表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたりで暮らせるかな  作者: 若松ユウ
Ⅵ パールの月
104/181

099

 遊歩道を歩くこと、三十分あまり。ミオ、ニース、ガッタ、それからルナールの四人は、湖畔の景色にマッチしたクラシックホテルへ辿り着いた。ホテルには彩り豊かな庭園が隣接し、ロビーやカフェの窓から一望できる景色は、メハジキの薄紫やウイキョウの黄色が目にも鮮やかである。


 ホテルに到着してすぐ、ミオはフロント付近に居たボーイへ、ニースたちに紅茶でも出すよう命じ、自分は着替えたいからと言って、そそくさと宿泊している部屋へ行ってしまった。

 残された三人は、額に一本の短い角を持ったユニコーン属のボーイの案内で、猫脚の優美なソファーや一枚板の立派なローテーブルが並ぶ、華やかなカフェスペースへと移動した。

 

「こちら、アフタヌーンティーセットでございます」

「わぁ、かわいい!」

「本当。食べちゃうのがもったいないわね、ガッタちゃん」

「紅茶も軽食も、ご入用でしたらおかわりをお持ちいたします。お気軽にお申し付けくださいませ」

「どうもありがとう」


 ガッタとルナールが、銀で出来た三段のティースタンドに並ぶスコーンやサンドイッチに目を奪われている隙に、ボーイはニースにアイコンタクトを送り、控えめに人差し指と中指を親指と擦り合わせた。そのサインに気付いたニースは、ベストのポケットから金貨を一枚出し、二人に気付かれないよう、ソファーの背もたれを衝立代わりにして、さり気なく渡した。チップを受け取ったボーイは、営業スマイルを崩すことなく、慇懃に一礼してその場を立ち去った。


「ねぇねぇ、ニース。どれ、たべたい?」

「取ってくれるのかい? それなら、一番下の段にあるマドレーヌにしよう」

「へぇー。このかいがらみたいなの、マドレーヌっていうんだ」


 ガッタは、洋ばさみのような形をしたケーキトングでマドレーヌを挟むと、ニースの取り皿の上に置いた。だが、ニースがナイフとフォークで食べようとすると、ガッタはアーッと声を上げて止めた。それからガッタはニースの手からフォークを奪い、それでマドレーヌをひと口分切り分け、それをニースの口元へ持って行く。


「はい、アーンして」

「ガッタ。僕は、自分で食べられるよ。介護の必要は無い」

「あつくないから、だいじょうぶだよ。さぁ!」


 どこまでもマイペースなガッタに困惑しつつ、ニースは控えめに口を開けた。

 そんなニースとガッタの微笑ましい姿は、キルト製のティーコージーをポットから外して三人分の紅茶を注いでいたルナールだけでなく、到着した宿泊客のトランクを運んでいたユニコーン属のボーイも、遠巻きにこっそり観察していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