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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
3.襲撃
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14.冒険者ギルド登録(2)


今回は、ロベルトさんのいる南門ではなく東門から出る事にした。

理由は単純で、南門から町中を熊引きずって歩くと目立つから。

なので、冒険者ギルドに近い東門から出て、東門に帰って来て熊を下ろす予定だ。


東門に到着すると、早朝から出発する冒険者が結構居て、外に出る順番を待っている。

早朝に出るのは、狩りに行く大規模な冒険者が多く、

荷車を引いていて、複数の獲物を持って帰るようなパーティーが多い。


俺達は、順番待ちの間にバーナードさん達と、いろいろ話を聞いた。

バーナードさん達に話を聞くと、最近銀に上がったばっかりらしい。

バーナードさんのパーティーは、護衛と採取を主にやって、

獣狩りはリスクが高いので、避けて来たそうだ。


だが、銀ランクになった事で、護衛では金額が高くなった事で、

リーダー格の仕事になったので、リーダー経験の少ない、

上がりたては仕事が減ってしまった。

採取は、銀ランクでは依頼はほとんど無いし、あっても獣討伐に絡む物ばかりだそうだ。

そう言った事情で、なかなか依頼をこなす事が難しくなってしまっているという事だ。


今回の依頼は、金額的にも、時間的にも、難度的にも、かなりおいしい依頼らしい。

それもあって、口外禁止って言うのが危険を伴うんじゃないかと心配しているようだ。


順番が回って来たので、バーナードさん達はギルド証を、

俺は名前を言って外出リストに名前を書いてもらう。

ギルド証で出た人は、1週間以内なら入町税はかからず無料で入れてもらえるそうだ。

ただ、荷車は空荷物じゃなければ、入る時に大銅貨1枚を支払わないといけないそうだ。


東門を出ると、目の前にはすぐに森が広がっている。

南門とは違い、東門からの方が森が近い。

その上、東方面は見渡す限りすべて森になっている。

東門から続く街道は、すぐに北方面に折れ、そのまま北に続いている。


俺達よりも前に門を出た、冒険者達が東の森に向かって行く。

数人のパーティーもあれば、数十人のパーティーもいるようだ。

装備品もまちまちで、槍を持ってる人もいれば、斧を持ってる人もいる。

防具は、革の人もいるし、バーナードさんみたいに、甲羅の防具を付けている人もいる。


俺達は、東の森には向かわず、町の塀沿いに南に向かって、荷車を引いて行く。

南の森に向かうのに、道は無いのだが塀沿いなら、獣道程度には進める道がある。

東門から、南の森に向かう冒険者は居ないので、俺達だけが南に向かって進んで行く。


町中での荷車の上は快適だったが、外に出ると乗ってられないほどの揺れだ。

どっちにしても、荷車を引いての獣道なので速度も上げれない事から、

俺も降りて一緒に歩く事にする。


30分ほど進んで、町の南端までたどり着いた。

「少し休憩しましょう。」

「ん?ああ。ちょっと休憩だ。」


荷車を止めて、みんなで体を休める。

まだ、30分程度歩いただけなので、疲れてはいないのだが、ここで話だけしておこう。

「今回の荷物は、大型の熊です。」

「熊?」

「ええ。俺が南の森で狩った熊を運んでほしいのです。」

「ん?どういう意味が判らないが。」


「熊を狩ったんですが、重くって・・・。俺では持って帰れなかったんです。

なので皆さんに手伝って貰って、熊を運んでもらおうと思ってます。」

「熊って、グリズリーベアの事を言ってるのか?」

「名前は知りませんでしたが、多分そのグリズリーベアです。」

「う~ん。なんか意味も、状況も分からんが、獲物を見ない事には何とも言えないな。」


まあ、実際の熊を見て貰うまでは、きっと信じて貰えないだろうな。

「そうですね。まあ物を見て貰わないと、納得してもらえないのは分かってたので・・・。

ただ、危険な仕事で無い事だけ納得していただければと思ってます。」

「そうだな。どっちにしても、それを運ばないと俺達の仕事は終わらないからな。」


それで休憩は終わり、南の森に向かって歩いて行く。

雰囲気が悪くなった訳ではなく、グリズリーベアについて、いろいろ教えてくれた。

グリズリーベアは、体長が2メートルくらいで、体重は300kgくらいあるらしい。

なので、荷車に乗せるのに4人で本当にギリギリだそうだ。


バーナードさん達も、討伐はした事ないが、見た事はあるらしい。

銀ランクを含む大規模なパーティーで戦って、仕留める所を見たらしい。

数人の囮で、気を引いて後ろから止めを刺したそうだ。

バーナードさん達は、採取で来ていて、偶然居合わせて見学だけさせて貰ったって話だ。


南の森に付き、俺はサーチして安全そうな、ところを指示して移動する。

「熊の場所少し確認してくるので、ここで待ってて貰っていいですか?」

「いや・・・。危険だから、俺達も行くよ。」

「ちょっと仕掛けもあるので、あまり見られたくないのです、すぐに戻りますので、

少しだけ待っててください。」

「仕掛け?う~ん。・・・分かった。」


熊は、俺の亜空間の中に収納しているので、出すところを見られる訳にはいかない。

