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Rain story  作者: howari
9/10

9.照り降り雨

【照り降り雨】

照ったり降ったりして定まらない空模様。



/////



教室の廊下から、小さな背中を眺める。ピシッと手を挙げて、先生に当てられると照れ臭そうに娘は答えた。チラッと私たちの方を見ては笑顔を振り撒く。まだ10歳だが、しっかりした優しい子に育ったなぁと嬉しく思う。 



隣の夫とはほぼ会話もないが、嬉しそうな顔をして娘を見ている。今日は半年に一回の学校公開日(授業参観)に来ている。今日は夫がたまたま休みだったので一緒に来ている。




「そろそろ行くか」

「そうね」



外は薄明るいのに雨が降っていた。来る時は晴れていたから、私は折り畳み傘一本しか持ってない。夫は「お前が差せ」と言ったが、結構降っているので「一緒に差しましょう」と傘を開いた。夫が小さな傘を持ち一緒に歩き出す。



はっきり言って恥ずかしい。

付き合っていた頃や新婚の頃ならいいが、今更相合傘なんて……。傘がやっぱり小さい。夫は私の方に傘を傾けているからか、右肩はびしょ濡れだ。少し寄り添うと夫が私を見た。少し照れ臭そうに視線を外した夫が、傘を私に渡して左腕を伸ばし私の左肩を抱き寄せた。



久しぶりにドキドキした。2人とも赤面していたと思う。相変わらず空ははっきりしない空模様。

 


無言の中、傘を打つ雨音だけ響く。


そんな時、夫が口を開く。



「なぁ、さっき廊下で話してた男の人誰?」

「え?あーママ友の旦那さんだよ。よく会うから話した事あるんだ」

「そっか、なんか仲良く話してたから」

夫の抱き締める力が強くなった様に感じた。




まさか、し、嫉妬?



右を振り返ると、耳を赤く染めながら少し膨れた顔がある。

可愛いな、嫉妬してるの?

私はぷっと吹き出してしまった。気付いた夫は「何だよ!」とまた膨れ顔をする。



知らない間に頭上の空は雨が止み、日がキラキラと照っていた。

 



「もう少しこのままでいよっか?」


「うん、そうだね」




はっきりしない空模様はイヤだが、今日は嬉しいかもしれない。




私たちは寄り添ったまま、相合傘を続けて家路に着いた。



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