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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
4.港町ウィダス
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2.引っ越し(1)(アイカ南部画像)


マディには、俺の知ってる料理の方法をいろいろ教えた。

まな板や包丁の使い方から、煮込み、焼き、揚げ、炒めなどの調理方法や、

食材の下ごしらえの方法から、素材の切り方まで。

こっちの料理の仕方は、あまりにもシンプル過ぎたので、俺の教える料理は、

マディには、非常に複雑な作業に見えただろう。

それでも、マディは一つずつしっかりと身に着けて行ってくれた。


おかげで、かなり料理が上達した。

味付けの種類は、塩、ハーブと、しょうがとにんにくだけだが、

野菜は日本並みに豊富にあるし、肉の種類は日本よりも多い

日本の味付けを求めてしまう俺とは違い、柔軟に代替えの方法を考えるマディは、

やはり料理が本当に好きなんだろうな、素直に向かい合ってる。


「料理って、私が思ってたよりももっともっと複雑で奥が深いんですね。」

「でもその分、出来た時の達成感も、何よりも食べた時の幸福感もいいでしょ。」

「はい。私、楽しくって仕方ないです。

最初のきっかけは、パンの焼き方でみんなに褒められて、料理が好きになったのですけど、

今は褒められる事よりも、知らない事を覚える事が本当に楽しい。

もっともっと知りたいです。そして、もっともっと作りたいです。」

「じゃあ、次はスイーツ関連教えていくね。スイーツは、

スイーツだけの専門の料理人が居るくらい、いろんな方法があるからね。」

「はい!」


最近は、ハーリからも料理を教えて貰ってるらしい。

ハーリは、解体だけでなく、肉料理にも詳しいらしい。

それを教えて貰う為にも、倉庫にキッチンも併設した。

「ハルト様に教えて貰った料理ばかりだと、ハルト様に驚いて貰えなでしょ!」との事だ。

ハーリも、マディのお昼ご飯に大満足で、一緒にアレンジの案とかも出して、

いろいろ試してるそうだ。


リルには、基本的には家事を主にやってもらってる。

本来の薬剤師として、いろいろやって貰おうとおも思ったけど、使いどころが無い。

その上、薬剤は作ってしまうと日持ちしないので、作り置きって訳にもいかない。

必要になってから、作って貰うつもりだけど、今の所誰もケガも病気もしていない。


魔法薬と言う即効性のある薬も存在するのだが、これには魔獣の素材が必要なんだそうだ。

今だ、魔獣は狩った事無いから、魔法薬には挑戦していない。

これで回復薬が出来れば、俺の魔法よりも効率的に治療する事が可能なので、

是非作っておきたい所だ。


アリスやジャック、ミーアも文字一通りを覚え、

計算もある程度出来るようになった。


俺達を襲った盗賊団については、あれからは動きもないようだ。

冒険者ギルドで集める噂の中に、その後の話は聞かれない。

大量殺人事件についても、進展の話は流れていない。


俺は冒険者ギルドでも、納品を行っている。

高額の依頼だけでなく、そのまま納品するよりも高くなるのであれば、

銅ランクの依頼でも、納品している。

薬草の採取の依頼と、獣の部材の依頼だ。

両方共、持ってる物から放出するだけなので、手間いらずだ。

おかげで、大銀-2までランクも上がった。

数字のランクは、あまり意味は無いのだが、2に上がった事で新人では無くなったと言う、

扱いになるようだ。


皮屋も、ヘビ革の噂はもう流しているので、ヘビ革の飾り付けだけでも、

結構売れるようになっているんだそうだ。

小金貨用の財布も、完成しており、徐々に売れだしているとの事だった。

貴族のお客さんにも、噂を流して貰っており、貴族からの注文も出て来たそうだ。

ヘビの皮を売りに行く度に、店主は嬉しそうに話してくれる。


ケニー商会のケニーさんは、あまり元気がない。

毒薬が、ケニーさんの所で大量に売られている事で、

大手の商会ににらまれてしまっているらしい。

通常大手の商会の店よりも、ケニーさんの所のような弱小商会の方が、

品を確保出来る事なんて無いはずなのに、大手商会どころか、

