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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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4.南門


路地に入ると途端に、さっきのトイレ臭が‥‥。


町には、公衆トイレのような物はない。

なので、出かけている時にトイレしたくなったらどこでするかと言うと、路地に入ってすましてしまう。

これは、貧乏人だろうと裕福な人であろうと生理現象は等しくあるので関係ない。

ただ、裕福な人は家があるので、家に居る時には家でする。

でも、家のないような貧乏な人はやはり路地でする。


町としてそのままにしておくと疫病の原因になるので、これらを集めて荷車にのせ町の外に運ぶ仕事がある。

言うなれば、壁も便器も何もない、公衆トイレ扱いの路地があると言う事だ。

こういった路地の奥の方には誰も近付かない。

その為、俺達のような孤児は路地の奥に住み着いている。

疫病になる可能性も高いし、臭いのに慣れないといけないが比較的安全ではある。

後はハエだらけなのも問題だけど、これは町中どこにでもいるからな‥‥。


なんとかこの生活から抜け出さねば。

まだ、慣れない体でヨタヨタと南の森に行く為に、南門に向かってゆっくり歩いて行く。

路地を進みさっきまで寝ていた場所にたどり着いた。

「これひっかけて行くか」

さっきアリスが掛けてくれたと思う、布を羽織りマントのように首の所でくくった。

マントの丈は、膝上くらまであるので丸出しを隠せる。

子供の姿とは言え、丸出しで大通りとかさすがに恥ずかしい。


「ん?」

布を取るとその下に、小さなパン切れといくつかの野菜のヘタが置いてあった。

きっとアリスが麻の布と一緒に置いて行ってくれたんだ。

これだけの食事でも、見つけるのは大変だったろうに‥‥。

「ありがとう。アリス。」

アリスに感謝しながら、パン切れと野菜のヘタを食べる。


周りを見渡しても、アリスの姿はないようだ。

アリスを探すのに時間をかけるよりも、森に出て食料を確保した方がアリスの為になるだろう。


路地から大通りに出ると、一気に人通りが多くなる。

大通りは町の中心から、南北東西に十字に通っている道になる。

大通りはかなり広く、4車線の広めの歩道付きつくらいの広さがある。

軍隊やパレードが通ったり、馬車もたまに通る事がある。


この辺りにはないのだが、もう少し中央に向かうと道路の脇に荷車に乗せ、野菜や果物を売っている露店が並んでるはずだ。

今いる路地は、町の東側の大通りに繋がっている北側の路地だ。

さっきの水場も、北に向かって少し行った所にある。

あ‥‥。北と言っているけど実際の方角は不明‥‥便宜上ハルトの頭の中にある地図の上を北としているだけ。


大通りを東側に行けば、ギルドと兵士の詰所があって東側の門になっている。

通りを通る人のほとんどは、ギルドに用がある人になる。

ギルドは、仕事を貰える所‥‥たぶんハローワークみたいな所じゃないかと思うので、一般の人も来るが、仕事を依頼しに商人やお金持ちの人も通るっぽい。

その為衛兵もそれなりに巡回していて、大通りで見つかると、また路地に投げ入れられるかもしれないから危険だ。

と言って、裏道を通っても浮浪児同士の縄張りもあるし、大人の縄張りもあるので、まだ大通りの方がましかもしれない。


俺は大通りの端っこを歩き、衛兵が居れば路地に入り、露店や人の近くには近寄らないようにしながら町の中央に向かう。

町の中央はかなり広い広場になっており、周囲にはびっしりと露店が立ち並んでいる。

人もかなり多く、ここだけで数千人規模で人がいるんじゃないかと思う。

行きかう人も、さまざまで商人っぽい人、職人っぽい人、武器なんかを装備している人、裕福そうな人などもいる。

かごを背負っている人や、多分奴隷としてだと思うが獣人を連れている人、果物を食べながら歩いている人。

