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ふたりで暮らせるかな  作者: 若松ユウ
Ⅲ アクアマリンの月
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042

「ハリー、ハリー、ゲラップ!」

「ウェイト、ウェイト。ガッタ、奇襲をやめろ。いや、やめてくれ」


 ぐっすりと眠っていたシュヴァルベに対し、ガッタはポコポコと肩口を叩いて起こしにかかっていた。

 シュヴァルベが肩を押さえながら起き上がると、ガッタは満足そうなニンマリとした笑みを残し、トットットと階段を下りて行った。

 マイルドの意味が伝わってないなぁとボヤキつつ、着替えたシュヴァルベが階段を下りると、ルナールがブレックファーストをダイニングテーブルに並べているところだった。


「あれ、ガッタは?」

「顔を洗ってるところよ。あなたも、その間抜け面を綺麗にしてきなさい」

「誰が間抜けだ」


 眠気が覚めていないシュヴァルベは、大きく欠伸を一つしてから、鍋を温めているルナールに訊ねる。


「おはよう。学会、いつまでだっけ?」

「やっと起きたわね。早ければ、今夜中に戻られるそうだけど、遅くとも、明朝には帰られるわ。どちらにしても、明日の朝までガッタちゃんを預かることになってるから、そのつもりで」

「そっか。――うまいね、この豆」 

「ちょいと。勝手につまみ食いしないでちょうだい。くちばしが黄色くなるわよ」

「ひよこ豆だけに?」


 ルナールがシュヴァルベを叱っているところへ、ガッタが戻ってきた。

 ガッタは、シュヴァルベの顔を下から覗き込み、よく観察ながら言う。

 

「どっちかっていうと、ちゃいろじゃない?」

「黄色になってたまるか。まったく。この家に俺の味方は居ないんだから、イヤになるぜ」

「この家に限らず、世界中があなたの敵よ。ご愁傷様」


 ルナールが辛辣な言葉を投げると、シュヴァルベは、洗面所の方へ移動した。

 ガッタは、前日と同じイスに座りつつ、シュヴァルベの後ろ姿を見ながら心配そうに言う。


「だいじょうぶかな、スバル」

「問題無いわよ、ガッタちゃん。このくらいで落ち込むような、ナイーブな神経をしてないから」

「ナイーブ?」

「繊細で、傷つきやすいってことよ。構ってほしさに、わざと駄目なフリをすることはあるけど、本当に駄目な時は、逆に隠そうとする性格なの。ポーズを演じられるうちは、まだ大丈夫よ」

「ふぅん」


 姉弟には、姉弟にしか分からないことがあるものであるということを、ガッタは、まだ理解できそうに無かったので、気のない返事をするに留まった。

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