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アスパラガスとそら豆のスープ、千切りにしたクレソンとキャベツのサラダなど、食卓の上は濃淡の緑で溢れている。そこに、未明に水揚げされたばかりのアジが加われば、華やかなブレックファーストが完成する。
よほど空腹だったのか、それとも調理の仕方が良いのか、ガッタは次々と美味しそうに料理を口に運び、瞬く間に平皿やスープボウルを空にした。
ガッタは、最後にバターを塗った黒パンを平らげると、クレソンとキャベツにフォークを向けているニースの方を見た。
視線を感じたニースは、ガッタの前にある料理が無くなっていることに気付き、フォークを置いて言った。
「食べるのが早いな。足りなかったかい?」
「ううん。おいしかったよ」
「そうか。僕を待たなくていいから、先に部屋へ戻りなさい」
「はーい。ごちそうさま!」
ガッタが席を外すと、ニースはフォークを持ち直し、シャキッと軽快な音を奏でながらサラダを食べてから、バスケットにある黒パンを一つ手に取りつつ、ルナールに話しかけた。
「あれから、シュヴァルベの様子はどうだい?」
「それが、私にも不思議なんですけど、まるで人が変わったみたいに、パン作りに励んでます」
ルナールはスープを掬う手を止め、バターが入ったココット皿をニースの側へ置きつつ、ニースの問い掛けに答えた。ニースは、バターナイフでココット皿からバターを掬い、黒パンに塗り広げながら更に話を続ける。
「仕事には行ってるんだろうね?」
「えぇ、もちろんですとも。勤めが終わってから、今までなら遊びに出掛けていた時間を充ててます」
「フム。三日で飽きると思ったんだが、今度ばかりは違うようだね」
これまでと異なるシュヴァルベの様子に、日頃は他人に関心を持たないニースも、気になってしまうようである。黒パンを口に運びつつ、片眉を動かし、どこか腑に落ちないといった表情をした。
「やれば出来る子なのに、自分からやる気にならないから困るって、よく継母がこぼしてましたけど、当たってたのかもしれませんわ。急に一途な恋に目覚めるなんて、まったく想定外ですけど」
「いずれにせよ、そのまま身を固めてくれると、僕としても助かるがね」
本人に聞いても要因が分からないであろう論題に、ニースが仮の休止符を打ったことで、ルナールも、それ以上に考えるのをやめた。




