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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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3.魔法のお試し


水場は、小さな広場の真ん中に井戸があり、井戸の周りの床は石造りになっている。

井戸には、滑車などはついておらず、紐のついた桶を井戸に投げ込み、人力でくみ上げる方式だ。

また、紐は桶と一緒に井戸の中に落とさないように、紐の逆側の端は地面に刺さった杭にしっかり結び付けられている。

井戸にはごみや、虫などが入り込まないように、ふたもされており、使うときにはふたを開けてから水を汲む。

使ったらふたを閉めて、桶をさかさまにして置いておくって言うのがルールになっている。

早朝と夕方は、近所の人達が食事や洗濯の為に多くいるのだが、今は人もおらず水を汲めそうだ。


ふたを開け、桶を落として紐を引っ張る。

「重っ!」

満杯に水の入った桶は、ハルトの腕力では持ち上げる事が出来なさそうだ。

紐を振ったり、何回か持ち上げては落として、桶の水を減らしなんとか井戸のヘリ迄持ち上げる事に成功した。


「ふぅ‥‥。」

桶に手を入れると結構冷えている。

手にすくって飲むと、思ったよりも美味しく感じた。


水を飲みながら今後の方針を立てていこうか。

まず何よりも考えないといけないのは食事だ。

ハルトの生活の通りにごみ箱を漁るのが確実なんだろうけど、現代日本人としてそれはやりたくない。

となると、それ以外の方法が必要になってくる。

やっぱりお金を稼ぐのが日本人的だよな。


手っ取り早くお金を稼ぐ方法として、考えられるのが

・働く

・何か売る

・盗む

だろうな。


働くのはハルトの記憶的には難しそうだ。

今ハルトは5歳だ。7歳になればギルドと言う所に登録して、見習いと言う名目の雑用みたいな仕事でお金が貰えるみたいだが、そんな先の話は意味がない。

飛び込みでどこかでお願いするにしても、コネもない孤児に仕事が貰える事はない。


何かを売ると言うのも、難しいかもしれない。

そもそも何も持っていないので売る物がない。


やっぱり盗むか‥‥。

ただ捕まるとほぼ殺される。

衛兵に捕まったら、槍で突かれる。

盗んだ被害者に捕まったら、死ぬまで殴られる。

リターンに対して、ハイリスクすぎる。

それなら、ごみ漁りしてる方がよっぽどましだ。


食堂のごみについても、日本のように残飯が大量に出るなんて事はなく、お客さんが残す事はほとんどない。

生活レベルが低いので、そんな勿体ない事をする客はいない。

なのでごみは、リンゴのヘタ部分やジャガイモの皮タマネギの皮、腐った肉屋野菜なんかだ。

たまに、飲みすぎてつぶれたお客の残りがあっても、ほとんどは食堂の見習いなどが食べてしまうので捨てられるような事はない。

見習いになっても、まともなご飯をもらえる事はほとんどないようだ。


「う~ん。いい手がないな‥‥。」

7歳未満なら、孤児院に入る事はできる。

ただし、小さい子優先なのでベッドも部屋も用意されず、かなり粗末な扱いを受けるようだ。

食事についても、同じく小さい子優先の為5歳を超えた子にはほぼ回って来ず、結局浮浪児として町を徘徊することになるようだ。


あと思いつくのは、年齢を詐称してギルド経由で見習いとして働くか、売る物を見つけるかだな。

とそこまで考えて1つ思い出した。

そういえば!魔法使えるんだっけ?

ハルトに生まれ変わって完全に忘れてた!


試してみるか。

俺は目に魔力を集め、魔力が見えるように集中する。

すると、俺の体から出ている魔力が見えるようになった。

「お!見える。と言う事は使えるのか。」


さっき桶に汲んだ水に集中し、水を持ち上げてみる。

水が球状になって持ちあがる。

持ち上げた水を半分ずつの2つに分けてみる。

俺から延びてる触手状の魔力が2つの水に伸びているのが見える。

「使えそうだな。と言う事はこれを使ってお金を稼げるかも。」


ハルトの記憶だと、魔法自体は珍しい物ではないようだ。

魔法は誰でも使えるし、生活にも使われている。

かまどに火を点けたり、飲み水を出したりして使っている。

ただしかなり魔力が少ないようで、かまどに火を点けるのでさえ数回点けると気絶してしまうようだ。

孤児院では、持ち回りで子供達に火を点けさせていたようで、ハルトも、かまどに火を点けるのに手こずったら失敗して気絶してしまう事もあったようだ。


で、俺はと言うと未だ水の球を宙に浮かせているが、気絶する感じはない。

リーゼが言っていたように、魔力が多いのだろう。

「これで稼げそうかもしれないな。」


孤児院時代に、いくつかの行事があった。その内の1つに、町の外に木の実を取りに行くと言う物があった。

これは、孤児院の大人数人と一緒に東の森と言う所に木の実を取りに行くと言う物だ。

冬を超えた後の春先で孤児院の食料がかなり厳しくなってきた時に、年齢の高い子供達が行っていた。

ハルトがまだ小さかった頃だったので行った事はないのだが、結構な木の実が取れたんだと思う。

これを俺1人で出来れば、ごみを漁るよりもましな食べ物が手に入りそうだ。


ただこれはかなり危険も伴うとの話だった。

森には人間を獲物として狩る動物がいるので、それに襲われる事も珍しくないと言う話だ。

その為年齢が高い子達の中で反抗的な子やいつまでも出て行かない子は、南の森に数人で木の実を取りに行かせると言う事もしていた。口減らしと言う奴だ。

もちろん帰って来る子は少なかったし、帰って来てまだ居座るようなら、さらに向かわされる事になる。

東の森は、ギルドで狩りしているので比較的安全なのだが、南の森では狩りはしておらず、危険な動物が多くいるとの事だ。


行くとしたら、南の森かな。

東の森の方が安全とは言われているが、それは大人が付いて行ってこそだ。

孤児である俺に取って、味方ではない大人は敵だ。

町の外で大人に見つかると、殴られる、襲われる、手に入れた木の身を奪われる、と言う可能性が高い。

なので危険な動物が多くても、人が少ない方が安全だ。


方針は確定だ。南の森に行って、木の実か食べられそうな動物を狩ると言う方向だな。


方針も決まった事だし、魔法をもう少し確認しておこうか。

浮かせた水球をまた1つにくっ付ける。

今度は、水球から純粋な水だけ動かす。

すると、水球の有った所から水に含まれていた不純物がポロポロと埃のように落ちて行った。

「結構汚れてたのね‥‥こうしてから飲めばよかった。」


水球に口を付けてごくごくと飲んでみる。

気のせいかな?なんだか、さっきよりおいしい気がした。

でも、魔法使えるという事はいろいろ出来そうだな‥‥。


ってよく考えたら、魔法使えるならこれで水汲めば良かったんじゃん!

慣れない体で、頑張ったのにもっと楽な方法があったよ。

まあ、今更か‥‥。


水球を桶にもどして、次は体を洗っていく。

さっきまで、寒くて震えてたので全身ではなく、下半身中心に軽く水をかけて手でこすって汚れを落とす。

あまり長居して大人に見つかると、追い払われたり、暴力を振るわれるので手早く行う。

どうせ森に行ったらいろいろ汚れるだろうしな。

ある程度汚れを落とした所で、井戸の蓋をして、桶をさかまさにして置いて、俺は森に向かう為に元の路地に向かって歩いて行く。


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