なので、ちょっと無理やりだけど、一人で先に森に行く為の言い訳が必要だった。

ギルドに行く前に出しておくって手もあったんだけど、

そんな事したら、他の獣に食べられる可能性が高いので、この方法しかなかった。


「では、ちょっと行ってきます。」

俺は、走って森の中に入り、入り口近辺で、みんなから見えない陰に入り、

そこに亜空間から熊を出し急いで戻る。

「こっちです。来てください。」


俺達は、荷車を引いて森の中に入って行く。

引いている1人以外は、周りに警戒し武器を構えている。

「この岩の陰です。」


バーナードさん達は、岩の陰に倒れているグリズリーベアを見て、たじろいて武器を構える。

「死んでるのか?」


ピクリとも動かない、グリズリーベアに警戒を解こうともせずに、

武器を構えたまま近づいて行く。

「動かないな・・・。」

「首の所に傷があるぞ。」

そして、一人が剣を振りかぶる。


「ちょっと!切らないで!」

俺は思わず、声を上げて剣を振りかぶった人の所に駆け寄る。

「死んでますから!これ以上傷つけて毛皮の価値を下げないでください!」

そう言いながら、グリズリーベアの頭を撫でて、死んでる事をアピールする。


「あ・・・う・・・。すまない。」

事前に、グルズリーベアだって言っておいたのに、驚いてとっさに動いたのかな。


「本当に、グリズリーベアだったんだな。」

「・・・これは大物だな・・・。」


「はい。納得していただけましたか?」

「・・・これは、納得するしかないが・・・。」

「腐ってもなさそうだな・・・。」

「自然死って訳でも無さそうだな・・・。」


「ええ。最初に言ったように俺が狩りました。

余り森に長居はしたくないので、荷車に乗せていただけますか。」


「・・・まだ信じられないんだが。」

バーナードさんは、グリズリーベアに近づき、周りを見渡し、状況の確認をしている。

グリズリーベアの首筋の傷跡を確認したり、爪を確認したりと、

死体の見分も行っているようだ。


余り見られるとまずそうだけど、納得して貰わないと運んでもくれそうにないし、

好きに見て貰ってから、運んで貰おう。


「傷は、首の1撃のみで、血の跡はほとんど残ってない。

その上、地面にも血は無いし、この辺りには戦闘した形跡もない。

どこかで狩って、ここに運んだって事なんだろうが・・・。

それに、さっきまで生きていたんじゃないかと言うくらい、良い状態だ。

その割には、血抜きは終わっている。」


「納得しましたか?では、荷車にお願いします。

森なので別な何かに襲われても面倒ですので、出来れば急いでいただければ・・・。

答えられる質問には、帰りに答えますので・・・。」

「・・・そうだな。荷台に上げるぞ・・。

これだけ傷の無い獲物だ、傷つけないように気を付けろよ。」

「ああ。」


冒険者4人がかりで、慎重にグリズリーベアを荷車に持ち上げて行く。

腕の下に、荷車をかませて、頭、上半身と少しずつ荷車に乗せて行く。

4人で持ち上げてって感じでは、重すぎて難しかったようだ。

俺も、魔法でこっそりと手伝った。


30分ほどかけて、なんとか荷車に乗せたが、今度は荷車の方が壊れそうになってるので、

魔法でグリズリーベアを少し持ち上げて、壊れないように警戒する。

「これだけでかいと、重いな・・・。」

「荷車が壊れるんじゃないか?」

「様子を見ながら、ゆっくりと戻ろう。荷車が壊れたら、持って帰れなくなるぞ。」

「とりあえず、森を出ましょう。」


荷車を4人で、押して森から脱出を果たす。

南の森から、出てすぐのところで、一旦休憩を入れる。

バーナードさん達も、グリズリーベアを荷車に乗せるのにかなり疲れたのか、

荷車の傍に腰掛けて、休憩を入れる。


俺は肉体労働はしていないので、一番元気だ。

とりあえず、カバンの中をごそごそするふりをしてから、亜空間に収納していた、

麻布を取り出し、グリズリーベアが隠れるように上に掛ける。

それから、ロープを取り出し、グリズリーベアを、荷台に括り付けてもらう。


「・・・じゃあ、質問に答えてくれるんだったよな?」

「ええ。」

「なんでこんなのが、あそこにいるんだ?」

「俺が狩ったから。」

「・・・狩ったのは、あそこじゃないよな?」

「ええ。あそこまで移動させて隠しておいたのです。」


「首筋を1撃で狩ってるよな・・・。お前がやったのか?」

「うん。」

「それと、あそこまで運べたのなら、俺達に頼まなくても、町までも運べたんじゃないのか?」

「それはむずかしいですね。ここから町までかなり距離がありますし、

何よりも、俺が1人でこの獲物を持って、東門くぐれると思いますか?」

「・・・確かに。」


「お前は何者だ?」

「ハルト、5歳、狩人です。」

「・・・ふふ・・ふははは!」

バーナードさんは、大笑いしだした。

「マジかよ・・・。5歳で狩人で、グリズリーベアを1人で狩るって言うのかよ!」

「とんでもないのと、知り合っちまったな。」

「ああ。俺には、お前が1人で狩ったとは思えないが、

確かにグリズリーベアはここに居るし、お前の言ってる事も正しい。

俺達は冒険者だから、依頼された事に対して、責任持って結果を出すぜ。」

「そうだな。訳は分からないままだが、運ぶ物はここにあって、

依頼をこなすにはなんの支障もないわけだ。」


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