090
ペンションの中は、内装も家具もカントリー調でまとめられ、大事に使い込まれた木の風合いが、全体に落ち着いた雰囲気を醸し出している。また、天井も高く、ロフトスペースもあり、建物の大きさ以上に開放感のある造りになっている。
荷物をベッドルームに置いた三人のうち、ルナールはキッチンへ向かい、食品庫の中身と相談しながらディナーを作り始めた。食品庫には、近くの畑で採れた旬の野菜や、湖で釣れたであろう川魚などが保管されており、ペンション利用者は自由に使って良いことになっている。
一方、ニースとガッタの二人は、一日の疲れを癒すため、ペンションに併設されているサウナへと向かった。サウナの引き戸には、温泉マークのような模様が描かれている。
「これ、くらげのさかだち?」
「これは、サウナを表す記号だ。三本の曲線と楕円で、それぞれ湯気と煙突を表している」
サウナの中は水蒸気で温められており、タオル一枚になったガッタが入り口の引き戸を開けると、隙間からモワッとした湯気が溢れた。
「うおっ。あっつい!」
「勝手に開けるんじゃない。まずは、充分に水分を取ってからだ」
そう言って、ニースはドアを閉め、ガッタに水が入ったグラスを渡した。ガッタが飲み切ったのを確認すると、ニースは空いたグラスを乾燥台へ逆さに置き、新しいグラスに水を注いで飲み始めた。
そのあいだ、ガッタがニースの薄く筋肉の凹凸が浮かび上がっている身体や、腰に巻いたタオルに注目していたので、飲み干したニースは、グラスを乾燥台へ置きながら言った。
「僕の身体に注目してはいけないよ、ガッタ」
「なんで? ニース、かっこいいよ」
「そういう問題ではない」
「おなかがぽっこりしてないのが、すごくいいのに。くらべてみる?」
「はしたないから、やめなさい!」
ガッタが胸まで巻いているタオルの裾を捲ろうとしたので、ニースは慌てて制止し、ガッタの肩に手を添えて向きを変えつつ引き戸を開け、背中を押してサウナの中へと誘導した。
それからニースは、階段状のベンチの最下段にガッタを座らせ、約束を取りつける。
「頭がクラクラしたり、喉が渇いたりしたら、やせ我慢しないで言うように。いいね?」
「わかった。ねぇ、ニース」
「なんだい?」
「タオル、ニースとおんなじようにしてもいい?」
「駄目だ」
「なんで、なんで! ニースだけすずしくて、ずるい!」
「分かった。それなら、こうしよう」
駄々をこねるガッタを見かね、ニースは腰に巻いているタオルを、鳩尾の上まで引き上げた。
ガッタは、そうじゃないと言おうとしたが、いつもタオルやズボンで隠れている太ももが露わになったので、これはこれで良いかと妥協した。