人通りが多く、道が乾燥しているのか土埃も少し舞っている。


露店で売っている野菜や、果物は俺の知っている日本のものと同じようだ。

タマネギに、じゃがいも、なしのでかいのとか、スイカ?ウリ?っぽいのも売っている。

たまに、見たこののないような果物や野菜があったりもする。

加工されている物は、パンくらいかな。

肉とか、魚を売っている露店はなさそうだな。

あと壺で売っている物もあるっぽいけど中身は不明だ。


露店とかやっている人は、俺と同じく植物を編んだ布で作った服を着ている人が多いが、上下セパレートの服を着ている人が多い。

そういう人は靴も履いている。


南の大通りにも、露店はあるようだがたまにちゃんとした店もあるようだ。

雑貨店のような店や、宿屋のような店、金物屋?武器屋なのかな?の店など、いくつかの店が見える。


そして、やっと南門が見えて来た。

ここまでの移動だけで、たぶん1時間くらいかかってしまっている。

子供の足と言うのもあるが、まだこの体に慣れていないのと、この町が思ったよりも広かった。


町の外周は、下部1メートルくらいは石で、その上に木で3メートルくらいの壁で囲われている。

町の東西南北それぞれに門があるそうだ。

ハルトの頃の記憶でも、東門は見た事あるが、それ以外の門ははじめて見る。

門は、木でできていて引き戸やふすまのように、横に開くようになっている。

かなり大きく、多分重さもあるので数人で毎日開けているんだろう。

今は、完全に空いている状態になっている。


門の横には小屋が左右それぞれにあり、そこで町から出る人と、町に入る人の受付をしている。

衛兵がそれぞれの小屋の前に1人ずつと、多分中にも、もう1人はいる感じなので4人ほどの衛兵が居そうだ。


言葉は、ハルトが喋れるので俺になっても喋れる‥‥と思う。

ただ、衛兵ってところがなぁ~。

門からちゃんと出して貰えるように交渉しないといけないので、難易度はそれなりに高いのかもしれない。


俺は衛兵の人に話しかける。

「町の外に出たいですけど。」

「孤児か‥‥。名前は?」

「ハルトです。」

一目で孤児と分かったのは、もちろん恰好だ。

植物を編んだだけの服で、丈が足りないのもそうだが、髪の毛を切らずに伸ばしているのも孤児が多いので、一目で孤児や浮浪児とわかる。


門番している兵士は、30歳くらいの筋肉質の人で服は俺達のような植物を編んだだけの服だが、その上から動物の革でできたような胸当てをしている。

さらに、小手や、足にも同様に皮でできた装備を付けている。

門番の支給品のようで、門番全員が同じ装備で揃えているようだ。

手には、身長よりも長い槍を持っており剣も腰に装備しているようだ。


「何しに出るんだ?」

「森に採取に行ってきます。」

「‥‥そうか。」


孤児院でもそうだが、子供を口減らしに南の森に出す親もいる。

東の森は、南の森に比べて安全なので帰って来る可能性も高いが、南の森に子供が1人で行くと言うのは、あえて帰って来られない所に行かせていると言う意味になる。

門番もそれは十分に理解しているのだろう。


「そうか。午後6の鐘が鳴るまでなら、入町金はかからないからそれまでに帰って来るんだぞ。」

これは知らなかったよ‥‥。午後6時までにって事だから、早めの5時ごろには戻ってくるようにしよう。

入るのにお金取られるとなると、町に入れなくなってしまう。

さっき午前9の鐘が鳴ったところだから、まだまだ余裕だけど食料確保にどれくらいかかるかわかんないしね。

町の出入りを管理する木札に名前を書いてもらう。


「街道から外れたら、森に入らなくてもヘビなどがいるし毒を持っている奴もいる。それに、オオカミも森から出てる事もあるから気を付けるんだ。」

「ありがとうございます。気を付けます。」

思いのほか親切だったな。

もっとひどい対応されると思ってた。


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