冒険者ギルドでも切らしているのに、ケニーさんの所では常に販売している状態に、

かなり嫉妬されているそうだ。


この大手商会と言うのが、商業ギルドも仕切っているとの事で、

いろんな面で圧力を与えてくるそうだ。

さらに追い打ちで、ウィダスに塩の買い付けに出ていた商隊が、

盗賊に襲われて壊滅したらしい。


ずいぶんと踏んだり蹴ったりの状態らしいが、

それでもヘビの毒の売り上げは順調で、儲けは出てるそうだ。


亜空間を工夫して、少し改造してみた。

亜空間越しに、話が出来るようになった。

と言っても、声の通る亜空間に話しかけると、俺に聞こえるようになっている。

逆に、俺の方からも亜空間から声を出す事が出来る。


なにかあった時に、最低限の連絡が出来ればと思って考えてみた。

亜空間だと距離が関係無いので、魔法が使えるし、これを使って、

空気の振動を伝えると言うやり方だ。


問題はいくつかある。

1つは話しかけられると、結構な声が出てしまうので、人が近くにいる場合には、

この亜空間は消している為、通じない事が結構ある。

もう1つは、家に連絡する時には、結構大きな声を出さないと、

リビングに誰も居ない場合には、聞こえない事だ。


連絡手段が無かったので、ずいぶん便利にはなった。

俺が工房に籠ってる時に、これでお昼ご飯が出来たと呼ばれたり、

町に出かけてる時に、追加の買い物頼まれたりと・・・。

なかなか良い魔法のはずなのに、なんか雑な使われ方してる。


今日も、朝から森に出かけて獣を狩り続ける。

南の森の獣は本当に狩り尽くしてしまった。

狩り尽くしたと言っても、森に入って数km程度の場所だ。

それ以上奥に行くと、魔獣の森になる。


魔獣の森と、獣の森との境目は明白だ。

境界線があるように、魔獣の森では色が一段深くなる。

魔力が見える俺には、森の植物が、微量だが魔力を持つのが見えるのだが、

一般の冒険者には、その植物の色で見分けるのだそうだ。

ここで取れる果物なども、微量の魔力が入っている。

俺はまだ入ってないので、見ただけで食べては無いのだが・・・。


ハーリさんが聞いた話では、味もなにも変わらないらしい。、

ハーリさんが食べた訳でも無いので、噂のレベルだそうだ。

獣は、魔獣の森に入らないし、魔獣も魔獣の森から出ないそうだ。

ただ、獲物を追いかけてる時には、出る事もあるので出れない訳ではないって話だった。


南の森の獣を狩り尽くした事で、戦えない冒険者や、

孤児院の子供達、浮浪児がこっちに採取や果物を、取りに来るようになっている。

今までは、これらの人達は、東の森で採取を行っていた。

東の森の方が、冒険者達が出入りするので、獣の数が少なかったし安全だった。

しかし今は、南の森に獣が居なくなったと言う噂が徐々に広まり始めて、

南の森に徐々に増える傾向だ。


そう言った訳で、人目が増えて、地下部屋からの出入りも大変になるし、

獣を狩るにも結構移動しないといけなくなってしまったので、

そろそろ地下部屋からの引っ越しを、本格的に考えないといけないかもしれない。


引っ越しの候補地としては、町から離れるが南の森の南側に平原がある。

そこはどうかなと思ってる。

俺は、魔法の追い風で移動し、川沿いを南に抜け、平原に出る。

ここはかなり広い平原が広がっていて、その向こうに大きな山脈が見える。


平原と一言で言っているが、木が生えてないと言う訳ではなく、

森に比べて木の量が少なく、人の背丈ほどの雑草が生えている。

岩が飛び出たり、穴や、地割れが各所にあるので、歩きやすいような場所ではない。

町の近所の平原は、まだ荷車が引けるくらいではあるのだが、

この辺りまで町から離れると、進むのさえ大変な平原になってる。


俺は、さらに平地を森沿いに南東の方向に進んで行く。

森は、途中で東側全体に現れ、そのまま南の方で山脈に合流しているようだ。


「この辺りが良さそうだな。」

3方向が、森になっており、西に向かって平原が続いている。

大体、アイカの町からは1日半くらいの距離で、

このまま西に向かってまっすく行っても、街道まで1日程度離れている。

南側は山まで、半日以上の距離がありそうだ。

山も木々が生えているので、森との境目は分からないけど・・・。

