12.東の盗賊調査 救出(2)
とりあえず、早急に必要な治療は終わったので、次は退避場所の作成だ。
地下に部屋を作るつもりなので、先に作ってしまわないといけない。
「今から、少しここを離れるが、すぐに戻って来るから心配しないでいい。」
女の人達が、うなずくのを見て、俺は近くの地面に穴を開け、階段状にしながら、
地下に掘り進める。
後ろで、息をのむ声が聞こえたがとりあえず、今は作業に集中する。
そのまま、10メートルほど地下向かい、そこから平坦な通路を少し伸ばし、
右側に部屋を作る。
階段の途中や、通路に魔法で照明を設置して、階段にも手すり代わりに、へこみを作って置く。
作った部屋では、治療もしたいので、少し広めにしておく。。
10m四方くらいの大きさだ。
人数も12人いるから、広めにしないと、入っただけで治療スペースが無くなる。
ここにも照明を作り、部屋を明るくしておく。
治療をするので、体を洗う必要があるので、井戸を作って、水が散らばらないように、
水場を作り、水が外に流れないようにする。
治療用に寝たり、座ったりしてもらう為に、長椅子状を土で作っておく。
そして、パーティションを作り、治療風景が見えないようにしておく。
治療には時間がかかるから、その間に食事も取って貰う為に、女の人達が来る場所に、
テーブルを作って置く。
後で、食事を出して置けばいいだろう。
後は、空気穴などを作ってとりあえず準備は出来た。
あまり時間を掛けても、危険なので、これくらいにして後は、
女の人達を入れてからにしよう。
俺は地上に戻り、女の人達のロープを、ナイフで切って解放ながら、
「あの階段の奥に部屋があるので、そこで待機していろ。」
と指示して行く。
女達は、最初戸惑っていたが、ぞろぞろと階段を降りて行った。
「この2人は動けないから、誰かこの2人を連れていけ。」
数人が、階段から戻って来て、2人を抱えて一緒に階段を降りて行った。
命令すると、それなりに素直に従ってくれて助かる。
パニックになったり、抵抗されると面倒だったけど、そういう意味では良かった。
捕らわれて、ここでの生活のせいで、そういう風に慣らされてしまって、
と言う可能性もあるんだろうけどな・・・。
女の人達が階段を降りて行ったのを見送った後、俺は洞窟の内部にあった物を、
すべて回収して行く。
御座のような、藁で編まれた床敷や、装備品の予備、少しの果物、
それに、商人から奪ったと思われる、空になった壺なんかもあった。
女の人達がつながれていたロープの切れ端や、括られていた杭なんかも回収しておいた。
回収が終わって、痕跡も消したので俺も階段を降りて行く。
降りると一緒に、階段も埋め立てて行く。
これで戻って来た盗賊達は、洞窟の中に何も無くなっていて、
しかも、どこに逃げたのかも分からないとなるだろう。
見張りも出て行くのを、見てないのでさらに混乱するだろう。
通路から、部屋に入ると女の人達は、部屋の端にひと固まりになって座っていた。
「これで、お前達はもうあの盗賊達に襲われる事は無くなった。
俺は、アイカの冒険者ギルドから、盗賊の討伐の為に派遣された冒険者だ。
安心すると良い、お前達は解放される。」
女達は、喜色に包まれる。
「まずは治療からだ、さっきの奴以外に、急ぎで治療しないといけない奴は居るか?」
「骨折などはいますが、死にそうな子はいません。」
最初に、報告してくれた女の人だ。
この人が仕切ってくれそうだな。
では、まずこの人から対応した方が、後は楽になりそうだ。
「では、お前はこっちに来い。
その間に、お前達はこれを食べておけ。」
俺は、テーブルの上に、人数分のパンと、ナシをセットにして置いて行く。
「お前は、食事は後だ。こっちに来い。」
「はい。」
気丈にも、まっすぐに俺を見て、返事をしてくる。
これは、なかなか気概のありそうな人だな。
