルロスさん、その顔を治せるかもしれないとしたら治したいですか?」

「ええもちろん。とは言っても辺境に戻れば領地の人々はこの顔を見ても気にしない人が多いので、今までは治さなくてもいいと思っていたのです。ただ愛するマーガレット嬢が醜い男に嫁いだと思われるのは我慢なりません」

「マーガレットさんの為に治したい?」

「それとマーガレット嬢のご家族の為ですね。私とてもし娘がいたとすれば、大切な娘を火傷を持つ男に嫁がせるのは不安ですから」


 それを聞いて安心したので、カルロスさんに近寄り、傷を見せてほしいと頼む。戸惑うカルロスさんの仮面を剥がしその傷跡を眺めてみた。火傷の跡が引きつれていて、右目の瞼もなくなっている。触っていいか断ってからその右顔を覆うように手を当てて、治れと念じてみた。火傷跡は治したことがないからどうなるかわからない。


 やがて手のひらが温かくなってきて、いけそうだと思うとカルロスさんの顔が光に包まれた。頭も淡く光っているので頭皮も焼けていたのだろう。光が収まったので手を離すと、そこには超絶イケメンがいた。


「何をなさったのですか?温かく感じましたが……私のこの顔に触れるとは、気持ち悪くないのですか?」

「カルロス様……!お顔が綺麗に……!!」


 マーガレットさんが大きな目をさらに見開いてカルロスさんを見つめている。彼女の男性を見る目は素晴らしいと思う。ケンやソルさんでイケメンは見慣れてるというのに、それを上回りすぎるほど整った顔が目の前にあった。ダニエルさんも美男子と聞いていたが、それ以上だと勝手に思う。


「もしや治ったのか……?!温かい光に包まれたのは治癒の力?!タケ様、あなたは聖女様…いや、女神様であられるのか?!」

「まあ、カルロス様はこんなにも美しいお顔でしたのね!タケ様は王城から来られているとお聞きしておりましたが、このような奇跡を起こされるなんて、もしや聖女様とご関係がおありなのですか?」


 カルロスさんが自分の顔をぺたぺた触って確かめている。マーガレットさんもカルロスさんの腕に抱きついている。だからイチャイチャするなと。


「治るかは分からなかったんですけど、綺麗になって良かったです。ちゃんと話すのでこの事内緒にしてもらえます?」

「ええもちろん!このような事が出来ると世間に知られれば大変な事になりますよ……!それよりも貴方は一体?」


 二人には条件をつけてから話をした。カルロスさんは王都にいる間は仮面をつけてもらう事、辺境に帰ってマーガレットさんと結婚した後に、タイミングを見て治療が成功したと周りに顔を見せる事を約束してもらった。私が治したとは思われないように、カルロスさんがイケメンだと気づかれても聖女様が手を出せないタイミングでとお願いした。


 辺境には魔物が出るとかいうし、なんかすごい薬草とかもありそうだからそれで治ったことにしてもらえば問題なさそう。



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