ここなら、なんの用も無いだろうから、人が来る事はないだろう。

冒険者と言うか、探検家みたいな人が、地形を調べに来るとか、

盗賊が誰にも見つからないアジトを、作る為に来るとかその程度だろう。


「さて・・・始めるか。」

今回の家は、地上に作ろうと思ってる。

わざわざ人が来ない所を選んだのもその為だ。


地下は見つかりにくく安全ではあるんだけど、いろいろと不都合が多い。

何よりも、地下は陰湿だ。

日の光が無いのは、健康にも良くないし、気分も湿ってしまう。


それに、洗濯物の問題もある。

洗濯しても、陰干ししか出来ないので臭う。

結局俺が、乾燥の魔法で乾燥させる事になってる。


後は、雨だ。

地下に部屋を作ってると、雨の日に外に出ようとすると大変だ。

入り口は、見つからないように他の地面と同じようになっている。

その為、雨の日に地下から出ようとして、入り口を開いたら、

ドバって水が落ちて来たりする。

さらに、その排水が無かったので、階段下に溜まったり、部屋中湿気たりと雨は大変だ。

今は、対策して大丈夫になってるが、それでも外の家が良い。


良さそうな場所を見つけて、まずは草刈りだ。

周囲100m四方くらいの雑草を刈ってしまう。

さらに、そこを整地して平らにする。

それを囲うように、土製の塀を作る。

塀の高さは、2mくらいにした。

この高さなら、それほど目立たないし、獣が飛び越えて来る事も無いだろう。

ただ、飛ぶようなコウモリや、鳥なんかは来るかも知れないが・・・。

それは、塀ではどうしようもないしな。


ここまでで、お昼ご飯の時間になってしまったので、一旦家に戻る。

適当なとこに、穴を掘って、中に亜空間を出してそこから移動だ。

これで、この場所とつながったので、いつでもここから出れるようになる。


「みんなに聞いて欲しいんだけど、引っ越しをしようと思ってるんだ。」

「引っ越しってなに?」

アリスは、引っ越しを知らなかったようだ。

確かに、家が無かったので知識としても無いだろうな。


「ここから、別の場所に住む所を変えようと思ってるんだ。」

「え~。ここで良いよ~。」

「ハルト様、パンの窯なども作っていただいたのに、わざわざ引っ越ししなくても・・・。」

「最近、この近所にも人が多くなって、見つかるのも面倒だし、

何より地上に家を建てたいと思ってるんだ。」

「地上にですか?誰かに見つかったり、獣などが居るのではないのですか?」

マディは消極的みたいだな。


「誰も来ない所に、周りに塀を作って、家を建てるつもりだから大丈夫。

それよりも、ず~っとオイルランプを付けっぱなしの生活から抜け出せるし、

太陽の光も浴びれる、洗濯物も乾くし、庭で遊んだりもできるよ。」


「外に干せるのですか!」

リルは食いついた。

「うん。」


「外の家だと、解体しても、血の臭い溜まらなくなるの?」

アリスも、肯定的だな。

「うん。そうだね。窓開けれるからね。」


「外で遊べるのか!」

ジャックも食いついた。

「解体の仕事サボるなよ。」


「パン窯もちゃんと作るけど、調整はやり直しになるのかな・・・。

ごめんだけど、新しい場所の方が快適なはずなので、面倒だけどお願いね。」

「・・・はい。」


「それに、庭に出れるので、畑を作ったりも出来るだろうから、新鮮な野菜が手に入るよ。」

「畑ですか!私は、村にいた時に、小さいですが畑もやってましたのでお世話します。

薬草などを育ててました。」

リルは、畑やってたのか、それは助かるな。

「よろしくね。」


「お昼ご飯を食べたら、家を建てて来るよ。今日中にはある程度作ってしまうので、

今晩には、向こうで寝れるくらいにはなると思うので、準備だけしておいて。」

「はい。」


お昼ご飯が終わったら、さっそく新しい家の建設作業だ。

まずは、家の広さを決めないとだな。

ちょっと悩んだけど家は1軒だけにして、みんなで住む今のスタイルのままで行こう。

マディやリル用に家を建ててもいいけど、家庭持ってるわけでもないし・・・。

それになによりも、みんな仲いいしので、一緒に住んでた方が楽しいだろうしね。

挿絵(By みてみん)


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