最初に選んで、良かった。
「では、治療を始める前に、清潔な状態になって貰う。大人しくしててくれよ。」
俺は、魔法で井戸から水をくみ上げ、その女の人に水を纏わせる。
女の人はびっくりしてたけど、我慢して動かずにじっとしてくれている。
纏わせた水を掻きまわすように、水流を作り、体の汚れを取って行く。
同時に、髪の毛も同じように水で洗って行く。
顔だけはまだ汚れていたので、桶を出して、そこに水を貯め顔だけは自分で洗って貰う。
綺麗になった事で、姿を見ると、痩せこけて肋骨どころか、すべての骨が浮き出ている。
その上、各所に打撲の跡があり、青く痣になっている所も、最近殴られたのか、
赤く内出血している所などが、体中についている。
むごい状態だ・・・。
さっき作った、長椅子に寝て貰い、治療を始める。
かなり殴られていたようだ。
頭蓋骨にもひびが入っており、よく平気に動いていたな・・・。
多分、常に割れるように頭が痛かったはずだ。
痩せこけている割には、筋肉がついていたようで、戦いをしていた雰囲気がある。
酷い事をいろいろされた、傷も多く会ったようで、それらもあわせ、
一通りのケガを直すのに30分ほどの時間がかかった。
「治療は終了だ。どうだ?痛い所や、違和感は無いか?」
女は、自分の体を確認して、戸惑っていたが、
「はい。痛めていた所が治ってます。」
「名前を教えて貰えるか?」
「クシェルと言います。」
「では、クシェル。お前にはあの人たちの取りまとめをしてもらう。
全員治療するのに、結構時間がかかりそうだ。
なので、先にとりあえず寝られる場所を用意する事にする。
そちらにも少し時間がかかるので、その間に食事をしておいてくれ。
出来たらまた指示を出す。」
「はい。分かりました。」
「あと、時間があったら、今の治療を説明しておいてくれ。
暴れられたりすると、治療が遅れるので・・・。」
「はい。」
1人で30分かかると言う事は、後11人なので、単純計算であと5時間半かかる。
さすがに、時間がかかり過ぎだが、治療しない訳にもいかないので治療はするが、
先に、しばらく生活出来る場所を作って、そこで休んでもらおう。
後は、どこかでブラントさんと合流するか、そのまま解放するかだな。
そこは、とりあえず後から考えるか・・・。
俺は今いる部屋の隣に、もう一つ大きな部屋を作る。
先ほどの、部屋よりも広めの部屋を作る。
前に作った地下部屋と同じような構成で作って行く。
今、作った部屋は、リビングになるので、真ん中に、6人掛けのテーブルと椅子のセットを、
作って置いておく。
隣に広い寝室を作り、ベッドを人数分用意する。
それぞれに、藁束も用意しておく。
一時的な住居だし、そこまで良い環境にしてやらなくてもいいだろう・・・。
リビングに戻り、トイレを3つほど作る。
トイレは早めに作らないといけない。
この世界では、トイレをどこでも好きにしちゃう人が多すぎる。
地下でそれしちゃ・・・えらい事になる・・・。
浄化槽が必要なので、先に浄化槽を作り、そこにつながる様に、トイレを作成する。
ここでも洋式のトイレにしておいた。
空気穴を何か所か開けて大体完了だ。
魔法の照明では、俺が離れると消えてしまうので、オイルランプを何か所かに、
配置してそちらに、照明を変える。
元の部屋に戻ると、まだ食事の最中だった。
「クシェル。食べてる最中の食事を持って、こっちに来てくれ。」
「はい。」
作ったばかりのリビングを見て、驚いているようだが、まずはテーブルに座らせる。
「全員に説明するのは、手間だからお前に説明しておく。
治療が終わった者から、こっちの部屋に入って貰うので説明してやってくれ。」
「はい。」
「あと、これが服だ。下着は人数分あるのだが、
服は足りていないが、少しあるので使え。」
下着だけでも、洗い替え用に結構な枚数買っておいて良かった。




