眠りからの帰還
その日は頭痛が激しかった。家に帰り、薬を飲みそしてベッドに入る。
ふとこんな事を考えた。もしこの生活が夢だったら、実は幻覚だったら。そんな中二病の様な事を考えてしまった。
毎日何かして、寝て起きての繰り返しをもう19年も続けていたらこんな事を考えてしまう
「あ、そういえば今日って俺の誕生日じゃん」
時間の感覚が狂っていた。せっかくの20歳になった日なのにもうどうでも良くなっていた。
「もう寝よう」
─さようなら今日の俺、明日もクソみたいな人生を続けてくれ。
俺の独り言は聞き入れてもらえなかったらしい。
「ゴホッゴホッ、クソ風邪か?」
昨日は頭痛も酷かったし、本当に風邪かもしれない。
「薬を飲まないと」
そんな事を言いながらやっと目を覚ますと、そこは俺の知っている、我が家の壁ではなかった。
「は?何だここは夢か?」
周りを見渡す、俺は何故か知らない家の知らないベッドに寝ていた。
「俺の家じゃ…無いよな。………外はどうなってる」
とりあえず外の確認をしようとした、まずベッドから下りようと、床に足をつけようとした、その時だった。
フニ、と何だが柔らかいものを踏んだ感触があった、まだ片足しか下ろしてなく、床を確認していなかった。
「なんだ?なにか踏んだか?」
俺は床を見た。するとそこには、女の子がいた。
黒髪ロングで服はあまり見ない感じの、まさにファンタジーって感じの服。だが、それ以上に目を引くものがあった。「耳」だ。
「この子……あれか「エルフ」ってやつなのか?」
何故か驚かなかった。これが夢だと思っているからか、それもあったが、この子のそばにいるととても落ち着いた。
「とりあえず、俺が寝てたベッドにでも寝かしておくか」
そう思い、ベッドに寝かせようと、抱えて俺が上に上げると、その子は「うーん」と言いながら、目を覚ました。
「寝てしまいました、ハルトさんの世話をしないといけないのに、不覚です」
女の子がそれを言い終えると、ようやく今俺に抱えられているのがわかったのか、俺を見てポカンとしていた。
「あ、あのこれはですね、別に誘拐しようとか、不法侵入とかじゃなくてですね、ただ単にあなたをベッドに寝かせようと─」
全力の弁解をしようとしていたが、最後まで言葉は出なかった。
女の子が急に抱きついてきたからだ。
「あ、あのー女の子に抱きつかれるのは、嬉しいんですけど…いったん離してもらっても、いいですか?」
応答には応じてもらえなかった。
「あれ?これもしかしてですけど、俺このまま警察に捕まっちゃいます?逃げないように捕縛されてます?」
「違います!!」
女の子は少々涙目になりながら、俺を見た。その目には涙だけでなく、何だが喜びや怒りなどが混じっていたのを俺は感じた。
「ハルトさん…やっと目が覚めましたか」
目が覚めた?ここは夢のはずじゃないのか?
「ここは夢じゃないのか?」
「ハルトさんには1から説明しないといけないことがたくさんあります。ですがもう少しこのままでいさせてください」
「分かったよ、でも分からないことだらけだ、後でちゃんと教えてくれよな」
女の子は無言で俺の肩に顔をうずめながら、首を縦に振った。
─ここが夢じゃないとしたら、俺が今まで過ごしてきた20年は一体何だったんだろうか。
少しの疑問を残しながら、俺はベッドに座った